翻訳記事

D・アーカーの提言 「”Huggies”の例から学ぶ、消費者の声に応えるブランドパートナーになるとは? 」

※この記事はhttps://emotivebrand.medium.com/maintaining-brand-relevance-in-a-fast-paced-world-2c653c888a8を引用・翻訳したものです。

私が既に”Aaker on Branding”や他の講演で触れたように、このデジタル時代において、あなたの製品やブランドの特徴や利点に焦点を当てた消費者とのコミュニケーションは、彼らの認識や行動に変化をもたらすどころか、気づかれることはめったにありません。

では何であれば彼らに影響を及ぼすことができるのでしょうか?

消費者が情熱を注いでいることに積極的に共感するパートナーであるということを行動やプログラムを通じて示すことです。 この情熱は、共通の関心を持つということを理解してもらえるという点で消費者とのつながりを生み出すのに役立ちます。

Contents

Huggiesのブランドパートナー:ニッチな領域に向けたリポジショニング

2015年、カナダのHuggiesライバルであるPampersの台頭によって市場シェアを失っていました。 Huggiesは、おむつのデザイン、素材、サイズなどの特徴などを前面に出して、Pampersとの顧客内シェアの戦いに勝とうとしていましたが、上手くいきませんでした。当時、彼らは同じようなメッセージを打ち出しているライバル社の約3倍の支出をしてプロモーション活動を行っていました。では、そこからどのように戦略を変えていったのでしょうか?

Huggiesのブランドパートナー:“No Baby Unhugged” プログラム

結果として、2017年のWARC紙でMichelle Lee氏に取り上げられた”Huggies:No Baby Unhugged”で書かれている通り、カナダのHuggiesは方向性を変えることに成功しました。彼らは、母親の人生の特別な瞬間を反映して、新生児をハグすることに焦点を当てたブランドに生まれ変わったのです。これは、新生児の健康にとっても非常に重要でした。 このプログラムの成功により、1年後にはカナダだけでなく米国でも導入されるようになりました。

“No Baby Unhugged”プログラムは、堅実な調査とHuggiesの企業文化によって支えられていました。 研究によると、ハグは、より早い体重の増加、酸素レベルの増加、睡眠の質の改善、免疫システムの強化を支援することが分かりました。さらに、心拍数の安定化や不安の軽減、および痛みへの耐性の向上を促進することで、新生児を生理学的に助けることが判明しています。それを受けて Huggiesは、医療専門家向けに書かれた白書を配布しました。その白書には、ハグが新生児に与える影響に関する約600の科学的研究がまとめられています。

Huggiesの企業文化、そして実際そのブランドの名前自体は、母親と乳児の関係におけるハグやその役割に関係しています。 実際、主要な2社の視点は明確です— Huggiesはお母さんであり、Pampersはお医者さんを意識しています。

このプログラムは、母親にハグがもたらす新生児への良い影響を教えることや、ハグの実践を促進させることが目的となっています。また、ハグの行動や役割とHuggiesを感情的に結び付けてもらえるような設計もなされているのです。

具体的には、母の日にはハグの持つ力とその体験を乳児、お母さん、医療チームの視点から見た感動的な2分半のビデオが公開されたことが挙げられます。

また、“No Baby Unhugged”プログラムのWebサイトは、母親が「ハグプラン」を作成するのに役立ちます。「ハグプラン」とは、最初のハグをいつどのようにしたいのか(へその緒が切られる前なのか、産湯に入れる前なのかなど)、パートナーが最初のハグの経験をいつどのように共有するかについて詳しく回答することができるフォーマットのことです。 このwebサイトでは、母親たちがこれらの特別な瞬間を記録した写真をアップロードすることもできます。

Huggiesのブランドパートナー:Hospital Hugger プログラム

このプログラムの要は、「Huggies”Hospital Hugger”」プログラムのサポートです。これは、両親がずっと側にいることができない新生児に対し、ボランティアがハグを提供するプログラムです。 この活動の他にも、新しいお母さんがHuggiesのメンバー会員になると、他の特典に加えて5ドルがHospitalHuggerプログラムに寄付される仕組みもあります。 最初の2年間で、18のHospitalHuggerプログラムに資金が提供されました。

このプログラムは、新生児の約10%である早産によって長期の入院を余儀なくされる乳幼児とって特に重要です。 未熟児集団の中でもとくに低体重で生まれてきた未熟児をサポートするために、特別なHuggiesのおむつが設計され、手作業で梱包されています。

Huggiesのブランドパートナー:リポジションの結果

これらのプログラムは既に素晴らしい結果を出しています。 カナダでのHuggiesの新生児市場シェアは4年間減少し続けていましたが、2016年に4シェアポイント増加し、売上高は27%増加しました。 さらに、Huggiesは「他のブランドよりも新生児に良い」という認識が10ポイント増加し、Pampersは9ポイント減少しました。 いいね、コメント、リツイートなどのソーシャルメディア広告対策は、業界のベンチマークをはるかに上回っています。

“No Baby Unhugged” プログラムは、新生児のおむつブランドの認識と位置付けを変えました。 Huggiesの特徴とメリットは、ハグの効果や影響力の大きさと結び付けて共有されるようになりました。

今回のHuggiesの話は、ブランドをリポジションする方法と、オファリングの機能的な側面によってではなく、視聴者の情熱に焦点を当てることによって、深く感情的な関係を育む方法を示しています。

Huggiesのブランドパートナー:Pampersはどのようにリポジションを行ったのか?

おむつのブランドであるHuggiesのリポジションは、2007年に「Cloth-Like&Dry」製品で中国市場で競争するのに苦労したP&GのPampersを彷彿とさせます。市場調査によると、母親はおむつのブランドには興味がありませんでしたが、赤ちゃんの将来の健康への影響が認識されている睡眠の質には非常に興味がありました。

以前の研究で、Pampersが実際に赤ちゃんの睡眠の質を改善したことが明らかになっていたので、その事実を利用しようとPampersは「ゴールデンスリープ」キャンペーンを開始しました。具体的なキャンペーン内容としては都市部での広告、大規模なカーニバル、店内キャンペーンが含まれていました。

キャンペーンの要は、女性にPampersのウェブサイトに眠っている赤ちゃんの写真を投稿してもらうことでした。そして、その写真を使って巨大なフォトモンタージュにしたのです。眠っている赤ちゃんの魅力を想像できますか?彼らは20万枚以上の投稿された写真のうちの10万枚以上を使用して作品を作り上げました。その7,000平方フィートのフォトモンタージュは上海の小売店に吊るされ、ギネス世界記録を更新しました。

キャンペーンの結果として、Pampersの売り上げは55%増加し、中国でのおむつ市場は爆発的に拡大しました。 2006年の非常に小さな市場シェアから、2011年には使い捨ておむつは30億ドル近くにまで成長し、Pampersは現在も引き続きマーケットリーダーとなっています。これは、ブランドをリポジションするもう1つの強力な例として挙げられるのではないでしょうか。