音楽業界とブランディング戦略のイメージ

Spotify、Apple Music、YouTube Musicといったストリーミングサービスが音楽消費の主戦場となった2026年、音楽業界のブランディングは「レコードを売る」から「体験と関係性を売る」へと根本的な転換を迎えました。IFPI Global Music Reportによると世界の音楽市場は10年連続で成長し、そのうちストリーミングが約7割を占めるまでになっています。しかし、Spotifyだけで毎日10万曲以上の新曲が投稿される超過剰供給の中で、単純に楽曲を配信するだけでは埋もれるだけ。BTSやYOASOBI、米津玄師といった成功例が示すように、これからの音楽ビジネスで生き残るには、アーティストIP・レーベル・ライブ・音楽出版という4つのプレイヤーが連動した明確なブランド戦略が不可欠です。本記事では、ストリーミング時代における音楽業界ブランディングの現状と、4プレイヤー別の差別化戦略、K-POP方式のファンダム設計、ライブ×グッズ×配信の三位一体モデル、そして国内外の最新成功事例までを徹底解説します。

1. ストリーミング時代の音楽業界市場構造

ストリーミングと音楽市場の変化

CD販売からストリーミングへ、収益構造の変化

かつての音楽業界は「CDやレコードを売る」パッケージビジネスが中核でした。ヒットチャート=オリコン、レコード大賞=業界の頂点という時代です。しかし2016年頃から状況は激変します。Spotifyの日本上陸、Apple Musicの普及、AmazonのUnlimitedプラン。国内でもLINE MUSICやAWA、YouTube Musicが浸透し、CDセールスは10年で約1/3にまで縮小しました。

一方でストリーミング再生回数は年率20%を超えるペースで拡大し、日本レコード協会のデータでも2025年時点で音楽配信売上がフィジカル売上を初めて上回りました。1再生あたりの単価はSpotifyで約0.3〜0.5円と極めて低いものの、グローバル市場に瞬時にアクセスできる利点は絶大です。米津玄師の「Lemon」が総再生10億回を超え、YOASOBI「アイドル」がBillboard Global 200で1位を獲得したのは、この配信インフラなしには実現しませんでした。

プラットフォーム経済とアーティストの主導権

Spotify、Apple Music、YouTube Musicの三大DSP(デジタル・サービス・プロバイダー)に加え、TikTok、Instagram Reels、YouTube ShortsといったSNSプラットフォームが「発見の入口」となり、音楽業界のバリューチェーンは劇的に組み替えられました。ヒット曲は「テレビで露出→CD売上」ではなく、「TikTokでバズ→Spotify再生急増→ライブ動員拡大→グッズ・タイアップ収益」という循環モデルに変化しています。

この構造変化がもたらしたのは、アーティスト自身のブランド主導権拡大です。従来はレーベルとメディアが「売り出す」構造でしたが、SoundCloudやBandcamp、Beatportといったインディー系プラットフォームを起点に、自分でファンを囲い込み、レーベルと対等契約する新世代アーティストが増えています。Chance the Rapper、Lil Nas X、日本ではSTUTS、藤井風などがこの例です。ブランディングはもはやレーベル任せではなく、アーティスト自身が能動的に構築するものとなりました。

ライブ市場の再定義

コロナ禍を経て、ライブ市場は「動員数」だけでなく「単価×体験価値×配信」の複合モデルへと変容しました。日本のライブエンタメ市場は2025年に約7200億円規模まで回復し、フェス・単独公演・配信ライブがそれぞれ独立したブランド価値を持つようになっています。BTSのオンラインコンサート「MAP OF THE SOUL ON:E」が世界107カ国から99万人を動員した事例は、配信ライブが新たな収益柱となることを証明しました。日本国内でもニジプロジェクト、YOASOBIのアリーナツアーが即完売するなど、ブランド化されたアーティストのライブは需要が供給を大きく上回る状況です。

