ブランドブックとは?作り方・構成要素・事例を徹底解説【完全ガイド】
「自社のブランドの世界観をチーム全員で共有したいが、どうまとめればいいかわからない」「新しく入社したメンバーに、ブランドの”らしさ”をどう伝えればいいのだろう」——こうした悩みを抱えるブランド担当者や経営者は少なくありません。ブランドの方向性が社内で共有されていなければ、製品開発、マーケティング、顧客対応のあらゆる場面で「ブレ」が生じ、ブランド価値は徐々に毀損されていきます。
その課題を解決する強力なツールがブランドブックです。ブランドブックとは、企業のブランドの存在意義・世界観・ビジュアル表現・行動指針をひとつの冊子やドキュメントにまとめたもので、社内外のすべてのステークホルダーがブランドを正しく理解し、一貫した体験を届けるための”ブランドの教科書”とも呼べる存在です。
本記事では、株式会社レイロがブランディング支援の実務で蓄積してきた知見をもとに、ブランドブックの基本的な意味から構成要素、作り方の6ステップ、国内外の有名企業事例、デザインのポイント、社内への浸透施策、費用と外注先選びのコツまでを網羅的に解説します。「ブランドブックとは何か」を知りたい方はもちろん、「これから自社のブランドブックを作りたい」という実務担当者にとっても、すぐに活用できる実践的なガイドです。
Contents
ブランドブックとは?ブランドガイドラインとの違い
ブランドブックを正しく理解するためには、まずその定義を明確にし、しばしば混同される「ブランドガイドライン」との違いを整理することが重要です。両者の役割を正確に把握することで、自社に必要なドキュメントがどちらなのか(あるいは両方なのか)を判断できるようになります。
ブランドブックの定義と役割
ブランドブックとは、企業やブランドの「らしさ」を体系的にまとめたドキュメントのことです。ブランドの歴史、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)、世界観、パーソナリティ、ビジュアル表現のガイド、コミュニケーションのトーン&マナーなどを、ストーリーテリングの手法で一冊にまとめます。
ブランドブックの最大の特徴は、単なるルール集ではなく「ブランドへの共感と理解を深めるための読み物」であるという点です。ブランドがなぜ存在するのか、どのような価値を社会に届けようとしているのか、そのブランドらしさとは具体的に何なのか——こうした本質的な問いに対する答えを、ビジュアルとテキストの両面から伝えます。
ブランドブックの主な読者は社内の従業員ですが、取引先やパートナー企業、新規採用候補者にも共有されることがあります。とりわけ、以下のような場面でブランドブックは効果を発揮します。
- 新入社員のオンボーディング: 入社直後にブランドの本質を理解させることで、早期にブランドの体現者としての自覚を持ってもらえる
- クリエイティブ制作の起点: 広告・Web・パッケージなどあらゆるクリエイティブの制作において、ブランドの世界観に立ち返るための基準となる
- 経営判断の拠り所: 新規事業や提携先の選定において、ブランドの方向性と合致しているかを判断する材料になる
- 外部パートナーとの共有: デザイン会社やPR会社などの外注先にブランドの本質を短時間で伝達できる
このように、ブランドブックは単なる社内資料ではなく、企業のブランド活動全体の「北極星」のような存在です。
ブランドガイドラインとの違いを徹底比較
ブランドブックとブランドガイドラインは、しばしば同義語として扱われますが、その目的と性質には明確な違いがあります。以下の表で比較してみましょう。
| 比較項目 | ブランドブック | ブランドガイドライン |
|---|---|---|
| 主な目的 | ブランドへの共感・理解を深める | ブランド表現のルールを統一する |
| 内容の性質 | ストーリー・感情・世界観重視 | ルール・仕様・規格重視 |
| 主な読者 | 全従業員・経営層・パートナー | デザイナー・クリエイター・制作者 |
| 記載のトーン | 読み物として楽しめる語り口 | マニュアルとして明確な指示 |
| ビジュアル | 写真・イラスト豊富で感覚的 | 規格図・余白指定・カラーコードなど技術的 |
| 使用頻度 | 定期的に読み返す(月1回〜年1回) | 制作時に都度参照 |
| ページ数の目安 | 20〜60ページ程度 | 30〜100ページ以上 |
| 更新頻度 | 大きな方針転換時に改訂 | 新規タッチポイント追加時に随時更新 |
端的に言えば、ブランドブックは「Why(なぜ)」と「What(何を)」を伝えるドキュメントであり、ブランドガイドラインは「How(どのように)」を規定するドキュメントです。
多くの成功企業は、ブランドブックとブランドガイドラインの両方を作成しています。ブランドブックでまずブランドの本質を共有し、その世界観を具体的なデザインルールに落とし込んだものがブランドガイドラインという関係です。ブランドガイドラインの作り方については、別記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ブランドブックが企業にもたらす5つの価値
ブランドブックを作成することで、企業は以下の5つの価値を得ることができます。
1. インナーブランディングの加速
ブランドブックはインナーブランディングの最も効果的なツールの一つです。従業員がブランドの歴史や理念を深く理解し、共感することで、日々の業務におけるブランドらしい行動が自然と生まれます。特にリモートワークが普及した現在、物理的な空間を共有しなくても、ブランドブックを通じてブランドの一体感を醸成できます。
2. ブランドの一貫性の確保
組織が成長し、関わる人が増えるほど、ブランド表現にブレが生じやすくなります。ブランドブックがあれば、すべてのメンバーが同じブランドの世界観を共有した状態で意思決定や制作を行えるため、タッチポイントを横断した一貫性が保たれます。
3. 採用ブランディングへの貢献
採用選考のプロセスでブランドブックを候補者に見せることで、企業の理念や文化を効果的に伝えられます。ブランドの世界観に共感する人材が集まることで、カルチャーフィットの高い採用が実現し、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
4. 意思決定の効率化
