最近、若者の間で”昭和レトロ”がブームとなっています。埼玉県にある「西武遊園地」が昭和をテーマに遊園地をリニューアルをしたことが話題になるなど、令和の時代を生きる若者にとって昭和の文化が受け入れられています。今回の記事では、昭和レトロをテーマにブランディングした事例をご紹介し、昭和レトロとブランディングの可能性について考えていきます。
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昭和レトロが若者の間でブームに
近年、若者の間で昭和を連想させるものが流行していると話題になっています。「昭和レトロブーム」の代表的なものとして、純喫茶、使い捨てカメラ、チェキ、レコード、銭湯など、敢えて店内を昭和レトロ風にしている居酒屋なども人気です。そうしたレトロな居酒屋では、お酒の提供だけでなく、駄菓子や給食を提供するなど様々なコンセプトがあります。
映画『三丁目の夕日』のような人情溢れる昭和30年代を懐かしむ「昭和ノスタルジーブーム」、1980年代のバブル期のような活気あふれるイメージや、1990年代から200年頃の平成初期に流行した比較的新しい文化も含めて「レトロ」として再注目されています。昭和レトロといってもどの年代なのかを定義することは難しく、幅広い意味で昭和レトロという言葉が使用されています。
昭和に生まれ、昭和を生きた人々の感じる「懐かしさ」とは違い、昭和を知らない世代が昭和の文化を取り入れることで新たな文化が生まれています。
流行が激しく入れ替わる現代においても、昭和レトロブームは衰えず、絶えず人気となっています。
昭和レトロの要素
様々な分野でレトロブームが巻き起こっていますが、ここでは若者が取り入れている昭和レトロブームをカメラ・音楽・空間・ファッション4つの要素に分けます。商品開発やブランディングを考える際に取り入れてみてはいかがでしょうか。
要素⑴カメラ
まずは、「フィルムカメラ」。数年前から流行していますが、手軽に美しい写真が撮影できる現代だからこそ、画質の悪さが却って味があって良いと若者の間で人気です。インスタグラムではフィルムカメラで撮影した写真が多く投稿されています。
カメラだけでなく、スマートフォンでフィルムカメラ風な写真を撮影できるアプリやフィルターにも注目が集まっています。
また、1986年に生まれた「写ルンです」で撮影するのも流行しています。まだスマホが普及される前に誕生したレンズ付きフィルム。小型で軽いので持ち運びに便利ですが、撮影の枚数に制限があり、現像するのにも手間がかかります。
しかし、そうしたアナログ体験が若者にとっては新鮮なのです。
要素⑵音楽
スマートフォンが普及し、ストリーミングでいつでもどこでも簡単に音楽を聴くことができる現代において、レコードやカセットなどのアナログ盤が若者の間で人気です。世界的に大人気のK‐POPグループのBTSがアナログ盤で新曲を発売したことによって、レコードやカセットの魅力に注目が集まっています。
また、音楽の局長にも昭和レトロ要素を取り入れるアーティストが増えているようです。
要素⑶空間
先ほど紹介した、純喫茶、銭湯を初め、飲み屋横丁など昭和の文化を色濃く反映した空間が昭和レトロブームで再注目されています。純喫茶では、写真映えするクリームソーダやプリンが人気です。最近では、新しい店舗で敢えて昭和レトロな雰囲気を醸し出した喫茶店も登場しています。
また、近年、高齢化や設備の老朽化で廃業してしまった銭湯の建物を活かしてカフェやイベントスペースとして再活用するなど、温かみのある空間を活用する動きも出ています。
要素⑷ファッション
若者の間で、昭和レトロなファッションを取り入れることが流行しています。バブル期の日本で流行した「肩パッド」「ビビッドカラー」など。現役女子高生・登美丘高校ダンス部員が萩野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」をおどった「バブリーダンス」が大ヒットした背景にも昭和レトロブームがありそうです。
幼い頃から、デジタル社会で育った若者の中には便利になった街並みやシステムに対して無機質な印象を持っている方も多いのかもしれません。そうした中で、現代社会にはない昭和レトロの不完全さが受け入れられているのでしょう。
昭和レトロでリブランディングをした事例
ここでは”昭和レトロ”ブームを、リブランディングに取り入れている企業の事例をご紹介します。
事例⑴アデリアレトロ
「アデリア」は、1936年に誕生し、昭和時代に親しまれていた食器のデザイン。多種多様なプリントグラスが人気でした。昭和が終わるとともに生産終了していましたが、当時のデザインをそのままに現代版「アデリアレトロ」として復刻したところ、若者からも人気を呼んでいます。インスタグラムのフォロワー数は3万人を超え、メディアでも多数取り上げられています。
インスタグラムでの発信では、昔から愛用しているコアなファンに向けて、当時のカタログや豆知識などを発信。一方で、アデリアレトロのグラスを使った、スイーツなどの写真も積極的に発信することで、アデリアレトロを知らない若い世代にもアプローチが可能になりました。
アデリアレトロのデザインは、おばあちゃんの家で見たようなホッとするところが魅力的。多くの商品が販売されている現代だからこそ、昭和のユニークなデザインから意外性、懐かしさを感じる方々が多いのかもしれません。
事例⑵西武園ゆうえんち
「西武園ゆうえんち」は、新「西武園ゆうえんち」としてリニューアルしました。西武鉄道は西武園ゆうえんちを「地方創生」の起爆剤にして、日本を元気にしたいと考えています。
そして、そのメインコンセプトが「心あたたまる幸福感に包まれる世界」として、高度経済成長期だった1960年代の昭和の世界観を再現。30もの店舗が並ぶ「夕日の丘商店街」をはじめとして、昭和の古き良き時代を再現しています。
全盛期の20%にまで落ち込んだ客足を、100億円の大規模リニューアルによって呼び戻すことが狙いですが、時代と逆行した昭和を切り口にしたブランディングは成功するのかという声もありました。
しかし、リニューアルオープンの様子を見ると、家族連れや昭和を知らない若い世代からの反響も大きく、また、建物や園内通貨、飲食物、隅々まで徹底的に再現されているため、昭和マニアにとっても楽しめる場所となっています。
西武園ゆうえんちに限らず、全国の遊園地はコロナ禍も相まって厳しい状況に置かれている状況です。そうした中で、昭和レトロを切り口にリニューアルした西武園ゆうえんちは、遊園地再生の新たなモデルとして注目が集まっています。
まとめ
若者の間で流行している”昭和レトロ”。カメラ、音楽、空間、ファッション以外にもその反響は多岐にわたります。今回紹介した企業の事例のように、企業や商品のブランディングの際に、昭和レトロを利用することで、既存の魅力だけでなく、新たな魅力が発掘できるかもしれません。皆さんも昭和レトロを意識して取り入れてみてはいかがでしょうか。