ブランディング

ビジョンの事例にみるブランディングが成功している会社とは?

企業が将来成し遂げたい姿を現すビジョンは、各企業によって異なるメッセージを表現しています。

今回の記事では、規模が違う3社の企業のビジョンを読み解き、ビジョンから見たブランディングが成功している企業について見ていきます。ビジョンの事例を深堀りし、自社のブランディングにも活かしてみてはいかがでしょうか。

Contents

ビジョンとは?

まず、ビジョンとはどのようなものを指すのでしょうか?今回扱う、企業のビジョンについておさらいしましょう。

ビジョン本来の意味としては「未来像」などといった意味があり、これを企業のビジョンという意味を持たせると「企業が活動を通して実現したい未来」ということになります。ビジョンが指す未来については企業によって様々な定義がありますが、ビジョンが持つ2つの視点に注目しましょう。

一つが顧客や社会など企業の外からの視点です。「企業が活動を通して社会に対してどのような未来をもたらすのか」ということをビジョンで明確にします。そうすることで、企業に対する信頼が高まるのです。
もう一つは、企業の中や社内での視点です。「企業がその未来の実現に向けてあるべき姿」を社内の従業員に提示します。そうすることで、企業全体の方向性がまとまるでしょう。

このように、ビジョンは企業活動にとって無くてはならない「旗印」のような存在です。企業がどのような方向性を目指して、社会や従業員に対してメッセージを送っているのかが、ビジョンを通してわかるのです。そして、企業のビジョンを明確にすることはブランド戦略においても、とても重要です。そして以下の企業のビジョンを通してブランディングが成功している要因について見ていきましょう。

ビジョンが与えるブランドへの影響

また、ビジョンが与える、ブランドへの影響について考えたことはあるでしょうか?企業の目指すあるべき姿をビジョンとしてまとめることで、目的を見失わずに一貫したブランドづくりをすることができます。

企業やブランドが成長、拡大していくにつれ、本来の目的を見失ってしまう場面もあるでしょう。しかし、ビジョンが確立していることで、ビジョンに沿った戦略を立てることが可能です。ブランドが安定した成長を続けるためにも、ビジョンは欠かせないものです。

ビジョンの例①Amazon

今や私たちの生活には欠かせない存在となっているAmazon。1995年に創業したAmazonは、どのようにして現在のような世界的な企業へと成長したのでしょうか?

Amazonのビジョンは

「地球上で最もお客様を大切にする企業であること、お客様がオンラインで求めるあらゆるものを探して発掘し、出来る限り低価格でご提供するよう努めること」

としています。

まず「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」という一文からは、Amazonが徹底的に顧客を大事にする姿勢を読み取ることができます。

現在、あらゆる商品が揃うAmazonですが、創業当初扱っていたのは本でした。創業当時の時代背景として、インターネットがまだまだ一般的に広まっていない時代。Amazonを創業したジェフ・ベゾスは、インターネットの可能性に注目し、インターネットでの販売に適している商品として本を扱うようになったのです。Amazonは、本をインターネットで販売する事業を展開することから始まりました。しかし、当時はインターネットが普及していない時代だったため、「見向きもされなかった」と語っています。

創業当初から「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」という明確なビジョンを掲げていたAmazonは、創業期から時代の変化に合わせて顧客のニーズに合わせた事業を展開することを予測していたのではないでしょうか。
その後は、ビジョンに基づいたビジネスモデルを構築し、常にビジョンに対して貢献しているのかを確認しながら様々な事業を展開していったといいます。

また、創業者のジェフ・ベゾスはすべての力をAmazonの成長のために注いでいたといいます。自分の資金だけでなく、地元の融資家、身内まで、可能な限りアマゾンの成長のためにすべてを投資をしました。創業者であるにも関わらず、Amazonがナスダックに上場をしても、彼の年収はわずか600万円ほどであったというエピソードも残るほど。それくらい、顧客至上主義を徹底し、創業者自身がビジョンを実践していることがわかります。

このようにAmazonは、顧客を第一優先するという徹底した顧客至上主義をビジョンに掲げています。この企業がなにを一番大切にし、どのような方向性で進むのかがとても明確でわかりやすいビジョンです。明確なビジョンをもとに、Amazonは数百万もの全世界中の顧客から必要とされる企業へと成長したと考えられます。

ビジョンの例②パナソニック株式会社

2019年の優良(ホワイト)企業ランキングで1位になった電機メーカーの「パナソニック株式会社」。就活生が選ぶ人気ランキングでも、上位に選ばれることが多いパナソニックですが、なぜ従業員からも就活生からも満足度が高いのでしょうか。その秘密をパナソニック株式会社のビジョンから探ります。

