ブランディングのRFP(提案依頼書)の書き方【2026年版】テンプレート・コンペの進め方・制作会社の選定基準
ブランディングのRFP(提案依頼書)の書き方を実務目線で解説。必須12項目、そのまま使えるテンプレート、予算の書き方、コンペの進め方と評価シートまで網羅します。
📌 この記事のポイント
- ブランディングのRFP(提案依頼書)は「発注者が何に困っていて、何を判断したいのか」を言語化する文書。仕様書ではなく課題の共有装置として書くと提案の質が跳ね上がります。
- 必ず書くべきは12項目。特に「背景・課題」「ゴールとKPI」「スコープ(含む/含まない)」「予算レンジ」「意思決定プロセス」の5つが抜けると、提案の比較が成立しません。
- 予算は明示すべきです。伏せると各社が異なる前提で見積もるため、比較不能な提案が並びます。レンジ提示+オプション建て付けが実務的な最適解です。
- コンペは2〜3ヶ月を標準スケジュールに。RFP配布からプレゼンまで最低3週間、質疑応答期間を必ず設けます。
- 評価は配点表で。戦略性30/クリエイティブ25/実行体制20/コスト15/カルチャーフィット10 のような配点を事前合意しておくと、社内稟議も通りやすくなります。
監修:株式会社レイロ ブランディングディレクター
ブランディング・CI/VI支援実績200件以上。上場企業のリブランディングから成長期スタートアップのブランド構築まで、発注側のRFP設計・コンペ運営支援も多数手がける。本記事は実際の提案依頼書レビューの現場知見をもとに構成しています。
「ブランディングを外部に依頼したいが、RFPをどう書けばいいのか分からない」——経営企画・広報・マーケティング部門の担当者から、最も多く寄せられる相談のひとつです。
システム開発やWeb制作のRFPであれば、機能要件・非機能要件という型がある程度確立されています。しかしブランディングは「何を納品してもらうか」自体が提案対象になりうる領域です。ロゴだけでいいのか、CI/VI一式なのか、その手前のブランド戦略から必要なのか。それを決めきれないままRFPを書こうとして手が止まる、というのが典型的なつまずき方です。
この記事では、発注する側の実務プロセスに絞って解説します。RFPに書くべき項目、そのまま流用できるテンプレート、予算の書き方、コンペの運営手順、提案の評価方法、そしてよくある失敗と回避策まで。社内稟議にそのまま持ち込める解像度を目指しました。
なお「どのブランディング会社を選ぶべきか」という会社選びの一般論についてはブランディング会社の選び方で詳しく扱っています。本記事はその手前の「発注プロセスの設計」に特化した内容です。
ブランディングのRFPとは?なぜ必要か
RFPは「仕様書」ではなく「課題の共有装置」
RFP(Request For Proposal=提案依頼書)とは、発注者が複数の候補会社に対して「こういう課題があるので、解決策を提案してください」と依頼するための文書です。
ここで多くの発注担当者が誤解するのが、RFPを「仕様書」だと思ってしまうことです。「ロゴ1案、名刺デザイン、封筒デザイン、Webサイトのトップページ」といった納品物リストを並べたRFPを配布すると、返ってくるのは見積書の比較だけになります。金額の安い会社が選ばれ、ブランディングとしての成果は出ない——これがRFPの失敗パターンの典型です。
ブランディングのRFPで本当に伝えるべきなのは、「なぜ今、ブランディングが必要になったのか」という背景です。
- 創業30年で事業内容が変わったのに、社名やロゴが実態と乖離している
- 採用競合に負けている。学生に「何をしている会社か分からない」と言われる
- 新規事業を立ち上げたが、既存ブランドとの関係整理ができていない
- 営業現場が毎回ゼロから自社説明をしていて、伝わり方がバラバラ
こうした具体的な症状を書くことで、提案側は「では、ブランドの何をどう整えるべきか」という設計から提案できます。納品物リストからは絶対に出てこない発想です。
RFI・オリエンシートとの違い
発注プロセスで登場する文書には似た名前のものが複数あります。混同しやすいので整理しておきます。
| 文書 | 目的 | 出すタイミング | 主な内容 | 分量の目安 |
|---|---|---|---|---|
| RFI(情報提供依頼書) | 候補会社の実績・体制・得意領域を把握し、コンペ参加社を絞り込む | RFP配布の1〜2ヶ月前 | 会社概要、実績、体制、概算費用感の質問項目 | A4 2〜3枚 |
| RFP(提案依頼書) | 具体的な課題を提示し、解決策と見積の提案を受ける | コンペ本番の3〜4週間前 | 背景・課題・ゴール・スコープ・予算・評価基準・スケジュール | A4 8〜15枚 |
| オリエンシート | RFPの内容を口頭説明で補完し、質疑を受ける場の資料 | RFP配布と同時、または直後の説明会 | RFPの要約+補足資料(既存デザイン、社内調査結果など) | スライド10〜20枚 |
| RFQ(見積依頼書) | 仕様が確定している前提で、金額のみを比較する | 仕様確定後 | 数量・仕様・納期の一覧 | A4 1〜2枚 |
ブランディング案件でRFQ(見積依頼書)だけを出すのは、原則として避けるべきです。仕様が固まっていない段階で金額比較をすると、各社が異なる前提で見積もるため、比較に意味がなくなります。
一方、候補会社が10社以上ある場合は、RFIで3〜5社に絞ってからRFPを配布する二段階方式が有効です。RFPは作成にも読解にも工数がかかるため、参加社が多すぎると双方が疲弊します。