2. 4プレイヤー別ブランディング戦略

音楽業界の4プレイヤー戦略

音楽業界のブランディングを考える上で欠かせないのが、4つの主要プレイヤーそれぞれの立ち位置と戦略の違いを理解することです。

プレイヤー別ブランド戦略比較表

プレイヤー 主なKPI ブランド軸 収益源 代表事例
アーティスト ファン数・再生回数・エンゲージメント 世界観・音楽性・パーソナリティ ロイヤリティ・ライブ・グッズ・タイアップ BTS/YOASOBI/米津玄師/藤井風
レーベル 所属アーティスト成長・カタログ価値 A&R力・制作力・グローバル展開力 原盤権・配信・シンクロ Sony/UMG/Warner/エイベックス
ライブ事業 動員・客単価・稼働率 会場ブランド・体験設計・アクセス チケット・グッズ・飲食・スポンサー Zepp/ぴあアリーナ/京セラドーム
音楽出版 楽曲使用回数・シンクロ収益 楽曲カタログ・作家陣容・シンクロ営業力 印税・映像/CM/ゲーム利用 Sony Music Publishing/JASRAC加盟社

アーティストブランディング

アーティスト自身がブランドとなるための3要素は「音楽性の一貫性」「ビジュアル世界観」「パーソナリティ/ストーリー」です。米津玄師は「ボカロP出身のアーティスト」というルーツを持ちながら、独自の絵画的ビジュアル、感情表現の深い歌詞、実写に登場しない神秘性という3要素で唯一無二のブランドを確立しました。藤井風はピアノ弾き語り+岡山弁+ミニマルなスタイルで「日本発グローバルアーティスト」の新モデルを提示しています。

こうしたアーティストブランドの構築は、ブランドストーリーテリングの理論とも密接に関係します。楽曲・MV・SNS・ライブという各接点で一貫した物語を紡ぐことで、ファンの深いエンゲージメントが生まれます。

レーベルブランディング

レーベルは「どんなアーティストを送り出すか」というA&R(Artists and Repertoire)の目利き力そのものがブランドです。ソニー・ミュージックは幅広いジャンルの受け皿として国民的レーベルの地位を築き、エイベックスはダンス・エレクトロ・K-POP系の窓口として独自ポジションを確立してきました。近年はホリプロ、スターダストプロモーションなどのマネジメント会社と、Sony Music Labels、Victor Entertainmentなどの原盤/レーベル部門の役割分業がさらに明確になっています。

インディーレーベルではSpace ShowerがCreepy Nutsを、Dreamusicが緑黄色社会を、SPEEDSTAR RECORDSがくるり/サニーデイ・サービスを育成してきました。「小回りの利くA&R」「特定ジャンルへの深い理解」「アーティストの世界観尊重」といったインディーならではのブランド価値が支持を集めています。

ライブ事業ブランディング

Zepp(ソニー・ミュージック系)、Blue Note Tokyo(ジャズ)、豊洲PIT、ぴあアリーナMM、京セラドーム大阪、有明アリーナ──それぞれが独自のブランドを持ち、演目や動員規模、体験価値が異なります。ライブ事業のブランド価値は「音響設備」「立地アクセス」「観客体験設計」「アーティスト誘致力」の掛け算で決まります。フェスも同様で、フジロック(新潟・洋楽志向)、サマーソニック(都市型・グローバル)、ROCK IN JAPAN(茨城・国内志向)とそれぞれ棲み分けがなされています。

音楽出版ブランディング

音楽出版会社(パブリッシャー)は楽曲の著作権を管理し、映画・ドラマ・CM・ゲームなどへの二次利用(シンクロライセンス)を営業する役割です。近年、ゲーム・映像作品のグローバル化に伴い、日本の楽曲カタログの海外シンクロ収益が急拡大しています。Sony Music PublishingやWarner Chappell Musicといった大手のブランド価値は「豊富なカタログ」「グローバル営業網」「クリエイター育成力」にあります。

3. ストリーミング × プレイリスト戦略

プレイリストとストリーミング戦略

プレイリストピッチの重要性

Spotifyの「Today’s Top Hits」「New Music Friday」、Apple Musicの「New in Pop」など、公式プレイリストへの掲載は現代の音楽ビジネスで「テレビ露出」「ラジオヘビロテ」に相当する最重要チャネルです。1つの主要プレイリスト掲載で数百万〜数千万再生を獲得できるケースもあり、レーベルのプレイリストピッチ担当(Editorial Pitching)が新曲リリース6週間前から動く体制が一般的になりました。