パナソニック株式会社のホームページには、ブランドスローガンという形でビジョンについて触れています。

「A Better Life,A Better World
私たちパナソニックは、より良いくらしを創造し、世界中の人々のしあわせと、社会の発展、そして地球の未来に貢献しつづけることをお約束します。」

ホームページには、ブランドスローガンの文字だけでなく、その背景に明るい森の中で遊ぶ家族のような姿が描かれており、希望を感じます。

しかし、この文章にはパナソニックが扱っている商品、電機機器の言葉は一切出てきていません。パナソニックが実現したいのは電気機器を広めることではなく、「より良いくらし」を創造し、「世界中の人々のしあわせ」、そして「地球の未来」をつくることです。パナソニックという企業の活動を進めることで、社会全体が良くなるという流れを示しています。

そのため、企業を前進させるための従業員が幸福を感じていなければ、社会全体の幸福に繋がるわけがありません。パナソニックが優良企業と呼ばれるのは、ビジョンに基づいた従業員への配慮があるからではないでしょうか。従業員の幸福度が増すことで、ますます企業は成長し、社会にとっても良い影響を与えます。こうした好循環を生み出している企業に対して就活生も魅力的に感じるため、就活ランキングでも人気なのです。

また、ブランドスローガンの言葉が「幸せ」ではなく「しあわせ」とひらがなで表現されている点にも注目です。ひらがなを使用することで、老若男女問わず受け取ることができるメッセージとなっています。

このようにパナソニックは、企業活動を通して世界中の人々の幸せを、地球へ貢献していくことをビジョンとして明確化することで、企業を支えている従業員や就活生にとっても魅力的な企業であることがわかりました。

ビジョンの例③株式会社DeNA

株式会社DeNAは、モバイルゲーム開発・配信事業を主な軸としながら、SNS運営や電子商取引サービス、そして自動車やプロ野球きゅだん運営など幅広く事業を展開している企業でです。創業は1999年、従業員数は2000人を超える企業として成長を続けています。

DeNAのビジョンは

「インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける」

と長期の経営方針を掲げています。「永久ベンチャー」とは一体どのような意味なのでしょうか?DeNAが考える永久ベンチャーは次のように補足されています。

「常に新しい価値の提供に挑戦し続ける組織であるということ。そのためには、代の中に貢献し歓迎されて初めて可能になると考えます。」

しかし、先ほど述べたようにDeNAは既に創業から20年が経ちベンチャーとは言い難いのではないかという声も上がりそうです。

DeNAでは、従業員数が2000人を超え、多角的な事業を展開しているからこそ、永久ベンチャーの考え方で同じ方向性に進むことが必要であると考えます。それぞれの事業が置かれている環境は全く異なります。

そのため、「新しい価値を創造して世の中に提供し続ける組織でありたい」との価値観を従業員一人一人に共有することで「永久に挑戦を許される組織である」との認識を持って新たな挑戦を重ねることができるのです。

 

また、「世の中にデライトを届ける」というメッセージにも注目しましょう。「デライト(Delight)」は英訳すると「大いに喜ばせる、嬉しがらせる」といった意味があります。この場合、DeNAのビジョンとしては「インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中に”幸せ”や”喜び”を届ける」という意味になります。

そして、DeNAが大切にしている「デライト」とは「喜びや驚きをもって本質的な価値を提供する」という意味が込められているそうです。
このビジョンをもとに、IT戦略部では「ITで事業/経営にデライトをもたらす」というミッションを策定し、DeNAのビジョンを体現化しています。

創業時から変わらない「永久ベンチャー」のスタンスは、20年経っても従業員によって守られています。DeNAが多角的に挑戦をし続けることができるのは、根底に明確なビジョンが浸透しているからであるということがわかりました。

成功している企業のビジョン

以上、3つの異なる業界の企業のビジョンをご紹介しましたが、成功している企業のビジョンには共通点があります。

ビジョンが企業の外の社会に対してだけでなく、企業内で働く従業員も含めて、社内外に未来を想像させることができているかが重要です。また、ビジョンがその企業にしか掲げることができない独自の視点から作られているかも、重要なポイントとなっています。
前に述べたように、ビジョンは企業のあるべき未来の姿を明確にした「旗印」です。それぞれの企業だからこそ、成し遂げられるビジョンがあるはずです。

まとめ

ビジョンは企業が活動を通して実現したい未来像を表す、旗印のような存在です。今回の記事では、3つの違う分野で活躍している企業、私たちの生活には欠かせないAmazon、ホワイト企業との評判のあるパナソニック、メガベンチャーとして勢いのあるDeNAのビジョンについてご紹介しました。

ビジョンは企業や組織の運営において大きな影響を与えます。この機会にビジョンを見直し、ブランドの価値を正しく表現することによって、ブランドが成長する基盤づくりに励んでみてはいかがでしょうか。