「このデザインはうちのブランドらしいか?」「この提携先はブランドの方向性に合っているか?」——日々の業務で生じるこうした判断において、ブランドブックは明確な基準を提供します。個人の感覚に頼らない、ブランドに根差した意思決定が可能になります。
5. ブランド資産の見える化
企業が長年にわたって培ってきたブランドの価値は、暗黙知として組織内に散在していることが少なくありません。ブランドブックは、この暗黙知を形式知化し、誰でもアクセスできる状態にします。経営者の交代や組織改編があっても、ブランドのDNAが失われにくくなります。
ブランドブックに入れるべき構成要素
ブランドブックの完成度は、どのような要素を盛り込むかで大きく左右されます。ここでは、株式会社レイロがブランディング支援で推奨するブランドブックの構成要素を、カテゴリ別に解説します。自社のブランドブックを作成する際のチェックリストとしてもご活用ください。
ブランドの核:MVV・パーパス・ストーリー
ブランドブックの冒頭に位置し、最も重要なセクションです。ここでは、ブランドの「なぜ(Why)」を明確にし、読者の共感を引き出します。
ミッション(Mission)
ミッションとは、ブランドが社会に対して果たす使命です。「何のために存在するのか」「誰のどんな課題を解決するのか」を簡潔かつ力強い言葉で表現します。ミッションは日々の判断基準にもなるため、抽象的すぎず、かつ長期的に変わらない普遍的なものであることが理想です。
ビジョン(Vision)
ビジョンとは、ブランドが目指す将来の姿です。「10年後・20年後にどのような世界を実現したいのか」を描きます。ミッションが現在の使命であるのに対し、ビジョンは未来の到達点です。従業員がワクワクし、共に目指したいと感じるような「旗印」であることが大切です。
バリュー(Value)
バリューとは、ミッションとビジョンを実現するために大切にする価値観や行動原則です。3〜7つ程度のキーワードやフレーズで表現されることが多く、日常業務における意思決定の基準として機能します。「イノベーション」「誠実さ」「顧客中心」など、具体的でありながらブランド固有の文脈を持つ表現が効果的です。
ブランドパーパス
近年注目を集めるパーパスは、ミッション・ビジョンよりもさらに上位の概念で、「企業が社会に存在する意義」を表します。利益追求だけではなく、社会的価値の創造を志向するパーパス経営の考え方は、特にZ世代やミレニアル世代の共感を得やすく、採用やブランドロイヤルティの向上にも寄与します。
ブランドストーリー
ブランドがどのように生まれ、どのような困難を乗り越え、今に至るのかを物語として紡ぎます。創業者の想い、転機となった出来事、象徴的なエピソードなどを、読み物として魅力的なストーリーテリングで伝えます。データや論理だけでは伝わらない、ブランドの「人間味」を届けるセクションです。
ブランドアイデンティティの設計方法については関連記事もご参照ください。
ビジュアル要素:ロゴ・カラー・タイポグラフィ
ブランドの視覚的な表現を規定するセクションです。ブランドガイドラインほど技術的・詳細な仕様は不要ですが、ブランドの世界観を視覚的に伝えるために不可欠な要素群です。
ロゴマーク・ロゴタイプ
ブランドを象徴するロゴの意味や込められた想いを解説します。ロゴの成り立ち、デザインコンセプト、形状が持つ意味(例:曲線は親しみやすさ、シャープな直線は先進性)を伝えることで、従業員がロゴを「単なる記号」ではなく「ブランドの象徴」として誇りを持って使えるようにします。
ブランドカラー
ブランドを代表するプライマリーカラーとセカンダリーカラーを紹介します。単にカラーコードを羅列するのではなく、なぜその色を選んだのか、その色が与える印象やブランドとの関連性を説明します。ブランドカラーの選び方と効果を理解しておくと、色選びに説得力が生まれます。
タイポグラフィ
ブランドで使用するフォントの紹介と、そのフォントを選んだ理由を記載します。見出し用・本文用・キャッチコピー用など用途別のフォントがある場合は、それぞれの使い分けの意図も伝えます。
写真・イラストのスタイル
ブランドが使用する写真やイラストのトーン&マナーを示します。「明るく自然光を活かした写真」「モノトーンのミニマルなイラスト」など、ブランドの世界観を表現するビジュアルの方向性を、実例とともに伝えます。
コミュニケーション要素:トーン&マナー・メッセージ
ブランドがどのような「声」で語り、どのような「言葉遣い」で伝えるかを定義するセクションです。ビジュアルと並んでブランドの印象を大きく左右する要素であり、特にSNSやオウンドメディアなどのテキストコミュニケーションが増えた現代では重要性が高まっています。
トーン&マナー(Tone of Voice)
ブランドの「声の質」を定義します。たとえば、「親しみやすく温かい口調」「知性的で洗練された表現」「大胆で挑戦的な言葉選び」など、ブランドのパーソナリティに基づいた話し方のガイドラインです。
効果的なトーン&マナーの定義では、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」の両面を具体例とともに示します。例えば「〇〇と言う代わりに、〇〇という表現を使う」といった具体的なBefore/Afterがあると、実務での活用度が格段に高まります。
キャッチコピー・タグライン
ブランドを端的に表現するキャッチコピーやタグラインの意味と使い方を解説します。なぜこの言葉が選ばれたのか、どのようなメッセージを込めているのかを深堀りし、従業員がその言葉に込められた意味を正確に理解できるようにします。
ブランドメッセージのDo’s and Don’ts
ブランドとして推奨する表現と避けるべき表現を具体的にリストアップします。NG表現のリストがあることで、社外に発信するコンテンツの品質管理がしやすくなります。
ブランドパーソナリティと行動指針
ブランドを「人」に見立てた場合のキャラクター特性と、従業員が日々の業務で実践すべき行動指針を定義するセクションです。
ブランドパーソナリティ
ブランドが持つ人格的な特性を5〜7つ程度のキーワードで表現します。「誠実」「革新的」「遊び心がある」「知性的」「温もりがある」など、ブランドを擬人化した場合の性格特性を明確にします。パーソナリティの定義は、コミュニケーションのトーンやビジュアル表現の判断基準にもなるため、具体的な行動例とセットで記載すると効果的です。