日本市場ではSpotifyの「Tokyo Super Hits!」「J-Pop Now」「新曲J-Pop」「Anime Now」といった国内向けプレイリストが影響力を持ち、Anime Nowはグローバルにもリーチする戦略的枠として注目されています。YOASOBIやAdo、Aimerが海外リスナーを獲得できたのは、アニメタイアップ×プレイリスト戦略の相乗効果によるものです。

アルゴリズミック・プレイリストと発見体験

Spotifyの「Discover Weekly」「Release Radar」、YouTube Musicの「My Mix」、Apple Musicの「For You」といったパーソナライズド・プレイリストは、AI がユーザーの嗜好を分析して自動生成します。ここに乗るためには、既存ファンの熱量(保存率、リピート率、シェア数)が鍵となります。「まず既存ファンに深く聴かせる」ことが、新規リスナー獲得のアルゴリズム的な足がかりになるという逆転構造が生まれています。

TikTok起点のバズと Ken Do の関係

近年のストリーミングヒットの多くはTikTokから生まれます。「バズる→Spotifyで検索→フル尺再生→アルバムに流れる」という導線が定石化しました。Lil Nas X「Old Town Road」、Doja Cat「Say So」、日本ではimase「NIGHT DANCER」、優里「ドライフラワー」、Vaundy「怪獣の花唄」などが典型例です。15秒の「サビ切り出し」が楽曲設計の必須要件になり、A&R戦略もこれに合わせて変化しました。

こうした発見→愛着への転換プロセスは、ファンベースマーケティングクリエイターエコノミーの議論とも深く重なる領域です。

4. K-POP方式のファンダム設計

K-POPファンダムとブランディング

BTS/BLACKPINK が世界を席巻した理由

2020年代の音楽業界を語る上で、K-POPの世界的台頭は避けて通れません。BTS(防弾少年団)は2018年に「LOVE YOURSELF: Tear」でビルボード200アルバムチャート1位、以降複数回1位獲得、Grammy賞ノミネート、国連での演説など、単なる音楽グループを超えたカルチャーアイコンに成長しました。BLACKPINK(YG)は世界最大級のガールズグループとして、Coachella初のK-POPヘッドライナーを務めました。

彼らの成功の背景には、K-POPが体系化した「ファンダム設計」の力があります。従来のアーティストブランディングが「アーティスト→ファン」の一方通行だったのに対し、K-POPは「アーティスト⇄ファンダム⇄社会」の三方向で世界観を共創する仕組みを持っています。

ファンダム設計の5要素

K-POP方式のファンダム設計は以下の5要素で構成されます。

  1. 公式ファンネーム:BTS=ARMY、BLACKPINK=BLINK、TWICE=ONCE、NewJeans=Bunnies。ファン自身のアイデンティティ形成に直結します。
  2. 公式カラー:BTSのパープル、BLACKPINKのピンク&ブラック。ライブ会場や街頭で可視化されるブランド象徴。
  3. 公式応援グッズ(ペンライト):ARMY BOMB、BLINK PENは単なる応援グッズを超え、Bluetooth連動で全会場のライトが同期する演出装置。
  4. 専用コミュニケーションアプリ:Weverse(HYBE系)、UNIVERSE、Bubbleなど、アーティストとファンが直接つながる有料コミュニティ。
  5. 段階的コンテンツ設計:ティザー→予告動画→MV→リリースショー→ダンス動画→ビハインド→バラエティ番組と、リリース前後の情報開示を計算し、飽きさせない仕組み。

日本のジャニーズWEST(旧ジャニーズ)は「うちわ・応援グッズ・チームカラー」で早くから類似設計を持っており、K-POPが世界規模に拡張したモデルの原型があったと言えます。

日本アーティストのファンダム化事例

日本でもK-POPの影響を受けて、ファンダム設計を強化する事例が増えています。YOASOBIは公式ファンクラブ「群青の集い」を運営し、Ado、櫻坂46、日向坂46、乃木坂46といった坂道シリーズは徹底したファンクラブ運営とメンバー個別ブランディングで熱狂的ファンを獲得しています。ジャニーズWSD(現STARTO)はWEB3.0時代を見据え、公式ファンコミュニティのデジタル化を進めています。

こうしたファンダム型の設計は、ブランドコミュニティの理論そのものであり、音楽以外の業界にも応用できるモデルです。

5. ライブ × グッズ × 配信の三位一体モデル

ライブとグッズと配信の三位一体

収益ポートフォリオの再構築

ストリーミングの単価が低いため、現代のアーティストは複数収益源のポートフォリオ構築が必須です。典型的な国内トップアーティストの収益構造は以下のような比率になっています。

