ブランディング

成功しているキャッチコピーの事例から読み解くネーミング方法

ブランド名や商品名など、私たちの身の回りにはキャッチコピーがつけられた物が多く存在します。思わず口ずさんでしまうキャッチコピー、心が揺さぶられるキャッチコピーなど様々なものがあります。
今回の記事では、キャッチコピーがブランディングに与える影響は一体どのようなものがあるのでしょうか?そして成功しているブランドや商品のキャッチコピーの事例から見る、キャッチコピーのポイントについてご紹介します。

Contents

キャッチコピーとは?

キャッチコピーとは「catch」と「copy」を繋げた和製英語で、人の注意を引く宣伝文句、商品などの広告として様々な場面で使われています。
キャッチコピーの表現方法は決まっておらず、短いものであれば1単語から1文など様々です。
また、キャッチコピーによって商品や企業に興味を持ってもらうきっかけとなるように、キャッチコピーが与える影響はとても大きいとされています。

キャッチコピーとブランディング

まずは、キャッチコピーとブランディングの関係性について見ていきましょう。そもそもキャッチコピーは企業やブランドの経営理念に基づき、より効果的に顧客にブランドの魅力を届けられるように工夫して作成するメッセージです。

ブランドのイメージは、キャッチコピーで決まると言っても過言ではないほど、キャッチコピーが与える影響は大きいとされています。ブランドのイメージを視覚的に形作るロゴやデザインなどとは違い、キャッチコピーは視覚だけでなく、聴覚をも利用する事ができます。そのため、CMなどでも拡散され、多くの人の間で流行する場合もあります。

認知度が低いブランドでも、キャッチコピーを一新することでリブランディングに成功した企業もあり、既に確立されているブランドであってもキャッチコピーを見直すことで、さらにブランドの価値を磨くことができるでしょう。

ネーミングのポイント

キャッチコピーを作る際のポイントはいくつかありますが、最も重要なことは「シンプルに、誰でも理解できること」です。
できだけシンプルに、簡潔にまとめることでキャッチコピーによって何を伝えたいのかを明確にします。また、老若男女問わず誰でも理解できる表現も大事ですが、ターゲットに刺さるキャッチコピーを目指しましょう。せっかく良いメッセージをつくっても、伝えたい相手が理解できなければ意味がありません。
キャッチコピーを作る際は、まず伝えたいキーワードをいくつか挙げ、そこからキャッチコピーの候補を作成していきます。客観的な視点でキャッチコピーを見ることはもちろん、受け取ったときの言葉の感じ方やリズムにも注目しましょう。ひらがな、カタカナによっても印象は異なります。

次は実際に成功している商品、企業のキャッチコピーの実例から、キャッチコピーが成功している理由について迫ります。

キャッチコピー例①JR東海

「そうだ、京都へいこう。」

「そうだ、京都へいこう。」はJR東海の京都観光キャンペーンのキャッチコピーです。京都の美しい情景とともに流れるCMのキャッチコピーを見ると、思わず旅行に行きたくなります。

このキャッチコピーが生まれたのは1933年。新幹線の「のぞみ」の運転が本格的にはじまり、首都圏に住んでいる人も気軽に京都旅行へ行くことができるようになりました。こうした時代背景があり、「そうだ、京都へ」というJR東海を利用すれば、思いつきで京都旅行へ行くことをアピールしているのです。

このキャッチコピーでは「時代」を時代を読み、表現しています。優れたキャッチコピーは時代や社会情勢を意識し、表現に取り入れることが重要です。また、このキャッチコピーでは「そうだ、」という言葉を入れることでキャッチコピーに躍動感を感じることができます。シンプルで簡潔なコピーの中に、こだわりが詰まっています。

キャッチコピー例②ロッテ

「お口の恋人」

「お口の恋人」はロッテのキャッチコピーとして浸透しています。ロッテはコアラのマーチやチョコパイ、パイの実など様々な有名なお菓子があり、知らない方はいないのではないでしょうか。
CMや商品ロゴにも利用されている「お口の恋人」というキャッチコピーは、ロッテのお菓子が私たちとの距離の近さを感じさせます。
ロッテの公式ホームページのコーポレートメッセージにて「お口の恋人」に込められた願いが記載されています。

ロッテの社名の由来はドイツの文豪ゲーテの「若きウェルテルの悩み」の中のヒロイン「シャルロッテ」から来ています。そのシャルロッテが”永遠の恋人”と呼ばれることから、そのようにいつまでも周りから愛される企業でありたいという意味がキャッチコピーに含まれているのです。