RFPを作ることで得られる副次的な効果
RFPを書く作業そのものに、社内的な価値があります。
1. 社内の認識ズレが可視化される
「うちのブランディングの課題は何か」を文章にしようとすると、経営陣・広報・営業・人事で見ている課題が全く違うことが露呈します。この段階でズレを潰しておかないと、プロジェクト後半で「そもそも何のためにやっているのか」という議論が再燃します。
2. 稟議・予算取りの根拠になる
RFPには背景・課題・ゴール・KPI・予算・スケジュールが揃います。これはほぼそのまま稟議書の骨子です。ブランディングのKPI設計やブランディングのROIの考え方を組み込んでおくと、投資対効果の説明にも使えます。
3. 契約後のスコープ管理の基準になる
「これは追加費用ですか?」という揉め事の大半は、スコープ定義の曖昧さに起因します。RFPで「含む/含まない」を明記しておけば、判断基準が最初から共有されます。
RFPに必ず書くべき12項目
ここからが本題です。ブランディングのRFPに盛り込むべき12項目を、記載内容とよくある失敗とセットで整理します。
| # | 項目 | 記載すべき内容 | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| 1 | プロジェクト概要 | 一文で「何をしたいのか」。例:「創業50周年を機にコーポレートブランドを再構築したい」 | 「ブランディングをお願いしたい」だけで終わる。範囲が全く読めない |
| 2 | 企業・事業概要 | 事業内容、売上規模、従業員数、拠点、主要顧客、直近3年の変化 | Webサイトを見れば分かる情報のコピペ。「直近の変化」が抜ける |
| 3 | 背景・現状の課題 | なぜ今なのか。具体的な症状を3〜5個、できれば定量データつきで | 「ブランド力が弱い」など抽象語のみ。提案側が課題を推測するしかなくなる |
| 4 | プロジェクトのゴール | 完了時にどうなっていたいか。定性ゴールと定量ゴールを分けて | 手段(ロゴ刷新)をゴールに書いてしまう |
| 5 | KPI・成功指標 | 認知率、採用応募数、指名検索数、NPSなど測定可能な指標と目標値 | 一切書かない。または「売上向上」だけで測定不能 |
| 6 | スコープ(作業範囲) | 含むもの/含まないものを箇条書きで明示。判断保留の項目は「要提案」と明記 | 「含まないもの」を書かない。後から追加費用で揉める |
| 7 | 想定される納品物 | ロゴデータ、ガイドライン、ブランドブック、各種ツール一式など | 数量・形式・データ形式(AI/SVG/PDF)を書かない |
| 8 | 予算 | 総額レンジ、または上限額。フェーズ別の内訳希望があれば併記 | 「応相談」。各社バラバラの前提で見積もられ比較不能に |
| 9 | スケジュール | 提案締切、プレゼン日、契約日、キックオフ、中間、最終納品、公開日 | 最終納品日だけ書く。逆算した中間マイルストーンがない |
| 10 | 体制・意思決定プロセス | 発注側の担当者、決裁者、承認フロー、社内会議体の頻度 | 誰が最終決裁するのか書かない。提案が刺さらない |
| 11 | 提案してほしい内容 | 提案書の必須項目(体制図、進行計画、見積内訳、実績3件など) | 自由提案にして、各社の提案書のフォーマットがバラバラになる |
| 12 | 評価基準・選定方法 | 評価軸と配点、審査員、選定後の通知方法 | 非公開にする。提案側が力点を外し、結果として質が落ちる |
特に重要な5項目の書き方
12項目すべてが重要ですが、提案の質を大きく左右するのは以下の5つです。
① 背景・現状の課題(最重要)
抽象語を使わないことが鉄則です。「ブランド力を強化したい」ではなく、以下のように症状レベルで書きます。
現状の課題
1. 事業実態とのズレ:創業時は製造受託が売上の8割だったが、現在は自社製品が6割。しかし社名・ロゴ・Webサイトは受託時代のまま。商談初期に「OEMの会社ですよね」と言われることが年間数十件ある。
2. 採用:2024年度の新卒応募数が前年比△28%。内定辞退者アンケートで「事業内容が分かりにくい」が理由の上位に。
3. 表現の分散:営業資料が部署ごとに独自作成されており、会社紹介スライドが社内に12種類存在する。トーンもメッセージも統一されていない。
4. 海外展開:2026年からアジア圏での販売を開始予定だが、現行のロゴ・社名表記が現地で通用するか検証されていない。
ここまで書けば、提案側は「まずブランドの現在地調査と、事業戦略とブランドの接続から始めるべき」といった設計提案ができます。ブランディング戦略の立て方で扱っている戦略設計プロセスに接続しやすくなるのもポイントです。
② ゴールとKPI
ゴールは「定性」と「定量」を分けて書きます。
定性ゴールの例
– 自社が「何をする会社か」を、社員全員が同じ言葉で説明できる状態
– 採用候補者に対して、待遇以外の魅力が伝わっている状態
– 営業資料・Webサイト・展示会ブースのトーンが一貫している状態
定量ゴール(KPI)の例
| KPI | 現状値 | 目標値 | 測定時期 | 測定方法 |
|---|---|---|---|---|
| 指名検索数(月間) | 1,200 | 2,000 | 施策開始12ヶ月後 | Google Search Console |
| 新卒応募数 | 320名 | 450名 | 2027年度採用 | 採用管理システム |
| 社内ブランド浸透度(自社説明の一致率) | 未測定 | 80%以上 | 施策開始6ヶ月後 | 社内アンケート |