行動指針(ブランドビヘイビア)
ブランドの価値観を日常の行動に落とし込んだ指針です。「お客様への電話応対」「会議での発言」「メールの書き方」「SNSでの投稿」など、具体的なシチュエーションにおけるブランドらしい行動とは何かを示します。
行動指針は抽象的な理念と現場の業務をつなぐ架け橋として機能します。単に「顧客第一」と掲げるのではなく、「顧客からの問い合わせには2時間以内に一次回答を行う」「お客様の名前を必ず呼び、個別の対応を心がける」といった具体性があると実践に直結します。
有名企業のブランドブック事例5選
ブランドブックの理想像を掴むには、先進的な企業の事例から学ぶのが最も効果的です。ここでは、国内外の有名企業のブランドブック事例を5つ取り上げ、それぞれの特徴と学ぶべきポイントを解説します。
Apple — ミニマリズムと一貫性の極致
Appleのブランドブック(Brand Identity Guidelines)は、ブランドの一貫性を追求する姿勢の象徴です。Appleのブランドブックの特徴は、製品デザインと同様にミニマルで洗練されたビジュアル言語で構成されている点にあります。
Appleがブランドブックで徹底しているのは「シンプルさの中に深い意味を込める」というフィロソフィーです。ロゴの使用ルール一つをとっても、余白の取り方、背景色との組み合わせ、最小サイズの規定などが緻密に定められています。しかし、それらは単なるルールの羅列ではなく、「なぜシンプルでなければならないのか」「なぜ余白が大切なのか」というブランドの哲学とセットで語られています。
学ぶべきポイント: ブランドの哲学(Apple の場合は”Think Different”)をすべてのルールの根底に置くことで、ルールが形骸化せず、ブランドの本質的な理解を促すブランドブックが完成します。
Airbnb — 「Belong Anywhere」を体現するビジュアルストーリー
Airbnbのブランドブックは、そのブランドパーパスである「Belong Anywhere(どこにいても、居場所がある)」を全ページで体現しています。特筆すべきは、多様なホストやゲストの実際の写真をふんだんに使い、リアルな「所属感」を視覚的に伝えている点です。
Airbnbは2014年にロゴを「Belo(ビロ)」と呼ばれるシンボルマークに刷新した際、このブランドブックを全面的に再設計しました。新しいシンボルマークが「人」「場所」「愛」「Airbnb」の4つの要素を組み合わせたものであるというストーリーを、イラストとアニメーションを交えて視覚的にわかりやすく伝えています。
学ぶべきポイント: ブランドのシンボルやビジュアル要素に込められた意味を、ストーリーとして豊かに語ることで、読者の感情に訴えかけるブランドブックを作ることができます。
スターバックス — ブランド体験を細部まで設計
スターバックスのブランドブック(Creative Expression)は、コーヒーショップとしてのブランド体験を包括的に定義しています。ロゴやカラーパレットだけでなく、店舗の音楽、バリスタのエプロンの色、カップのデザイン、季節ごとのキャンペーンビジュアルに至るまで、顧客体験のあらゆるタッチポイントがブランドブックの対象です。
特に参考になるのは、「サードプレイス(家でも職場でもない第三の場所)」というブランドコンセプトを、空間デザインのガイドラインとして具体化している点です。照明の明るさ、家具の素材感、BGMのジャンルとボリュームなど、五感に訴えるブランド体験が言語化されています。
学ぶべきポイント: ブランド体験はビジュアルだけではありません。顧客が五感で感じるすべての要素を言語化し、ブランドブックに落とし込むことで、どの店舗・どのチャネルでも一貫したブランド体験が提供できます。
無印良品 — 「何もないこと」の豊かさを語る
無印良品(MUJI)のブランドブックは、「無」の哲学を体現する独自のアプローチで知られています。無印良品のブランドブックでは、ブランドのアイデンティティを「引き算の美学」として定義し、装飾を極力排した余白の多いレイアウトで構成されています。
特徴的なのは、商品そのものよりも「暮らし」を中心に据えたビジュアルの使い方です。商品単体のカットではなく、生活空間の中に自然と溶け込んでいる状態を写真で表現することで、「これが無印良品のある暮らし」というブランドの世界観を伝えています。
学ぶべきポイント: ブランドブックのデザイン自体が、ブランドの世界観を体現していることが理想です。無印良品のように「シンプルさ」がブランドの核であれば、ブランドブックそのものもシンプルであるべきです。フォーマットと内容の一致が、説得力のあるブランドブックを生み出します。
中川政七商店 — 日本の工芸に誇りを持つブランドストーリー
日本企業の事例として、中川政七商店のブランドブックも注目に値します。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げる同社のブランドブックは、300年以上の歴史を持つ企業のヘリテージ(遺産)を活かしながら、現代のマーケットに響くブランドストーリーを構築しています。
ブランドブックでは、創業からの歴史を年表形式で紹介するだけでなく、各時代のエピソードをストーリーとして丁寧に紡いでいます。また、取引先の工芸メーカーとの関係性も含め、サプライチェーン全体を「ブランドの一部」として捉えるアプローチは、BtoB企業や製造業のブランドブック作成においても大いに参考になります。
学ぶべきポイント: 長い歴史を持つ企業は、その歴史自体がかけがえのないブランド資産です。歴史を単なる「沿革」ではなくストーリーとして語り、現在のブランドパーパスと結びつけることで、唯一無二のブランドブックが完成します。
ブランドブックの作り方6ステップ
ここからは、ブランドブックを実際に作成する具体的なプロセスを6つのステップで解説します。株式会社レイロでは、ブランディング支援において以下のフレームワークに基づいてブランドブック制作をサポートしています。各ステップを丁寧に踏むことで、形だけではない、真に機能するブランドブックが完成します。
ステップ1:ブランドの現状分析と課題の明確化
ブランドブック作成の最初のステップは、ブランドの現状を客観的に把握することです。「今、ブランドがどのような状態にあるのか」「何が課題なのか」を正確に理解しなければ、効果的なブランドブックは作れません。
