トーンオブボイス — ブランドのコミュニケーションと言葉遣いを設計するクリエイティブチーム

「同じことを言っているのに、あのブランドの発信はなぜか心に残る」——その秘密は「トーンオブボイス」にあります。

トーンオブボイスとは、企業やブランドが顧客とコミュニケーションを取る際に使う一貫した話し方・表現スタイルのことです。ロゴやカラーといったビジュアル要素がブランドの「顔」だとすれば、トーンオブボイスはブランドの「声」にあたります。

優れたトーンオブボイスを持つブランドは、どのチャネルで発信しても「あのブランドらしい」と感じてもらえます。本記事では、トーンオブボイスの定義からトンマナとの違い、設計ステップ、SNSでの活用法、成功事例7選まで体系的に解説します。


Contents

トーンオブボイスとは?定義と基本

ブランドの声 — コピーライティングと言語表現のデザインプロセス

トーンオブボイス(Tone of Voice)とは、企業が生活者に抱いてほしいブランドイメージを保つために、どのような語り口でコミュニケーションすべきかを定めた規定・方針です。

トーンオブボイスを構成する4つの要素

要素 説明
語彙 使う言葉の選び方 「ご利用ください」vs「使ってみて」
文体 文の構成・長さ・リズム 短文中心 vs 丁寧な解説文
態度 ブランドが読者に向ける姿勢 フレンドリー vs 権威的
感情 伝える際の情緒的なトーン ワクワク感 vs 落ち着き

トーンオブボイスとトンマナの違い

多くの人が混同しがちな「トーンオブボイス」と「トンマナ(トーン&マナー)」の違いを整理します。

比較項目 トーンオブボイス トンマナ(トーン&マナー)
対象 言語表現(言葉遣い・語り口) 総合的なスタイル(デザイン+言語)
焦点 何を言うか、どう言うか どう見せるか、どう感じさせるか
範囲 コピー・テキスト・会話 色・フォント・レイアウト+テキスト
「カジュアルに話す」「敬語を使う」 「暖色系で親しみやすく」「モノトーンで洗練」

簡単にいえば、トンマナは「ブランドの見た目+話し方」全体を指し、トーンオブボイスはその中の「話し方」に特化した概念です。


トーンオブボイスがブランディングに不可欠な3つの理由

理由1: ブランド認知の向上

一貫した言葉遣いは、消費者の記憶に残りやすくなります。SNS・Web・広告・カスタマーサポートのすべてで同じトーンで語ることで、「あのブランドだ」と瞬時に認識してもらえます。

理由2: 信頼性の構築

人間関係と同じで、言動に一貫性がある相手は信頼できます。ブランドのトーンがぶれると、消費者は「この会社、何がしたいのかわからない」と感じ、信頼を失います。

理由3: 競合との差別化

製品のスペックや価格だけで差別化が難しい時代、トーンオブボイスは強力な差別化要因です。同じ商品カテゴリでも、「フレンドリーに語るブランド」と「専門家として語るブランド」では、顧客の印象がまったく異なります。


トーンオブボイスの設計 — 実践5ステップ

ワークショップ — ブランドパーソナリティを定義しトーンを設計するチームの作業風景

自社のトーンオブボイスを体系的に設計する5ステップを紹介します。

Step 1: ブランドパーソナリティを定義する

トーンオブボイスは、ブランドパーソナリティ(ブランドの人格)から導き出されます。まず「もしブランドが人間だったら、どんな人物か?」を言語化しましょう。

ワークシートの例:
– 年齢・性別のイメージは?
– どんな性格か?(例: 誠実・革新的・遊び心がある・知的)
– 友人との会話ではどんな話し方をするか?
– どんな服を着ているか?