| 商談時の事業内容の誤認識件数 | 月平均5件 | 月1件以下 | 施策開始12ヶ月後 | 営業日報の集計 |
KPIを書けない場合は、「KPI設計そのものを提案に含めてほしい」と明記してください。これも立派な依頼事項です。詳しい指標設計はブランディングのKPI設計を参照してください。
③ スコープ(含む/含まない)
これを書かないRFPが本当に多いのですが、後々のトラブルの発生源です。
本件に含むもの
– ブランド戦略策定(現状調査・競合分析・ブランドコンセプト設計)
– CI/VI開発(ロゴ、カラー、タイポグラフィ、グラフィック要素)
– ブランドガイドライン制作(PDF、50ページ程度想定)
– 主要アプリケーション展開(名刺、封筒、社用車、サイン計画の基本設計)本件に含まないもの
– コーポレートサイトのリニューアル(2027年度に別案件として実施予定)
– 動画コンテンツ制作
– 広告出稿・メディアバイイング
– 登記変更、商標出願の実務(弁理士は当社にて手配。ただし商標調査の観点でのアドバイスは期待)要提案(含めるべきか判断がついていない項目)
– 社内浸透施策(インナーブランディングワークショップ等)の要否とボリューム
– 製品ブランドとコーポレートブランドの関係整理(ブランドアーキテクチャ)
「要提案」という枠を設けるのがコツです。発注者が決めきれていないことを正直に書くと、提案側の設計力が試せます。
④ 体制・意思決定プロセス
提案側が最も知りたい情報のひとつです。
推進体制
– プロジェクトオーナー:代表取締役社長
– 事務局:経営企画部 3名(うち専任1名)
– 関係部門:広報、人事、営業企画、製品開発
– 最終決裁:取締役会(月1回、第3水曜)
– 定例会議:隔週1時間(オンライン可)意思決定のルール
– デザイン案の絞り込みは事務局+役員2名の計5名で実施
– 全社アンケートによる投票は行わない(方針として決定済み)
「全社投票はしない」と明記されていると、提案側は安心します。デザインの多数決は成果を平凡にする典型パターンだからです。
⑤ 予算
これは章を分けて詳しく扱います。
RFP作成・コンペ設計からご相談いただけます
レイロはブランディング支援実績200件以上。「そもそもスコープをどう切ればいいか」「予算感が読めない」といった、RFPの要件整理段階からの壁打ちも歓迎です。提案依頼書のドラフトレビューだけのご相談も承っています。
そのまま使えるRFPテンプレート
実際のRFPの見出し構成と、各項目の記入例を示します。A4で8〜15ページが標準的なボリュームです。
表紙
【提案依頼書】コーポレートブランド再構築プロジェクト
株式会社◯◯◯◯ 経営企画部
発行日:2026年8月11日
提案書提出期限:2026年9月4日(金)17:00
本件に関する問い合わせ先:(氏名/部署/メールアドレス/電話番号)
取扱区分:社外秘(本書の内容は第三者への開示を禁じます)
1. はじめに
当社は2026年に創業50周年を迎えます。この節目にあたり、事業実態と乖離しつつあるコーポレートブランドを再構築し、次の10年に向けた成長基盤を整えることを目的として、本プロジェクトを立ち上げました。つきましては、貴社に提案をお願いしたく、本依頼書をお送りいたします。
2. 会社・事業概要
- 会社名/設立年/資本金/代表者
- 事業内容(セグメント別売上構成比を含む)
- 従業員数(正社員/契約社員の内訳、平均年齢)
- 拠点(本社・支社・工場・海外拠点)
- 直近3期の売上・営業利益推移
- 主要顧客層(BtoB/BtoCの比率、業種構成)
- 中期経営計画の要点(公開可能な範囲で)
「中期経営計画の要点」は必ず入れてください。ブランドは経営戦略の従属変数です。事業がどこへ向かうのかが分からないと、まともなブランド設計はできません。
3. 背景と現状の課題
- なぜ今このプロジェクトを実施するのか(トリガーとなった出来事)
- 現状の課題(3〜5項目、可能な限り定量データつき)
- これまでに実施した施策とその結果(過去に外部委託した経験があれば、その評価も)
- 社内で既に合意されている方針/まだ決まっていない論点
「まだ決まっていない論点」を書くのは勇気が要りますが、これがあると提案の解像度が上がります。
4. プロジェクトのゴールとKPI
- 定性ゴール(3項目程度)
- 定量ゴール(KPI表:指標/現状値/目標値/測定時期/測定方法)
- ゴール達成の判定者と判定時期
5. 業務範囲(スコープ)
- 含むもの(箇条書き)
- 含まないもの(箇条書き)
- 要提案項目(判断保留のもの)
6. 想定納品物
納品物 数量・仕様 形式 備考 ブランド戦略レポート 1式 PDF・PPTX ブランドコンセプト、ターゲット定義、ポジショニングを含む ロゴマーク 最終1案(提案は3案以上希望) AI・SVG・PNG・EPS 縦組・横組・シンボル単体のバリエーション含む ブランドカラー 基本色+補助色 CMYK/RGB/特色/HEX 指定 印刷再現ガイドを含む ブランドガイドライン 1式(40〜60ページ想定) PDF・InDesign原本 ブランドガイドラインの一般的構成を想定 ブランドブック 1式(社内配布用) PDF・印刷データ 印刷実費は別途 アプリケーション 名刺・封筒(角2/長3)・レターヘッド・社章 AI・PDF 印刷実費は別途
納品物の「データ形式」まで書いておくと、後で「AIデータは別料金です」と言われる事故を防げます。
7. 予算
本件の予算は税抜◯◯◯万円〜◯◯◯万円を想定しています。この範囲での最適な構成をご提案ください。