社内インタビュー
経営層、マネジメント層、現場の従業員それぞれに対して、ブランドに関するインタビューを実施します。「自社のブランドを一言で表すと?」「競合との違いは?」「顧客にどんな価値を提供しているか?」といった質問を通じて、ブランドに対する認識のギャップを可視化します。
このステップで驚くほど多いのが、経営層と現場でブランドの認識が大きく異なるケースです。経営層は「イノベーション」をブランドの核だと考えているのに、現場の従業員は「堅実さ」がブランドの特徴だと認識している——こうしたギャップが見つかることで、ブランドブックに盛り込むべき内容の優先順位が明確になります。
顧客調査
既存顧客や見込み顧客に対するアンケートやインタビューも有効です。「なぜ自社を選んでくれたのか」「自社に対してどのようなイメージを持っているか」「改善してほしい点は何か」を把握することで、社内の認識と市場の認識のギャップも明らかになります。
競合分析
自社のブランドポジションを明確にするために、競合他社のブランディング状況も分析します。競合がどのようなブランドメッセージを発信し、どのようなビジュアル表現を用いているかを調べることで、自社のブランドが差別化できるポイント(独自の価値提案)を見つけ出します。
ステップ2:ブランドコンセプトとアイデンティティの策定
現状分析の結果をもとに、ブランドの核となるコンセプトとアイデンティティを策定します。このステップでは、経営層を中心としたワークショップを開催し、組織全体のコンセンサスを形成しながら進めることが重要です。
ブランドコンセプトの策定
ブランドコンセプトとは、ブランドの存在意義を凝縮した一文です。「誰に」「どのような価値を」「なぜ」届けるのかを明確にします。ブランドコンセプトはブランドブック全体の背骨となるため、時間をかけて丁寧に言語化しましょう。
ブランドアイデンティティの構築
ブランドアイデンティティとは、ブランドが「こう見られたい」と意図する姿です。ブランドパーソナリティ(人格特性)、ブランドプロミス(顧客への約束)、ブランドポジション(市場での立ち位置)、ブランドバリュー(提供する価値)などの要素を体系的に整理します。
ブランドアイデンティティの構築手法を参照し、自社にとって最適なフレームワークを選択してください。
ブランドストーリーの構築
創業の経緯、成長のプロセス、転機となった出来事、未来への展望をストーリーとして構成します。優れたブランドストーリーには「困難の克服」「価値の再発見」「共感を呼ぶ人間ドラマ」といった要素が含まれており、読者の心に残るナラティブとなります。
ステップ3:ビジュアルアイデンティティの整理
ブランドのコンセプトとアイデンティティが固まったら、それを視覚的に表現するビジュアルアイデンティティを整理します。すでにVI(ビジュアルアイデンティティ)が確立されている企業はその情報を整理し、VIがまだ整備されていない企業はこのタイミングで策定します。
ロゴの設計意図と使用ガイド
ロゴのデザインに込められた意味や、正しい使い方のガイドラインを整理します。ブランドブックでは技術的な仕様(カラーコード、最小サイズなど)を細かく記載する必要はありませんが、ロゴの「意味」と「大切に扱ってほしい理由」を明確にします。
カラーパレットの設計
プライマリーカラー(メインカラー)、セカンダリーカラー(サブカラー)、アクセントカラーを定義し、それぞれの色が持つ意味やブランドとの関連性を解説します。色はブランドの印象を最も強く左右する要素の一つであり、CI・VI設計の観点からも慎重な選定が求められます。
タイポグラフィとグラフィックエレメント
使用するフォントや図形パターンなど、ブランドのビジュアルシステムを構成する要素を整理します。
ステップ4:コンテンツの執筆とビジュアル制作
ここまでの準備が整ったら、いよいよブランドブックの中身を制作するフェーズに入ります。テキストコンテンツの執筆とビジュアル素材の制作を並行して進めます。
テキストコンテンツの執筆
ブランドブックの文章は、マニュアルの無味乾燥な記述ではなく、読者の共感を引き出す「読み物」として書くことが大切です。以下のポイントを意識しましょう。
- 一文を短くし、読みやすさを優先する
- 専門用語を避け、誰でも理解できる言葉を使う
- 具体的なエピソードや事例を織り交ぜる
- ブランドのトーン&マナーに合った文体で書く(フォーマルなブランドならフォーマルに、カジュアルなブランドならカジュアルに)
- 「読んだ後に何をすべきか」が明確になるアクション指向の記述を心がける
ビジュアル素材の制作
写真撮影、イラスト制作、図表のデザインなどを行います。ブランドブックのビジュアルは、ブランドの世界観を視覚的に体現するものであるため、汎用的なストックフォトの乱用は避け、自社オリジナルの素材を可能な限り使用します。
オリジナル写真の撮影が難しい場合は、ブランドの世界観に合致するストックフォトを厳選し、トーンや色調を統一する後処理を施すことで、一貫性のあるビジュアルを実現できます。
ステップ5:デザイン・レイアウトと編集
コンテンツとビジュアルが揃ったら、ブランドブック全体のデザインとレイアウトを行います。
ページ構成(ページ割り)
ブランドブック全体の流れを設計します。一般的な構成は以下の通りです。
- 表紙
- 目次
- はじめに(代表メッセージ or ブランドステートメント)
- ブランドストーリー
- ミッション・ビジョン・バリュー
- ブランドパーソナリティ
- ビジュアルアイデンティティ(ロゴ、カラー、タイポグラフィ)
- トーン&マナー・コミュニケーションガイド
- 行動指針
- 裏表紙
レイアウトデザイン
ブランドブックのレイアウトそのものが、ブランドの世界観を表現する重要な要素です。余白の取り方、写真とテキストのバランス、見出しのサイズ感など、すべてのデザイン判断がブランドの印象に影響します。
印刷物として制作する場合は、紙質や製本方法もブランド体験の一部です。手触りの良い上質紙を使ったり、特殊な製本を採用したりすることで、「大切に扱いたくなる」ブランドブックになります。デジタル版であれば、インタラクティブなPDFやWebベースのブランドポータルとして制作するのも有効です。
ステップ6:社内への展開と運用体制の構築
ブランドブックは完成がゴールではありません。社内に効果的に展開し、日々の業務で活用される仕組みを構築することが最も重要なステップです。