Step 2: ターゲットの言語習慣を理解する

ブランドのトーンは、ターゲットオーディエンスに響く必要があります。20代向けのブランドと経営者向けのBtoBブランドでは、適切なトーンがまったく異なります。

  • 20代向け: カジュアル、絵文字OK、短文、共感ベース
  • 経営層向け: フォーマル、論理的、データ重視、敬語
  • クリエイター向け: 遊び心、独自の表現、常識を疑う姿勢

Step 3: トーンの4軸を設定する

以下の4つの軸で、自社のトーンの位置を定めます。

スペクトラム 自社の位置を決める
フォーマル ↔ カジュアル 「です・ます」調 ↔ 「だ・である」調や話し言葉
真面目 ↔ ユーモラス 事実重視 ↔ 遊び心を交える
敬意 ↔ 親密 距離を保つ丁寧さ ↔ 友人のような親しみ
実用的 ↔ 感情的 データ・事実中心 ↔ ストーリー・感情中心

Step 4: 「Do / Don’t リスト」を作成する

抽象的なトーン設定を、具体的な言語ルールに落とし込みます。

Doリスト(推奨する表現):
– 専門用語を使うときは必ず簡単な説明を添える
– 読者に語りかけるように「あなた」「皆さん」を使う
– 具体的な数字やデータで裏付ける

Don’tリスト(避ける表現):
– 上から目線の表現(「〜すべきです」「当然ですが」)
– 過度な業界用語(説明なしのカタカナ語の羅列)
– ネガティブな表現で始める文章

Step 5: トーンガイドラインを文書化し、全社に展開する

設計したトーンオブボイスを「ブランドガイドライン」として文書化します。以下の項目を含めましょう。

  • ブランドパーソナリティの定義
  • 4軸のポジショニング
  • Do / Don’tリスト(具体的な表現例つき)
  • チャネル別の調整ルール(SNSはややカジュアルOKなど)
  • NG表現リスト
  • 良い例・悪い例のBefore/After

SNSにおけるトーンオブボイスの活用

SNS運用 — 複数のプラットフォームでブランドの一貫した声を届けるソーシャルメディア戦略

SNSは、トーンオブボイスがブランドの印象を最も直接的に左右するチャネルです。ただし、プラットフォームごとにユーザーの期待が異なるため、トーンの「微調整」が必要です。

プラットフォーム別のトーン調整

SNS トーンの調整ポイント
X(Twitter) 短文・テンポの良さ・時事ネタへの反応・ユーモア許容
Instagram ビジュアル重視・感情的な表現・ハッシュタグ活用・世界観の統一
LinkedIn フォーマル寄り・知見の共有・業界専門性・キャリアの文脈
YouTube 会話調・ストーリーテリング・教育的な解説・長尺対応
TikTok 最もカジュアル・トレンド参加・エンタメ性・Z世代の言語感覚

SNSでトーンオブボイスを維持するコツ

  1. 投稿テンプレートを用意する: 定型の書き出しや締め方を決めておく
  2. 承認フローを設ける: 投稿前にブランドガイドラインとの整合性をチェック
  3. 運用担当者を育成する: ガイドラインの理解度テスト、定期的な振り返り

トーンオブボイスの成功事例7選

ブランドコミュニケーション — 多様なチャネルでの一貫したメッセージ発信のイメージ

トーンオブボイスを効果的に活用し、ブランドの独自性を確立した企業を紹介します。

事例1: Google(親しみやすく、明快)

Googleは「シンプルで、誰にでもわかる」トーンを全チャネルで徹底しています。トーンオブボイスの専門家ニール・テイラーは著書の中で、Googleが投資家向けの発信でもユーザー向けと同じくだけたトーンを維持している点を高く評価しています。

事例2: Apple(洗練された、自信に満ちた)

Appleのトーンは「Simple is better」の哲学が貫かれています。短い文、余白の多いレイアウト、断定的な表現。「iPhone。それは、iPhone。」のように、説明しすぎず、製品の力を信じるトーンが特徴です。

事例3: 無印良品(控えめで、誠実)

無印良品のトーンは「主張しない」ことが最大の特徴です。「わけあって安い」「これでいい」——過度な修飾を排し、素材やプロセスの事実を淡々と伝える誠実さが、ブランドの世界観を形成しています。

事例4: au / KDDI(遊び心がある、前向き)

auは「おもしろいほうの未来へ。」というブランドメッセージに基づき、遊び心のあるトーンオブボイスを規定しています。他者への敬意を保ちながらも、ユーモアと好奇心を感じさせる表現を全チャネルで統一しています。

事例5: ユニクロ(機能的で、合理的)

ユニクロのトーンは「LifeWear(究極の日常着)」というコンセプトを反映し、機能性と素材の良さを合理的に伝えるスタイルです。感情的な訴求よりも、素材の特性や着心地のメリットを論理的に説明する姿勢が一貫しています。