なお、予算超過となるがブランド上重要と考えられる施策がある場合は、オプションとして別建てでご提示ください。
8. スケジュール
日程 内容 8/11(月) RFP配布 8/18(月) オリエンテーション(オンライン・60分) 8/25(月)17:00 質問受付締切 8/27(水) 質問回答一斉送付 9/4(金)17:00 提案書提出締切 9/10(水)〜9/11(木) プレゼンテーション(各社60分+質疑30分) 9/18(木) 選定結果通知 9/30(火) 契約締結 10/6(月) キックオフ 2027/3月末 最終納品 2027/4/1 対外発表
9. 提案書に含めていただきたい内容
- 本件課題に対する貴社の見立て(現状分析)
- プロジェクトの全体設計とフェーズ構成
- 具体的な進行計画(ガントチャート)
- 体制図(担当者名・役割・関与度合い・稼働イメージ)
- 類似実績3件以上(業種・規模・課題・成果を含む)
- 見積内訳(フェーズ別・作業項目別)
- 契約後の変更・追加が発生しうるケースとその扱い
- 想定されるリスクと対応策
提案書は40ページ以内、PDFにて提出。デザイン案の提出は不要です。
「デザイン案の提出は不要」と明記するかどうかは大きな分岐点です。後述しますが、無償のデザイン提案を求めるコンペは、優良な会社ほど参加を辞退します。
10. 評価基準
評価項目 配点 評価の観点 戦略性 30 課題の捉え方の深さ、事業戦略との接続 クリエイティブ 25 実績の質、表現力、当社との相性 実行体制 20 担当者の経験、稼働の確保、進行管理力 コスト 15 予算適合性、内訳の妥当性 カルチャーフィット 10 コミュニケーションの相性、価値観の一致
11. 提出方法・留意事項
- 提出先メールアドレス、ファイル形式・容量上限
- 提案書作成費用は各社負担である旨
- 提案内容の著作権の帰属(不採用案の権利は提案社に帰属することを明記)
- 秘密保持について(NDA締結の要否とタイミング)
- 本件が中止・延期となる可能性がある場合はその旨
不採用案の著作権が提案社に帰属することを明記するのは、発注側のマナーです。ここを曖昧にしたRFPは、提案側から「この会社は危ない」と判断されます。
予算の書き方——予算を明示すべきか
RFPで最も相談が多いのが「予算を書くべきか」という論点です。
結論:書くべき。ただし「レンジ」で
予算を伏せると、以下の問題が確実に起こります。
1. 提案の比較が成立しない
A社は300万円の提案、B社は1,500万円の提案。中身が違いすぎて優劣を判断できません。安いA社を選んでも、実は必要な工程が抜けているだけかもしれない。
2. 提案側の見積が保守的になる
予算が読めないと、提案側はリスクを織り込んで高めに見積もるか、あるいは「取りにいく」ために極端に安い最小構成を出します。どちらも発注者にとって不利です。
3. 優良な会社が辞退する
実績のある会社ほど、予算不明の案件には慎重です。提案作成には数十万円相当の工数がかかるため、予算感の合わない案件に労力を割きたくないというのが本音です。
予算の書き方 3パターン
| 書き方 | 記載例 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| レンジ提示 | 「500〜800万円を想定」 | 最も推奨。スコープに幅がある場合 | 上限に張り付いた提案が来やすいので、内訳提示を必須にする |
| 上限提示 | 「上限800万円(税抜)」 | 社内予算が確定している場合 | 「上限内での最適構成を提案」と添えると質が上がる |
| フェーズ別提示 | 「戦略フェーズ200万/制作フェーズ400万/浸透フェーズ200万」 | スコープが明確な場合 | 配分が実態と合わないと提案側が動きにくい |
避けるべき書き方:「応相談」「貴社の標準的な費用感でご提案ください」「予算は決まっていません」。これらは提案の質を確実に下げます。
ブランディング費用の相場感
予算レンジを決めるための参考として、一般的な費用の目安を示します。ただし企業規模・スコープ・関与するメンバーの体制によって大きく変動するため、あくまで初期の検討材料としてご覧ください。
| スコープ | 費用の目安(税抜) | 標準期間 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| ロゴのみ | 50〜300万円 | 1.5〜3ヶ月 | ロゴ開発、基本カラー・書体規定、簡易レギュレーション |
| CI/VI 一式 | 200〜2,000万円 | 3〜8ヶ月 | ロゴ、カラー、タイポ、グラフィック要素、ガイドライン、主要アプリケーション |
| ブランド戦略込み | 500〜3,000万円 | 6〜12ヶ月 | 現状調査、競合分析、コンセプト設計+CI/VI開発+展開設計 |
| ブランドブック制作 | 50〜1,500万円 | 2〜6ヶ月 | 編集設計、取材・執筆、デザイン、印刷データ制作 |
| リブランディング(全社) | 1,000〜5,000万円 | 9〜18ヶ月 | 上記に加え、社内浸透施策、全アプリケーション刷新、対外発表設計 |
| インナーブランディング単体 | 100〜800万円 | 3〜9ヶ月 | ワークショップ設計・実施、社内媒体、浸透度測定 |
レンジが広いのは、以下の変数によって金額が大きく動くためです。
- 調査の深さ:定性インタビューのみか、定量調査を含むか(定量調査を入れると100〜300万円上乗せ)
