「ケイパビリティ」は、企業が持つ組織的な能力のことを指します。この記事を読んでいるみなさんは組織のケイパビリティを活かせているでしょうか。ケイパビリティは有効に活かすことで企業の成長に繋がると言われています。今回の記事では、そんなケイパビリティの基本概念から、よく間違われる概念であるコアコンピタンスとの違い、活用方法や活用事例について見ていきます。
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ケイパビリティとは?
ケイパビリティとは、企業全体が持つ組織的な強みのことで、企業の成長に欠かせない要素です。ケイパビリティ(capability)は日本語で訳すと「能力」といった意味を持っています。人が持っている能力や才能といった意味合いですが、ビジネスでは個人としてではなく、ビジネスにおける組織的な能力のことを指します。そのため、社員が部署や取引先と連携して仕事を行う事が出来る能力や、多様性のあるチームづくりといったことがケイパビリティの要素として必要です。
ケイパビリティの重要性
ケイパビリティは、変化の激しい現代の社会においてさらに重要と考えられています。グローバル化、少子高齢化などといった外的環境の変化に対応するためには、ケイパビリティを重要視した組織作りが必要なのです。ケイパビリティを把握し、組織づくりを行う事で外的環境に左右されない企業の長期的な成長が見込めます。
また、ケイパビリティは模倣することが難しく、競合他社との競争において有利になるとも言われています。マーケティングの戦略や商品は可視化できますが、ケイパビリティなどは外部からは簡単に見えるものではなく、模倣することが難しいのです。短期間でつくることは難しいケイパビリティですが、一度完成してしまえば長期的な効果を得ることができます。
ケイパビリティとコアコンピタンスの違い
ケイパビリティと似ている概念として、「コアコンピタンス」があります。コアコンピタンスも、企業の能力として考えられていますが、コアコンピタンスは新商品開発の核となる強みのことを指します。そのため、競合他社にはない技術や能力をコアコンピタンスと言います。たとえば、ある企業が新製品の販売を開始する時、その製品の開発の核となった新技術がコアコンピタンスであり、その製品を開発・製造・品質管理して流通させるといった組織の連携プレーの能力がケイパビリティなのです。ケイパビリティは「組織力」、コアコンピタンスは「技術力」であると考えてもよいでしょう。
ケイパビリティを理解する方法
ケイパビリティを生かして成長していくためには、まずケイパビリティを理解することが必要です。2つの段階でケイパビリティを理解する方法を紹介します。
市場のニーズを確認する
まず自社の置かれている市場の状況について把握します。市場において、自社はどのような役割を持ち、そしてどのような成長の可能性があるのかを把握することが必要です。また市場は常に変化し続けます。一度市場における自社のニーズを把握してとしても常に観察し続ける必要があります。
自社の強みを知る
自社のおける市場での役割に気付いたら、自社にしか無い特徴的な強みを理解します。競合他社との差別化ができる強みに気づけたらケイパビリティが競争優位性となり、今後の自社の大きな成長に繋がります。
ケイパビリティの活用方法
ケイパビリティを理解したら効率的に活用する必要があります。今回は活用したい2つの競争戦略を解説し、事例を紹介します。
①-1ケイパビリティ・ベース競争戦略とは
組織が設定した独自のケイパビリティを最大限に活用し、競争優位を構築するために立てる戦略をケイパビリティ・ベース競争戦略と言います。スピードや効率性などで他社を圧倒するケイパビリティを有する企業であれば、ケイパビリティを生かした新たな競争戦略を立案することが可能となる、ということです。
①-2 ケイパビリティ・ベース競争戦略の事例
ケイパビリティ・ベース競争戦略の一例として、株式会社ミスミグループ本社の戦略があります。ミスミは、金型部品や電子部品などの生産財を通信販売で供給するという流通革命を起こした企業です。普通の商社であれば扱いを嫌がるような「単価が安く・種類も多く・量のまとまらないもの」などを効率的に調達・販売するオペレーションに長けていることがケイパビリティであると考え、金属製品や電子部品に限らず、医療用消耗品や飲食店向けの雑貨を手がけ始めました。
現在、金型部品や電子部品だけでなく、梱包・物流保管用品や安全保護・環境衛生・オフィス用品などをネット販売を行うなど事業を展開しています。
②-1ダイナミック・ケイパビリティ競争戦略とは
変化の激しいビジネス環境をいち早く認識し、環境に合わせて企業が保有する経営資源を素早く再構築・再編成する経営戦略のことをダイナミック・ケイパビリティ競争戦略と言います。顧客のニーズや競合他社の動向を観察・分析し、環境の変化をいち早く感じ取る感知能力。企業が保有する資源や知識を応用し、柔軟に再利用する捕捉能力。組織内外の既存資源を結合・再配置したり、体系を見直したりして、実際に再構築・再編成してマネジメントを行う変革能力。この3つの要素を上手く実行に移していくことで実現できる競争戦略です。このような戦略的な経営によって、企業は持続的な優位性を築くことができると考えられています。
②-2ダイナミック・ケイパビリティ競争戦略の事例
ダイナミック・ケイパビリティ競争戦略の一例として富士フィルムの戦略があります。富士フィルムは主に写真フィルムを製造していた企業です。しかし1990年代にデジタルカメラが普及したことで経営難に陥ります。同業他社が倒産していく中、富士フィルムは利益ゼロを避けるために既存の技術や知的財産を再利用することを決めます。自社の写真フィルム技術というコアコンピタンスを活かすことにフォーカスし、液晶を守る保護フィルムの開発・生産に取り組んだ結果、高価なデジタルカメラを守るものとして需要が高まり、事業転換に成功しました。現在では、医療分野や美容ヘルスケア分野でも成功しています。このように富士フィルムは高度な技術と知識を再利用し、既存の枠組みに捉われない事業展開を行うことでケイパビリティを生かした優位性を保つことに成功しました。
まとめ
組織的な能力を指すケイパビリティは、昨今の社会の変化に対応する強い企業をつくるために重要と考えらている概念です。まずは自社のケイパビリティを把握し、ケイパビリティを高めることで変化に負けない企業を目指してみてはいかがでしょうか。