ローンチイベントの開催
ブランドブックの完成を全社に知らせるローンチイベントを開催します。経営トップ自らがブランドブックの意義を語り、全従業員に配布することで、「このブランドブックは会社にとって重要なものである」というメッセージを組織全体に伝えます。
ブランドアンバサダーの育成
各部署にブランドの伝道師(ブランドアンバサダー)を配置し、現場レベルでのブランドブックの活用を推進します。アンバサダーはブランドブックの内容を深く理解し、日常業務の中でブランドらしい行動のお手本を示す役割を担います。
定期的な見直しと更新
事業環境の変化やブランド戦略のアップデートに合わせて、ブランドブックも定期的に見直します。1〜2年に1回の頻度で内容を検証し、必要に応じて改訂を行うことで、ブランドブックは「生きたドキュメント」として機能し続けます。
デザインのポイントとテンプレート活用法
ブランドブックのデザインは、内容の伝わりやすさとブランドの世界観の表現を両立させる必要があります。ここでは、効果的なデザインのためのポイントと、テンプレートを活用する際の注意点を解説します。
読まれるブランドブックのレイアウト原則
ブランドブックのデザインにおいて最も大切なのは「読んでもらえること」です。どれだけ素晴らしい内容が書かれていても、開かれなければ意味がありません。以下の原則を押さえることで、手に取って読みたくなるブランドブックが実現します。
原則1:ビジュアルファーストの構成
ブランドブックは、テキストの海で埋め尽くすのではなく、ビジュアルを主役にした構成が効果的です。見開き(2ページ)単位でデザインを考え、左ページに大きなビジュアル、右ページにテキストという構成や、全面ブリード(裁ち落とし)の写真の上にテキストを重ねるレイアウトなど、雑誌のような視覚的魅力を持たせましょう。
各セクションの冒頭にはフルページの写真やイラストを配置し、テキストに入る前にビジュアルで世界観を伝えることで、読者を引き込む効果があります。
原則2:余白を恐れない
デザインにおいて余白(ホワイトスペース)は「空いている場所」ではなく「意味のある空間」です。特にブランドブックでは、余白が読者に「考える間」を与え、メッセージの浸透を促進します。
テキストの行間(ラインハイト)は本文フォントサイズの1.6〜2.0倍、マージン(ページの余白)は十分に確保し、1ページあたりの情報量を適切にコントロールしましょう。「1ページ1メッセージ」の原則を守ることで、各ページの内容が確実に伝わります。
原則3:ストーリーの流れを意識したページ構成
ブランドブックを最初から最後まで通して読んだときに、一つの大きなストーリーとして成立するよう、ページ構成を設計します。冒頭で読者の興味を引き、中盤でブランドの核心に迫り、終盤でアクションを促すという起承転結の構造を持たせましょう。
各セクション間の移行にも工夫が必要です。セクションの冒頭に「問いかけ」を置いたり、前のセクションからの接続を意識した導入文を書いたりすることで、読者を離脱させない流れを作ります。
原則4:一貫性のあるデザインシステム
ブランドブック全体で使用するデザイン要素(見出しのスタイル、引用のデザイン、ページ番号のフォーマット、キャプションの書き方など)を統一します。このデザインシステム自体が、ブランドの一貫性の見本でもあります。
テンプレートの活用と注意点
ブランドブックの作成に際して、テンプレートの活用を検討する企業は多いでしょう。Canva、Adobe InDesign、PowerPoint、Figmaなどのデザインツールでは、ブランドブック向けのテンプレートが数多く提供されています。
テンプレートのメリット
- 制作時間の大幅な短縮(ゼロからのデザインと比較して50〜70%程度の時間削減が見込める)
- プロフェッショナルなレイアウトの基盤を手軽に入手できる
- デザインの知識が限られたチームでも、一定の品質を担保できる
- 複数のレイアウトパターンから最適なものを選択できる
テンプレート活用時の注意点
テンプレートは便利なツールですが、いくつかの注意点があります。
- カスタマイズは必須: テンプレートをそのまま使うと、自社のブランドらしさが表現できません。カラー、フォント、写真、レイアウトの比率などを自社のVIに合わせてカスタマイズしましょう。
- 汎用性と独自性のバランス: テンプレートは汎用性が高いぶん、競合企業と似たような見た目になるリスクがあります。テンプレートをベースにしつつも、独自のグラフィック要素やアイコンを追加して差別化しましょう。
- ブランドとの整合性チェック: テンプレートのデザインテイストが自社のブランドイメージと合致しているか、導入前に慎重に確認します。ポップなテンプレートをフォーマルなブランドに適用しても、違和感が生じるだけです。
推奨ツール別の特徴
| ツール | 特徴 | 適した企業規模 | コスト |
|---|---|---|---|
| Canva | テンプレート豊富、共同編集可、印刷入稿対応 | 小〜中規模 | 無料〜月額1,500円 |
| Adobe InDesign | プロ仕様のレイアウト、高品質な印刷対応 | 中〜大規模 | 月額2,728円〜 |
| Figma | Web版のインタラクティブ対応、共同編集 | スタートアップ〜大規模 | 無料〜月額$15 |
| PowerPoint | 社内で馴染みのあるツール、テンプレート活用 | 小規模(簡易版) | Office365に含まれる |
デジタルブランドブックとインタラクティブ化
近年は、印刷物の冊子に加えて、デジタル版のブランドブックを制作する企業が増えています。デジタルブランドブックには、以下のような利点があります。
動画・アニメーションの組み込み
ブランドストーリーを動画で伝えたり、ロゴのアニメーションモーションを示したりすることで、紙のブランドブックでは表現しきれない動的なブランド表現を伝えられます。
検索・リンク機能
必要な情報に素早くアクセスできる検索機能や、関連ページへのリンク機能を搭載することで、日常業務での利便性が高まります。
バージョン管理と更新の容易さ
デジタル版であれば、ブランド戦略の変更に合わせてリアルタイムで内容を更新できます。常に最新のブランド情報が共有される状態を維持しやすくなります。
アクセス解析