- 展開点数:アプリケーションが名刺・封筒だけか、店舗サイン・車両・ユニフォーム・パッケージまで及ぶか
- 拠点数・海外対応:多言語展開が必要か
- 社内浸透の範囲:ガイドライン納品で終わるか、全社ワークショップまで含むか
- 体制:ディレクター1名で回すか、戦略・クリエイティブ・プロジェクトマネージャーの複数体制か
より詳細な費用構造については、ブランディングの費用相場、CI/VI制作の費用、ブランドブックの制作費用、ロゴデザインの費用相場でそれぞれ解説しています。RFPの予算欄を埋める前に一読しておくと、レンジ設定の精度が上がります。
予算不足が見えたときの対処
「やりたいことに対して予算が足りない」と分かった場合、以下の選択肢があります。
A. フェーズ分割する
初年度は戦略+ロゴまで、翌年度にガイドライン+展開、というように会計年度をまたいで分割します。RFPには「本件は第1フェーズ。第2フェーズは翌年度に別途発注予定」と明記し、全体像も共有しておくと、提案側は将来を見据えた設計をしてくれます。
B. スコープを絞る
アプリケーション展開を自社で内製する、印刷実費を自社手配にする、といった切り分けです。ただしガイドラインの品質を落とすと内製がうまくいかないため、ガイドラインには投資すべきです。
C. オプション建てで提案してもらう
「基本構成◯◯万円+オプションA/B/C」という形で提案を受け、稟議段階で取捨選択します。予算の追加承認を取る材料にもなります。
コンペ(提案依頼)の進め方 5ステップ
RFPが書けたら、次はコンペの運営です。標準的には2〜3ヶ月かかります。
ステップ1:候補会社のロングリスト作成(2〜4週間)
まず10〜20社程度のロングリストを作ります。情報源は以下の通りです。
- 過去の取引先・取引先からの紹介
- 業界デザイン賞の受賞歴
- 自社が「いいな」と思ったブランドの制作会社(多くの場合クレジットが公開されています)
- 業界団体の会員名簿
- Web検索・記事経由
この段階では絞り込みすぎないことが重要です。大手総合代理店・独立系ブランディングファーム・デザイン特化型スタジオの3タイプを混ぜてリスト化すると、比較の視野が広がります。各タイプの特性や見極め方はブランディング会社の選び方で詳述しています。
ステップ2:RFI・事前接触でショートリスト化(2週間)
ロングリストから3〜5社に絞ります。方法は2つ。
方法A:RFIを送る
簡易的な質問票(会社概要・実績・体制・費用感)を送り、回答を見て絞ります。10社以上の場合に有効。
方法B:事前面談(カジュアル面談)
候補各社と1時間程度の面談を行い、相性と得意領域を確認します。5〜7社程度ならこちらのほうが実質的な情報が得られます。この場で「うちの課題感はこうなんですが、どう見えますか」と聞くと、会社ごとの視点の違いがはっきり出ます。
ショートリストは3〜4社が適正です。5社を超えると、発注側の評価工数が現実的でなくなります。逆に2社では比較になりません。
ステップ3:RFP配布とオリエンテーション(1週間)
RFPをショートリスト各社に一斉送付します。同時にオリエンテーションを設定します。
オリエンの設計ポイント
- 形式:各社個別(60分)が推奨。合同オリエは効率的ですが、突っ込んだ質問が出にくくなります。
- 参加者:発注側は事務局+できれば決裁者。決裁者が15分でも顔を出すと、提案の本気度が変わります。
- 内容:RFPの補足説明20分+質疑40分。RFPを読み上げるだけの説明は不要です。
- 補足資料:既存のロゴ・VI規定、社内アンケート結果、直近の広報資料、中期経営計画(公開版)などを提供します。
- NDA:機密資料を渡す場合は、この段階で締結します。
質疑は必ず書面でも受け付け、全社への回答を一斉共有します。1社だけが持っている情報がある状態は、コンペの公正性を損ないます(質問者名は伏せます)。
ステップ4:提案書提出とプレゼンテーション(2〜3週間)
RFP配布からプレゼンまで最低3週間は確保してください。2週間を切ると、提案側は既存企画の流用で対応せざるを得なくなります。
プレゼンの運営
| 項目 | 推奨設定 | 理由 |
|---|---|---|
| 時間配分 | プレゼン40〜60分+質疑30分 | 質疑の時間を十分に取ることで、提案の底が見える |
| 会場 | 対面推奨(オンライン可も明記) | クリエイティブは実物・紙で見たほうが判断精度が上がる |
| 実施日 | 全社を1〜2日に集約 | 記憶が鮮明なうちに比較できる |
| 順番 | 事前にくじ引き等で決定し通知 | 公正性の担保。最後の社が有利になりやすい点は認識しておく |
| 参加者 | 全審査員が全社のプレゼンに出席 | 一部しか見ていない審査員がいると評価が歪む |
| 記録 | 録画・議事録(各社の許可を得て) | 後日の稟議資料として有用 |
質疑で聞くべき質問
- 「このプロジェクトの最大のリスクは何だと思いますか」
- 「実際に担当されるのはどなたですか。その方の稼働はどれくらい確保されますか」
- 「進行中に方向性の変更が必要になった場合、どう対応されますか」
- 「これまでで最もうまくいかなかった案件と、その原因を教えてください」
- 「納品後、社内で使われないガイドラインになるリスクをどう防ぎますか」
最後の2つは、提案書には書かれない実力が出ます。
ステップ5:評価・選定・通知(1〜2週間)
評価は次章の配点表に沿って行います。選定後の対応も重要です。
- 選定社への通知:電話またはオンラインで一次連絡し、その後に書面で正式通知。
