ここではブランディングの効果による優位性の一つとして、「知覚品質」を取りあげます。
品質は同じだが、ブランドが違う2種類の商品が存在した場合、品質が良いと知覚されたほうのブランドの販売価格が高くなります。
では、具体的に「知覚品質」の内容について掘り下げていきたいと思います。
Contents
強いブランドが持つ優位性「知覚品質」とは?
「知覚品質」とは、ブランドに対して顧客が認識している品質のことであり、 商品やサービスの機能・性能だけでなく、安心感やイメージなどの意味も含まれます。
ここで重要なのは、「知覚品質」は商品やサービスそのものの価値ではなく、顧客が主観的に認識している品質を指します。つまり、企業や事業側が品質を感じていても、顧客が感じていなければ「知覚品質」とは言えません。
この「知覚品質」は、ブランドが持つ概念の根幹の部分とも言えます。
強いブランドにとっては、この「知覚品質」がより優位に働き、実際のスペックより品質をよく感じたり、好意を持つ傾向にあります。
強いブランドと「知覚価値」の関連性
ブランド価値が向上すると、同時に「知覚価値」も向上します。
例えば、2つのチョコレートがあったとして、一方は有名ブランド、もう一方は無名ブランド。その際に、商品にほとんどの差異がないにもかかわらず、有名ブランドのチョコレートを手に取ってしまいませんか?
まさに、ブランドと「知覚価値」の関連性を示しています。人はチョコレートの細かな成分表記などを見て購入を決定することはほとんどありません。強いブランド価値によって「知覚価値」に作用し、自ずから美味しそうと判断し、購入に至るのです。
ブランドにとって「知覚品質」の効果が重要視される背景
世の中のあらゆる商品やサービスは高性能になっています。全てのものが均質化しています。それにより、完全に機能で差別化することが難しくなっています。この均質化は破壊的イノベーションが起きない限り、これからも加速するものと思われます。
以前は、圧倒的機能差があれば、それだけで差別化でき、商品は売れていました。
しかし、機能差が均質化した事によって、消費者が感じない部分にフォーカスが当たり、「知覚品質」になりえない部分での競争が起き、スペックが実利に繋がらなくなってきました。企業と顧客の機能の捉え方にギャップが生まれているためです。
そこで、顧客が感じる価値「知覚品質」を、ブランドを用いて高める事が重要視されるようになりました。
機能的価値を軽んじてはいけません。ただ、機能だけで売れる商品を作るのは不可能と言っても良いのかもしれません。
インテルにおけるブランド戦略と「知覚品質」
引用:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/homepage.html
「インテル、入ってる」というCMを目にしたことはありませんか?
世界を代表する半導体メーカーである、インテルのキャッチコピーです。
インテルは、BtoBの企業にもかかわらず、「インテル・インサイド」キャンペーンを銘打ち、世界的に大胆なブランド戦略を打ち出しました。その費用は、売上の20%以上投資したとも言われています。
狙いは、エンドユーザーに、インテルのメモリは品質が良いと「知覚品質」に訴えかけ、各パソコンメーカーに対して、インテルのメモリが搭載されていないといけない競争環境を作ることでした。
結果、パソコンにインテルのシールが貼られていることが価値になり、顧客に強い「知覚品質」を植え付け、ほとんどのパソコンにインテルのメモリが搭載される事になったのです。その顧客のほとんどは、細かなスペックどころか、中にはメモリの意味を知らない人も存在するほどです。「インテルの入ってるパソコンは良い」というブランドを作り上げました。
半導体メーカーというスペックが重要視される業態にも関わらず、ブランド戦略によって顧客の「知覚品質」を利用し、スペックでない土俵で勝ち切った好事例です。
また、BtoB企業にも関わらず、エンドユーザーにフォーカスを当てることが重要と示した部分でも、素晴らしい戦略と感じます。
このように、強いブランドを形成する事によって、「知覚品質」をうまく利用することができるのです。
まとめ
シンプルにブランド価値が向上する事によって品質が良さそうに見えるというのは、とてつもないインパクトがあります。そこには、商品が機能的価値だけではないことを物語っています。均質化した世の中に強い「知覚品質」で差別化を行うため、強いブランド作りにフォーカスを当てる必要があると訴えます。