誰がどのページをどのくらい閲覧しているかを把握できるため、ブランドブックの活用状況を定量的に測定し、改善に活かせます。
ブランドブックを社内に浸透させる方法
ブランドブックを作成しただけでは、ブランドは浸透しません。多くの企業が「ブランドブックを作ったが、本棚の肥やしになっている」という問題を抱えています。ここでは、ブランドブックを社内に確実に浸透させるための具体的な施策を紹介します。
インナーブランディングにおけるブランドブックの位置づけ
ブランドブックは、インナーブランディング全体の中で「知識共有ツール」として位置づけられます。しかし、ブランドブックだけでインナーブランディングが完結するわけではありません。ブランドブックを起点として、以下のような多層的な施策を展開することで、真の意味でのブランド浸透が実現します。
ブランドブック配布(知識の共有)→ ワークショップ(理解の深化)→ 日常業務での実践(行動の変革)→ 成功事例の共有(文化の醸成)
この4段階のサイクルを継続的に回すことが、インナーブランディング成功の鍵です。ブランドブックは最初のステップを担い、その後の施策の土台となるものです。
ワークショップとブランド研修の設計
ブランドブックの内容を深く理解してもらうために、参加型のワークショップやブランド研修を実施します。一方的な講義形式ではなく、対話やグループワークを取り入れることで、従業員がブランドを「自分ごと」として捉える効果が高まります。
ブランドブック読解ワークショップ
ブランドブックの各セクションを読み、グループでディスカッションを行います。「ミッションを自分の言葉で説明するとしたら、どう表現するか?」「バリューを日々の業務に当てはめると、どんな場面で活かせるか?」といった問いを設定し、一人ひとりの解釈を共有します。
ブランド体現ワークショップ
ブランドの価値観に基づいた行動を、ロールプレイング形式で実践します。「ブランドらしい顧客対応」「ブランドの価値観に反する行動の見極め」など、具体的なシチュエーションを設定し、理論と実践を結びつけます。
新入社員向けブランドオリエンテーション
入社後1週間以内にブランドブックを用いたオリエンテーションを実施し、最初のタッチポイントでブランドの本質を伝えます。新入社員が「この会社のブランドは素晴らしい、自分もその一員になれてうれしい」と感じるような体験をデザインすることが大切です。
デジタルツールを活用した継続的な浸透施策
ワークショップは強力ですが、年に数回の開催では浸透効果が持続しません。日常的にブランドに触れる仕組みを、デジタルツールを活用して構築しましょう。
社内ポータルでのブランドブック常設
社内のイントラネットやポータルサイトにブランドブックのデジタル版を常設し、いつでもアクセスできる状態にします。トップページにブランドに関するコーナーを設け、定期的にコンテンツを更新することで、ブランドへの意識を日常的に喚起します。
ブランドクイズ・チャレンジの実施
月に1回、ブランドブックの内容に基づいたクイズやチャレンジを実施します。「今月のブランドクイズ」として、ブランドの歴史、MVV、カラーコード、トーン&マナーに関する問題を出題し、正答率の高い部署を表彰するなどのゲーミフィケーション要素を取り入れると、楽しみながらブランドの知識が定着します。
Slack/Teamsでのブランドチャンネル運営
社内コミュニケーションツールにブランド専用チャンネルを開設し、ブランドに関する情報やディスカッションを日常的に行います。「今日のブランドらしい行動」「ブランドブックのこのページが好き」といった気軽な投稿を促進し、ブランドについて語ることを社内文化として根付かせます。
ブランドムービーの制作と配信
ブランドブックの内容を3〜5分のショートムービーにまとめ、社内研修やオリエンテーションで活用します。映像は文字よりも感情に訴えかける力が強く、ブランドストーリーの伝達に特に効果的です。四半期ごとにテーマを変えて新しいムービーを配信すれば、継続的な浸透効果が期待できます。
浸透度を測定するKPIの設定
ブランドブックの浸透施策を「やりっぱなし」にしないためには、効果を定量的に測定するKPIの設定が不可欠です。以下のような指標を定期的に計測し、施策の改善に活かしましょう。
| KPI | 測定方法 | 目標の目安 |
|---|---|---|
| ブランド理解度スコア | ブランドに関するアンケート調査(年2回) | 80%以上の正答率 |
| ブランドブック閲覧率 | デジタル版のアクセスログ | 全従業員の70%以上が月1回以上閲覧 |
| ブランド行動実践度 | 360度評価にブランド行動項目を追加 | 平均4.0以上(5段階評価) |
| 従業員エンゲージメント | eNPS(Employee Net Promoter Score) | +20以上 |
| ブランド一貫性スコア | 外部評価・顧客満足度調査 | 前年比5ポイント以上改善 |
ブランドブック作成の費用と外注先選び
ブランドブックの制作を検討する際、多くの企業が「費用はどのくらいかかるのか」「自社で作るべきか、外注すべきか」という疑問を持ちます。ここでは、費用の相場と外注先選びのポイントを具体的に解説します。
ブランドブック制作の費用相場
ブランドブックの制作費用は、ページ数、デザインの凝り度、コンテンツの制作範囲によって大きく異なります。以下は一般的な費用の目安です。
簡易版ブランドブック(10〜20ページ)
- 費用目安:50万〜150万円
- 内容:MVV、ロゴ・カラーガイド、基本的なトーン&マナー
- 適した企業:中小企業、スタートアップ、初めてブランドブックを作る企業
- 制作期間:1〜2ヶ月
標準版ブランドブック(20〜40ページ)
- 費用目安:150万〜400万円
- 内容:MVV、ブランドストーリー、ビジュアルガイド、トーン&マナー、行動指針
- 適した企業:中堅企業、ブランドリニューアルを行った企業
- 制作期間:2〜4ヶ月
フルスペック版ブランドブック(40〜80ページ)
- 費用目安:400万〜1,000万円以上
- 内容:上記に加え、オリジナル写真撮影、カスタムイラスト、デジタル版の同時制作、ブランドムービー、ブランドガイドラインとのセット制作
- 適した企業:大企業、グローバル企業、本格的なリブランディングを行った企業
- 制作期間:3〜6ヶ月
費用に含まれる主な項目