しかし、実はこのキャッチコピーは一般公募で決まったものだそうです。しかも、その考案者はドリフターズの仲本工事の母親。正式に使用され始めた時期は不明ですが、長い間ロッテのキャッチコピーとして使われています。一般公募で考えられたキャッチコピーだからこそ、消費者目線で共感ができる親しみのあるキャッチコピーなのかもしれません。

キャッチコピー例③小学館1年生

「ピッカピカの一年生」

「ピッカピカの一年生」は小学館から発行されている雑誌「小学一年生」のCMで使われているキャッチコピーです。一度聞いたら忘れられない独特なフレーズ。
1978年から十数年にわたって放送された「ピッカピカの一年生」のCMシリーズはとても話題になり、ランキングの総合サイト「gooランキング」の「昭和の懐かしCMシリーズ」にて1位になるほど昭和の印象的なフレーズとして知られています。
最初のオンエアから40年以上経った現在も少しアレンジを変え引き継がれており、これほどまでに長い間親しまれているキャッチコピーは少ないのだそうです。

「ピカピカの一年生」では「一年生」という数字が入っていることで、より具体的なイメージをすることができます。キャッチコピーだけでなく、本や映画などでも数字をタイトルに入れているものが多数あり、どれも印象に残ります。

キャッチコピー例④コスモ石油

「ココロも満タンに、コスモ石油」

「ココロも満タンに、コスモ石油」はコスモ石油のCMにて1997年に生み出され、当時企業のCSRが重要視され始める以前だったため、時代の一歩先を行くキャッチコピーとして注目されました。

ガソリンスタンドのセルフ化や市場の縮小といった時代に適応していくため、顧客満足度の向上を第一目的とし、目には見えない人と人との心のやりとりをキャッチコピーに込めたそうです。また、コスモ石油グループでは「”ココロも満タンに”宣言」を打ち出し、意識だけでなく、行動に移していく取り組みも行っています。
社員に向けた企業内のブランディングにも役立っているのです。

キャッチコピー例⑤シャープ

「目の付けどころがシャープでしょ。」

「目の付けどころがシャープでしょ。」はシャープのキャッチコピーとして1990年に誕生し、20年間使用されてきたキャッチコピーです。多くの人が聞いたことがあるキャッチコピーだと思いますが、2010年に現在の「目指してる、未来がちがう。」というキャッチコピーに生まれ変わりました。
しかし、新しいキャッチコピーに変わってもなお、キャッチコピーのランキングにおいて上位であり、多くの人の印象に残り続けるキャッチコピーであることがわかります。
「シャープ(sharp)」は「鋭い」といった意味があり、企業名と視点が鋭いというどちらの意味をとっても意味が通じるようになっています。
また、「目の付け所が…でしょ。」という風に普段私たちが使うフレーズが盛り込まれているのも印象に残る理由です。

キャッチコピー例⑥大成建設

「地図に残る仕事」

「地図に残る仕事」は大手総合建設会社大成建設のキャッチコピーであり、綺麗なアニメーションの映像が流れるCMが印象的です。
CMのアニメを担当しているのは「君の名は。」などの名作を残している新海誠。CMのレベルを超えたストーリー性や映像の美しさに引き込まれる方も多いのではないでしょうか。
「地図に残る仕事」というキャッチコピーは、企業の魅力をアピールするだけでなく建設業界全体の仕事の魅力を簡潔に表現されています。
まるで青春ドラマのような若者が夢を描く姿に憧れて大成建設にも興味を持つなど、採用にも効果的なキャッチコピーとなっています。

優れたキャッチコピーの共通点

今回紹介した商品や企業の優れたキャッチコピーには共通点があります。
それはシンプルでかつ独自性があるものです。どのキャッチコピーも、文字数は少なく、余計な表現は一切していません。そしてハッキリと言い切ることで、情景が浮かびやすく、見た人の心に直接響くキャッチコピーとなるのです。さらにその商品や企業にしか表せない独自の視点でキャッチコピーを考えていることも必要です。キャッチコピーの中にはCMなどでリズムとともに流れることで多くの人の記憶に残っているものもあります。リズムやゴロに合うかどうかも優れたキャッチコピーを作る上で重要な視点です。

まとめ

様々な商品や企業のキャッチコピーを見てきましたが、キャッチコピーが果たす役割にも多様性があるのは気づきましたでしょうか。
1つはキャッチコピーを聞くことで商品、企業名が即座に思い浮かぶように、知名度を上げるための役割。また、キャッチコピーによって商品や企業名を競合他社と差別化を図り、消費者の購買意欲を掻き立て、行動に変化を起こす役割など優れたキャッチコピーによって多くの人に影響を与えることができます。
優れたキャッチコピーを参考にキャッチコピーを見直し、ブランディングにも活かしてみてはいかがでしょうか。