- 不採用社への通知:必ず連絡します。可能であれば簡単なフィードバック(何が評価され、何が決め手にならなかったか)を伝えると、業界内での自社の評判が上がります。
- 不採用案の扱い:資料の返却または破棄、著作権の帰属を確認します。「良かったアイデアだけを採用社に伝える」のは絶対にやってはいけません。
標準スケジュール(2.5ヶ月モデル)
| 週 | 発注側の作業 | 提案側の作業 |
|---|---|---|
| W1-2 | ロングリスト作成、社内キックオフ | — |
| W3-4 | 事前面談、ショートリスト決定 | 面談対応 |
| W5 | RFP配布、オリエン実施 | RFP読み込み、質問作成 |
| W6 | 質問受付・回答共有 | 現状調査、企画立案 |
| W7-8 | プレゼン準備(会場・審査員調整) | 提案書作成 |
| W9 | プレゼンテーション実施 | プレゼン |
| W10 | 評価会議、決裁 | 追加質問対応 |
| W11 | 選定通知、契約条件交渉 | 契約準備 |
コンペ運営でお困りではありませんか
レイロはブランディング支援実績200件以上。提案側としてだけでなく、発注側のRFP設計・評価基準づくりのご相談も承っています。「まず何から決めればいいのか」の段階でも構いません。
提案の評価基準と評価シートの作り方
「なんとなく良さそうだった」で決めると、社内稟議で説明できません。配点表を事前に作り、審査員全員で共有しておきます。
標準的な配点例
| 評価項目 | 配点 | 評価の着眼点 | 5点満点の判定基準(抜粋) |
|---|---|---|---|
| 戦略性 | 30 | 課題の捉え方、事業戦略との接続、ブランドコンセプトの妥当性 | 5=RFPに書いていない本質的課題を指摘できている/3=RFPの記述を整理し直したレベル/1=課題認識が浅い |
| クリエイティブ | 25 | 実績の質、表現の幅、自社との相性、独自性 | 5=業種の常識を超えた提案がある/3=手堅いが既視感がある/1=実績の水準が要件に届かない |
| 実行体制 | 20 | 担当者の経験、稼働確保、進行管理、コミュニケーション設計 | 5=担当者が明示され稼働も具体的/3=体制図はあるが稼働が不明/1=営業と実務担当が分離しすぎ |
| コスト | 15 | 予算適合性、内訳の妥当性、追加費用の透明性 | 5=予算内かつ内訳が明快/3=予算内だが内訳が粗い/1=予算超過かつ根拠不明 |
| カルチャーフィット | 10 | 価値観の一致、議論のしやすさ、長期的関係の可能性 | 5=議論が噛み合い、率直な指摘もある/3=丁寧だが当たり障りがない/1=一方通行 |
| 合計 | 100 | — | — |
配点をカスタマイズする考え方
上記はあくまで標準例です。案件の性格に応じて調整してください。
| 案件タイプ | 配点の調整方針 |
|---|---|
| 事業転換を伴うリブランディング | 戦略性を35〜40に引き上げ。クリエイティブは20程度でも可 |
| ロゴ・VIの刷新のみ(戦略は社内で確定済み) | クリエイティブを35〜40に。戦略性は20程度 |
| 社内浸透が主目的 | 実行体制を30に引き上げ、ワークショップ設計力を明示的に評価 |
| 短納期・高難度 | 実行体制を30に。稼働確保の確実性を最重視 |
| 長期パートナーを探している | カルチャーフィットを20に引き上げ |
評価シートの運用ルール
1. 審査員は5〜7名
少なすぎると偏り、多すぎると平均化して無難な提案が勝ちます。事務局2名+役員2名+関連部門2名程度が現実的です。
2. 個別採点 → 集計 → 議論の順番
先に議論すると声の大きい人に引っ張られます。必ず個別に採点表を提出してもらってから集計し、その後で「なぜこの点をつけたか」を議論します。
3. 点数が割れた項目こそ議論する
全員が4点をつけた項目より、5点と2点が混在した項目に本質があります。何を見て評価が分かれたのかを掘ると、自社が本当に重視している価値が見えてきます。
4. コスト評価は「安さ」ではなく「妥当性」
最安値に満点をつける方式は避けてください。「予算内であれば一律満点、内訳の明快さで差をつける」ほうが、ブランディング案件では合理的です。
5. 定性コメント欄を必ず設ける
点数だけでは稟議書が書けません。「なぜこの会社なのか」を説明する材料として、各審査員のコメントを残します。
評価シートのフォーマット例
提案評価シート
提案社名:_____/評価者:_____/評価日:_____
評価項目 配点 素点(1〜5) 換算点 コメント 戦略性 30 素点÷5×30 クリエイティブ 25 素点÷5×25 実行体制 20 素点÷5×20 コスト 15 素点÷5×15 カルチャーフィット 10 素点÷5×10 合計 100 総評(自由記述・必須)
– 最も評価できる点:
– 最も懸念する点:
– この会社と1年間仕事をする想像がつくか(はい/いいえ/どちらとも言えない):
最後の質問は必ず入れてください。ブランディングは半年から1年以上の伴走になります。点数が高くても「1年間一緒にやる想像がつかない」相手だと、途中で必ず摩擦が起きます。
RFP・コンペでよくある失敗7つと回避策
実際の現場で頻出する失敗パターンです。
失敗1:課題が抽象的で、提案が一般論になる
症状:「ブランド力を高めたい」としか書いておらず、返ってきた提案が各社ほぼ同じ内容になる。
回避策:課題を「症状」で書く。数字・具体的な発言・実際に起きた出来事を入れる。RFP作成前に、営業部門と人事部門にそれぞれ30分ヒアリングするだけで、書ける材料が一気に増えます。