- ブランド調査・分析費用(インタビュー、アンケート、競合分析)
- ブランドコンセプト・ストーリー策定費用
- コピーライティング費用
- デザイン・レイアウト費用
- 写真撮影・イラスト制作費用
- 印刷費用(紙質・部数による)
- デジタル版制作費用(該当する場合)
- ディレクション・プロジェクト管理費用
外注先の種類と選び方
ブランドブックの制作を外注する場合、主に以下の種類のパートナーが選択肢となります。
ブランディング専門会社
ブランド戦略の策定からクリエイティブ制作まで一貫して対応できるのが最大の強みです。ブランドの本質を深く理解した上でブランドブックを制作するため、単なる「きれいな冊子」ではなく、戦略に裏打ちされた「機能するブランドブック」が完成します。費用は比較的高めですが、ブランド戦略からの一貫した支援を受けたい企業には最適です。
株式会社レイロでは、ブランド戦略の策定からブランドブック制作、さらにはインナーブランディングの浸透支援まで、一気通貫のブランディング支援を提供しています。「ブランドブックを作りたいが、そもそもブランドの方向性から整理したい」という企業にも対応可能です。
デザイン制作会社
ビジュアルデザインに強みを持つ制作会社です。すでにブランド戦略やコンセプトが確立されており、それをビジュアル化する工程を依頼したい場合に適しています。クリエイティブの品質は高いですが、ブランド戦略の策定から関わってくれるかは会社によって異なります。
広告代理店
大手広告代理店の中にはブランディングの部門を持つところもあり、大規模なブランドプロジェクトの一環としてブランドブック制作を依頼できます。ただし、費用は高めになる傾向があり、中小企業には必ずしも最適とは限りません。
フリーランス(デザイナー・ライター)
コストを抑えたい場合の選択肢です。デザイナーとコピーライターを個別に手配し、自社でディレクションを行います。柔軟性は高いですが、プロジェクト全体のクオリティコントロールは自社の責任となります。
外注先を選ぶ際のチェックリスト
外注先を選定する際は、以下のポイントを確認しましょう。
- ブランドブック・ブランドガイドラインの制作実績があるか:ポートフォリオで過去の成果物を確認し、自社が求めるクオリティに合致しているか判断します。
- ブランド戦略の理解度が高いか:デザインスキルだけでなく、ブランド戦略やブランドマネジメントに関する知見を持っているかを確認します。初回のヒアリングでブランドの本質に関する深い質問を投げかけてくる会社は信頼できます。
- コミュニケーションの質が高いか:ブランドブックの制作は数ヶ月にわたるプロジェクトです。レスポンスの速さ、提案の質、フィードバックへの対応力など、コミュニケーションの質を見極めましょう。
- ブランド浸透まで支援してくれるか:ブランドブックの「制作」だけでなく、「活用」「浸透」までサポートしてくれるパートナーを選ぶと、投資対効果が格段に高まります。
- 費用の透明性があるか:見積もりの内訳が明確で、追加費用が発生する条件が事前に提示されているかを確認します。
まとめ
本記事では、ブランドブックの基本的な意味からブランドガイドラインとの違い、構成要素、有名企業の事例5選、作り方の6ステップ、デザインのポイント、社内への浸透方法、費用と外注先選びまでを網羅的に解説しました。
改めて、ブランドブック制作で押さえるべき重要ポイントを整理します。
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ブランドブックはルール集ではなく「共感のツール」: ブランドの世界観やストーリーを通じて、従業員やステークホルダーのブランドへの理解と共感を深めるためのドキュメントです。ブランドガイドラインとは目的が異なることを理解しましょう。
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構成要素の4つの柱を押さえる: MVV・パーパス・ストーリー(ブランドの核)、ビジュアル要素(ロゴ・カラー・タイポグラフィ)、コミュニケーション要素(トーン&マナー・メッセージ)、パーソナリティ・行動指針——この4つの柱をバランスよく盛り込みましょう。
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作り方は6ステップで進める: 現状分析→コンセプト策定→VI整理→コンテンツ制作→デザイン→社内展開の6ステップを丁寧に踏むことで、形だけでない、真に機能するブランドブックが完成します。
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デザインそのものがブランド表現: ブランドブックのデザインは、ブランドの世界観を体現する必要があります。テンプレートを活用する場合も、自社のVIに合わせたカスタマイズは必須です。
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作って終わりにしない浸透施策: ワークショップ、デジタルツール、ブランドアンバサダーの育成など、多層的な浸透施策を展開し、KPIで効果を測定しましょう。
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外注先はブランド戦略の理解度で選ぶ: デザインの美しさだけでなく、ブランドの本質を理解し、浸透まで支援してくれるパートナーを選ぶことが成功の鍵です。
ブランドブックは、企業のブランド活動全体の「北極星」であり、インナーブランディングの最も強力なツールの一つです。本記事で解説した内容を参考に、自社のブランドの本質を体系的にまとめたブランドブックの制作に、ぜひ取り組んでみてください。
ブランドブック制作のご相談は株式会社レイロへ
「自社のブランドブックを作りたい」「ブランドの方向性から整理したい」「インナーブランディングを強化したい」——そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ株式会社レイロにご相談ください。ブランド戦略の策定からブランドブック制作、社内浸透まで、一貫したブランディング支援で貴社のブランド価値向上を実現します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ブランドブックとブランドガイドラインは同じものですか?