事例6: note(共創的、インクルーシブ)

noteのトーンオブボイスは「クリエイターと一緒に作る」という姿勢を反映しています。上から教えるのではなく、「一緒に考えよう」という共創的なトーンで、多様なクリエイターに安心感を与えています。

事例7: スターバックス(温かく、人間的)

スターバックスのトーンは「人のぬくもり」が基調です。カップにお客様の名前を書く文化に象徴されるように、マニュアル的な丁寧さではなく、一人ひとりに向き合う温かさを言葉にも反映しています。


トーンオブボイス設計のよくある失敗パターン

失敗1: 抽象的すぎて実行できない

「フレンドリーに」「誠実に」だけでは、担当者によって解釈がバラバラになります。具体的な表現例(Do / Don’t)を必ずセットで用意しましょう。

失敗2: トーンを統一しすぎてチャネル特性を無視する

LinkedInとTikTokでまったく同じトーンは違和感を生みます。「核となるトーンは一つ。チャネルに応じて微調整する」が正解です。

失敗3: 作って終わり(運用しない)

トーンガイドラインは、作成後に全社に浸透させなければ効果がありません。新入社員研修への組み込み、定期的な振り返りミーティング、優れた実践例の共有が重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. トーンオブボイスとトンマナの違いは何ですか?
トンマナ(トーン&マナー)はブランドの総合的なスタイル(デザイン+言語)を指すのに対し、トーンオブボイスはコミュニケーションにおける言葉遣いや語り口に特化した概念です。トーンオブボイスはトンマナの一部であり、より言語表現にフォーカスしています。

Q2. 中小企業にもトーンオブボイスは必要ですか?
はい、中小企業こそトーンオブボイスが重要です。限られた発信機会を最大限に活かすには、一貫した印象を残すことが不可欠です。特にSNSでの発信やWebサイトのコピーは、少人数でもトーンを統一するだけで、大企業に負けないブランド認知を構築できます。

Q3. トーンオブボイスはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
基本的には年1回の見直しをおすすめします。ただし、ブランドのリポジショニング、ターゲット層の変更、新しいSNSプラットフォームへの参入時には、その都度トーンの調整が必要です。核となるトーンは変えず、表現の幅や新チャネルへの適用ルールを更新するのが一般的です。

Q4. トーンオブボイスとブランドパーソナリティの関係は?
ブランドパーソナリティが「ブランドの人格」を定義し、トーンオブボイスはその人格が「どう話すか」を規定します。ブランドパーソナリティが土台、トーンオブボイスがその表出です。たとえば「革新的で遊び心がある」パーソナリティなら、トーンは「カジュアルで、時にユーモアを交え、常識に問いかける」表現になります。

Q5. 社内でトーンオブボイスを浸透させるにはどうすればよいですか?
最も効果的なのは、具体的な表現例(Do / Don’tリスト)付きのガイドラインを作成し、全社で共有することです。加えて、新入社員研修でのトレーニング、月次でのコンテンツレビュー会議、トーンに沿った優秀な投稿の社内表彰なども有効です。株式会社レイロでは、ブランドガイドライン策定からトーンオブボイスの社内浸透まで一貫して支援しています。


まとめ

トーンオブボイスとは、ブランドが顧客とコミュニケーションを取る際の一貫した話し方・表現スタイルです。

本記事のポイントを振り返りましょう。

  • トーンオブボイスはブランドの「声」であり、語彙・文体・態度・感情の4要素で構成される
  • トンマナ(トーン&マナー)の一部であり、言語表現に特化した概念
  • ブランド認知の向上・信頼性の構築・競合との差別化の3つの効果をもたらす
  • 設計は「パーソナリティ定義→ターゲット理解→4軸設定→Do/Don’t作成→ガイドライン化」の5ステップ
  • SNSではプラットフォームごとの微調整が必要だが、核となるトーンは一つ

ビジュアルアイデンティティ(見た目)とトーンオブボイス(話し方)の両方が揃うことで、「ブランドらしさ」は確かなものになります。自社のブランドが「どう語るか」を設計し、すべてのタッチポイントで一貫した声を届けましょう。


ブランドの「見た目」と「声」を、一つに。
株式会社レイロでは、ブランドパーソナリティの定義からトーンオブボイスの設計、ガイドライン策定まで、言語と視覚の両面からブランディングを支援しています。

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