失敗2:予算を伏せて、比較不能な提案が並ぶ
症状:300万円と1,500万円の提案が並び、どちらが妥当か判断できない。
回避策:レンジで明示する。どうしても書けない場合は、せめて「500万円を超える提案は稟議の難易度が上がる」といった社内事情を共有します。
失敗3:無償でデザイン案を要求する
症状:RFPに「ロゴ案3案を提案書に含めること」と書いたところ、実績のある会社が軒並み辞退した。
回避策:提案段階でのデザイン制作物は求めないのが原則です。代わりに「類似実績3件」と「本件でのクリエイティブの方向性(言語+参考ビジュアル)」を求めれば、力量は十分に判断できます。
どうしてもデザイン案を見たい場合は、提案料(コンペフィー)を支払うべきです。相場は1社あたり20〜50万円程度。全社に支払うことで、提案の質と参加社の顔ぶれが明確に変わります。
失敗4:スケジュールが短すぎる
症状:RFP配布から10日でプレゼン。各社が既存企画の使い回しで対応し、提案の質が低い。
回避策:RFP配布からプレゼンまで最低3週間、可能なら4週間。逆に長すぎる(2ヶ月以上)と提案側のモチベーションが下がるので、3〜4週間が最適です。
失敗5:決裁者がプレゼンに出席しない
症状:事務局だけで選定を進めたが、最終決裁の場で役員が「これじゃない」と言い出し、選定がやり直しに。
回避策:決裁者は必ず全社のプレゼンに出席させます。日程が合わないなら、プレゼン日程のほうを決裁者の予定に合わせて組みます。これはコンペ設計の最優先事項です。
失敗6:スコープの「含まない」を書かず、追加費用で揉める
症状:契約後、「Webサイトの改修は範囲外です」「多言語版のガイドラインは追加費用です」と次々に判明し、予算が破綻。
回避策:「含まないもの」を明記する。判断がつかない項目は「要提案」枠に入れ、提案側に含めるべきか判断させます。
失敗7:デザイン案を全社投票で決める
症状:3案を社内アンケートにかけたところ、最も無難な案が1位に。結果として、以前とほとんど変わらないロゴになった。
回避策:デザインの意思決定は多数決にしない。RFPの「意思決定プロセス」欄に「全社投票は行わない」と明記します。社員の声を聞くこと自体は有効ですが、それは「どう受け取られるか」の参考情報であって、決定権ではありません。
社内の納得を得たい場合は、投票ではなく決定プロセスへの参加(ワークショップでのコンセプト共創など)を設計するほうが効果的です。この考え方はコーポレートブランディングやリブランディングの進め方でも触れています。
コンペをやらないという選択肢
ここまでコンペ前提で書いてきましたが、コンペをしないほうが良い案件も確実に存在します。
随意契約・指名依頼が有効なケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 既存パートナーが自社を深く理解している | ゼロから理解してもらうコストのほうが大きい。ブランドの継続性という観点でも有利 |
| 予算が300万円以下 | コンペの運営コスト(発注側の工数+提案側の負担)が案件規模に見合わない |
| 納期が3ヶ月未満 | コンペだけで1〜2ヶ月使うと、実制作の時間がなくなる |
| 機密性が極めて高い | M&A関連、未公表の事業転換など。接触社数を最小化すべき |
| 求める作風が明確に決まっている | 「この会社のこの表現がいい」と決まっているなら、比較する意味が薄い |
| 前回のコンペで次点だった会社がある | 直近で提案を受けており、実力を把握済み。改めてコンペをする必要は薄い |
随意契約でも守るべきこと
コンペをしない場合でも、RFPは作ってください。相手が1社でも、RFPがあることで以下のメリットがあります。
- 社内の課題認識が統一される
- 見積の根拠が明確になり、稟議が通しやすい
- スコープが文書化され、後の追加費用トラブルを防げる
- 相手も「何を求められているか」が分かり、提案の精度が上がる
また、随意契約の妥当性を稟議で説明するために、「なぜコンペをしないのか」の理由を文書化しておきましょう。上表のケースに当てはめて記載すれば十分です。
「2社比較」という中間解
フルコンペと随意契約の中間として、2社を指名して提案を受ける方式もあります。
- 発注側の工数はコンペの半分以下
- 提案側の負担も小さいため、参加してもらいやすい
- 1社では見えない「別の考え方」が得られる
- 短期間(3〜4週間)で完結できる
予算500万円前後、期間6ヶ月程度の案件では、この方式が最もバランスが良いと感じます。
プロジェクト開始後を見据える
どの方式で選ぼうと、選定はゴールではなくスタートです。契約後に効いてくるのは、以下の準備です。
- 社内の推進体制:専任担当を1名は置く。兼務のみの体制はほぼ確実に遅延します
- 中間承認のタイミング:戦略フェーズ終了時、デザイン方向性決定時、最終案決定時の3つは、必ず経営層の承認を挟む
- 浸透設計の前倒し:納品されたガイドラインが使われないという失敗を防ぐため、キックオフ時点で「誰が・いつ・どう使うか」を決めておく
- 測定の仕込み:KPIのベースライン(現状値)は、プロジェクト開始前に測定しておかないと効果検証ができません
ブランドを構成する要素の全体像はブランディングの構成要素、CI/VIの設計思想はCI/VIデザインとは、納品物としてのブランドブックの中身はブランドブックの作り方でそれぞれ解説しています。RFPを書く前に目を通しておくと、スコープと納品物の記述が具体化します。