ブランドブックとブランドガイドラインは混同されがちですが、目的と性質が異なります。
**ブランドブック**は、ブランドの存在意義、世界観、ストーリー、パーソナリティを伝え、読者の「共感」と「理解」を深めるためのドキュメントです。主な読者は全従業員や経営層、外部パートナーで、読み物としての魅力を持つ構成が特徴です。
**ブランドガイドライン**は、ロゴの使い方、カラーコード、タイポグラフィ、余白の規定など、ブランド表現の「ルール」を詳細に定めたドキュメントです。主な読者はデザイナーやクリエイターで、マニュアルとしての正確性が求められます。
多くの企業では両方を作成し、ブランドブックでブランドの本質を共有した上で、ブランドガイドラインで具体的な表現ルールを運用するという使い分けをしています。両者は対立するものではなく、補完関係にあります。
Q2. ブランドブックの最適なページ数はどのくらいですか?
ブランドブックの最適なページ数は、企業の規模、ブランドの複雑さ、対象読者によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
– **コンパクト版(10〜20ページ)**: スタートアップや中小企業向け。MVV、ロゴ・カラーの基本ガイド、トーン&マナーの概要をまとめます。
– **標準版(20〜40ページ)**: 中堅企業向け。上記に加え、ブランドストーリー、ビジュアルガイドの詳細、行動指針を含みます。
– **フルスペック版(40〜80ページ)**: 大企業やグローバル企業向け。すべての要素を詳細にカバーし、複数のサブブランドや地域別のガイドも含みます。
重要なのは、ページ数を目的にしないことです。「読んでもらえる」ことが最優先であり、20ページの読まれるブランドブックのほうが、80ページの読まれないブランドブックより遥かに価値があります。まずはコンパクト版から始め、必要に応じて拡充していくアプローチも有効です。
Q3. ブランドブックはどのくらいの頻度で更新すべきですか?
ブランドブックの更新頻度は、大きく「定期更新」と「トリガー更新」の2つの考え方があります。
**定期更新**: 1〜2年に1回のペースで、内容の妥当性を検証します。市場環境の変化、自社のブランド戦略の進化、従業員からのフィードバックなどをもとに、必要に応じて内容を修正・追加します。大幅な改訂が不要な場合でも、事例やデータの更新、写真の入れ替えなどのリフレッシュを行うことで、「最新のドキュメントである」という印象を維持できます。
**トリガー更新**: 以下のような「トリガー(きっかけ)」が発生した場合は、定期更新を待たずに速やかに改訂します。
– リブランディングを実施した場合
– 経営理念やMVVを変更した場合
– ロゴやVIを大幅にリニューアルした場合
– 大規模なM&Aや組織再編が行われた場合
– 新規事業や新ブランドの立ち上げがあった場合
デジタル版のブランドブックであれば、軽微な修正は随時行い、大きな改訂は年次で実施するという運用が効率的です。
Q4. 中小企業やスタートアップでもブランドブックは必要ですか?
結論として、中小企業やスタートアップこそブランドブックを作成すべきです。その理由は主に3つあります。
**1. 成長フェーズでのブランドブレを防ぐ**
スタートアップが成長し、メンバーが増えるフェーズでは、創業期に共有されていたブランドの世界観が急速に薄まるリスクがあります。10人のチームが50人になった時に、全員がブランドの本質を理解している状態を維持するには、ブランドブックが不可欠です。
**2. 採用におけるカルチャーフィットの向上**
ブランドブックを採用プロセスで活用することで、自社の理念や文化に共感する人材を引きつけやすくなります。特にスタートアップでは、少人数のチームにおけるカルチャーフィットが事業の成否を左右するため、ブランドブックの採用効果は非常に大きいです。
**3. 外部パートナーとのコミュニケーション効率化**
中小企業はデザインやマーケティングを外注するケースが多く、その際にブランドブックがあれば、毎回のブリーフィングにかかる時間を大幅に削減できます。
最初から完璧なブランドブックを作る必要はありません。10〜15ページ程度のコンパクト版から始め、事業の成長に合わせて拡充していけば十分です。
Q5. ブランドブックの制作を外注する場合、何を準備しておくべきですか?
外注先にブランドブックの制作を依頼する際、事前に以下の情報を整理しておくと、プロジェクトがスムーズに進みます。
**必須の準備事項**:
– 企業の基本情報(設立年、事業内容、従業員数、主要な製品・サービス)
– 現在のロゴデータ(AI形式やSVG形式のベクターデータ)
– ブランドに関する既存資料(会社案内、CI規定、過去のブランドガイドラインなど)
– ブランドブック制作の目的と期待する成果
– 想定する読者(全従業員、新入社員、外部パートナーなど)
– おおよその予算感とスケジュール
**あると理想的な準備事項**:
– ミッション・ビジョン・バリューの言語化(未整理の場合は外注先と一緒に策定)
– ブランドの強みや差別化ポイントに関する社内の共通認識
– 参考にしたい他社のブランドブック(好みのテイストが伝わる事例)
– 社内で撮影した写真や動画素材
– 顧客の声やエピソード
すべてが完璧に揃っている必要はありません。むしろ、整理されていない状態から一緒に言語化していくプロセス自体が、ブランドへの理解を深める貴重な機会となります。株式会社レイロでは、ブランドの現状分析からブランドブック完成まで、伴走型でサポートする体制を整えています。
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