よくある質問
Q. RFPは何ページくらいが適切ですか?
A. A4で8〜15ページが標準です。3ページ以下だと情報が足りず提案の質が下がり、30ページを超えると読み込みの負荷が高くなって本質が埋もれます。本文を10ページ程度に収め、既存のロゴ規定・社内アンケート結果・中期経営計画などは別添資料として切り出すのが実務的です。重要なのは分量よりも「背景・課題・ゴール・スコープ・予算・意思決定プロセス」の6要素が具体的に書かれているかどうかです。この6つが埋まっていれば、5ページでも十分に機能するRFPになります。
Q. 提案段階でロゴ案を出してもらうことはできますか?
A. 求めること自体は可能ですが、無償で要求すると実績のある会社ほど辞退します。ロゴ1案の提案には調査・設計・制作で数十万円相当の工数がかかるためです。どうしても事前にクリエイティブを見たい場合は、1社あたり20〜50万円程度の提案料(コンペフィー)を支払う方式をおすすめします。無償で判断したい場合は、類似実績3件の提出と、本件におけるクリエイティブの方向性を言語+参考ビジュアルで説明してもらう形にすれば、力量の見極めは十分に可能です。
Q. 予算が固まっていない段階でRFPを出しても大丈夫ですか?
A. 「まったく決まっていない」状態での配布は避けてください。比較不能な提案が並び、コンペそのものが無駄になります。ただし正確な金額が決まっていなくても、「300〜600万円のレンジで検討中、超過する場合はオプションとして別建て提示を希望」といった書き方であれば十分機能します。予算レンジの設定が難しい場合は、RFP配布前に候補会社1〜2社とカジュアル面談を行い、想定スコープでの概算感を聞いてから社内予算を組み立てるという順序も有効です。
Q. コンペに何社呼ぶのが適切ですか?
A. 3〜4社が適正です。2社では比較の幅が足りず、5社を超えると発注側の評価工数が現実的でなくなります。プレゼン1社あたり90分、審査員5名で計算すると、5社なら延べ37.5時間の社内工数がかかる計算です。候補が10社以上ある場合は、RFIまたはカジュアル面談で3〜4社に絞ってからRFPを配布する二段階方式にしてください。また、大手総合型・独立系ブランディングファーム・デザイン特化型のようにタイプの異なる会社を混ぜると、比較の視野が広がります。
Q. 不採用になった会社の提案アイデアを使うのは問題ありますか?
A. 明確に問題があります。提案書に含まれるアイデアやコンセプトの著作権は、原則として提案した会社に帰属します。不採用社の提案を採用社に伝えて実現させる行為は、著作権侵害や不正競争行為に問われる可能性があるほか、業界内での自社の評判を著しく損ないます。RFPには「不採用案の著作権は提案社に帰属する」旨を明記し、選定後は資料の返却または破棄を約束してください。どうしても不採用社のアイデアを使いたい場合は、正式にアイデア買取の交渉を行うのが筋です。
まとめ
ブランディングのRFPは、発注者の課題を言語化し、提案側と共有するための装置です。納品物リストではなく、背景・課題・ゴールを具体的に書くことで、提案の質は劇的に変わります。
要点を再掲します。
- 課題は「症状」で書く。抽象語を使わない
- 予算はレンジで明示する。伏せると比較が成立しない
- スコープは「含まない」も書く。追加費用トラブルの予防になる
- 意思決定プロセスを明記する。特に「全社投票はしない」の宣言は有効
- 評価は配点表で。事前合意しておけば稟議も通りやすい
- 無償のデザイン提案は求めない。求めるなら提案料を払う
- コンペをしない選択肢も検討する。小規模・短納期なら随意契約が合理的
RFPを書き始めて「そもそもスコープをどう切るべきか分からない」「予算レンジの設定根拠がない」と手が止まったら、その段階で外部に相談してしまうのも一つの手です。要件整理そのものを支援できる会社であれば、RFP作成のプロセス自体が課題整理の機会になります。
RFPのドラフトレビューから承ります
レイロはブランディング・CI/VI支援実績200件以上。「このRFPで提案は集まるか」「予算レンジは妥当か」といったご相談から、コンペ設計、評価基準づくりまでお手伝いしています。まだ何も決まっていない段階でも構いません。
関連記事
- ブランディング会社の選び方 — 会社のタイプ別特性と見極めのポイント
- ブランディングの費用相場 — スコープ別の費用構造を詳しく解説
- CI/VI制作の費用 — CI/VI開発の内訳と変動要因
- ブランドブックの制作費用 — 編集・取材・デザインの費用感
- ブランディング戦略の立て方 — 戦略設計の全体プロセス
- ブランディングのKPI設計 — 測定可能な指標の作り方
- ブランドガイドライン — 納品物としてのガイドラインの構成
- リブランディングの進め方 — 全社的なブランド再構築の手順