  • ライブ(チケット・スポンサー):40〜50%
  • グッズ・物販:20〜30%
  • ストリーミング・原盤印税:10〜15%
  • タイアップ・シンクロ:10〜15%
  • ファンクラブ・配信ライブ:5〜10%

ライブが依然として最大収益柱ですが、グッズ売上の割合が急拡大している点が特徴です。Tシャツ、ペンライト、アクリルスタンド、ポスター、フォトブック、限定CDなど、ライブ会場での購買体験がブランド体験の中核を成します。

公式グッズショップとD2Cモデル

近年、公式グッズをアーティスト自身のD2C(Direct to Consumer)サイトで販売する動きが顕著です。米津玄師はONLINE STOREを直営で運営し、Ado、YOASOBI、ヨルシカなども公式ショップを構えています。ジャニーズ/STARTOはEC 「MEMORY LANE」を刷新、K-POPではWeverse Shopが世界規模のD2Cハブとなっています。

D2C化のメリットはブランドコントロールの徹底、顧客データ取得、高い粗利率です。中間流通を挟まないため利益率が高く、顧客の購買履歴と組み合わせて次のキャンペーンやリリースを最適化できます。この考え方は音楽業界に限らず、ブランドアンバサダー戦略やブランドコラボレーション戦略とも接続します。

配信ライブという新市場

コロナ禍で急拡大した配信ライブは、ポストパンデミック期でも定着し、独立した収益柱となりました。SUGAR CROWD、Streaming+、U-NEXT、abemaTVといったプラットフォームでのプレミアム配信は、地方・海外ファンへのリーチ拡大手段となっています。星野源、Perfume、サザンオールスターズなどが大規模配信ライブを成功させ、リアルライブとは異なる演出美学(多カメラ、AR、VR)で新たな体験価値を提示しました。

配信ライブ×リアルライブ×グッズの3層構造は、イベントマーケティング動画ブランディングの観点からも、体験ブランドの理想形と言えます。

6. インディーアーティストの自主ブランディング

インディーアーティストとセルフブランディング

DIYリリースの環境整備

DistroKid、TuneCore、CD Baby、Landrといった配信代行サービスの登場で、個人でも年間数十ドルでSpotifyやApple Musicに楽曲を配信できる環境が整いました。日本でもTuneCore Japan、BIG UP!、audiostockなどが充実しており、アーティストは自分でリリース、プロモーション、収益回収まで完結可能です。

この結果、インディーアーティストが直接ファンにリーチできるようになり、「まずインディーで実績を作ってからレーベルと対等契約」という新しいキャリアパスが定着しました。COIN N、崎山蒼志、Chilli Beans.、KOTORI、羊文学など、この経路で頭角を現したアーティストが増えています。

インディーレーベルの復権

大手レーベルが管理する原盤権比率が下がる一方、独立系レーベルが「アーティストの世界観を最大限尊重する」ブランドで支持を集めています。PONYCANYON子会社の小規模レーベル、SPACE SHOWER MUSIC、Dreamusic、Vividに加え、ULTRA-VYBEやP-VINEといった老舗が独自ポジションを保持しています。海外では4AD、XL Recordings、Sub Pop、Warp Recordsなどのブランドが変わらぬ影響力を持ち続けています。

シンセ音楽・ローファイ・ジャンル細分化の恩恵

ストリーミング時代はニッチ市場が繁栄する時代でもあります。Lo-fi Hip Hop、シンセウェーブ(Synthwave)、ヴェイパーウェーブ(Vaporwave)、シティポップ、フューチャーファンクといった特定ジャンルは、大手メディア露出なしで数万〜数十万再生を稼ぐ持続可能なビジネスモデルを構築しました。日本のシティポップ再評価(Mariya TakeuchiやTatsuro Yamashitaのグローバル再発見)は、YouTubeアルゴリズムとインディーコレクター文化の合流によって生まれた稀有な現象です。

Bandcampのようなアーティスト直販プラットフォームでは、リスナーの平均支払額がストリーミング再生換算より遥かに高く、ニッチジャンル運営の経済性を支えています。この構造はクリエイターエコノミー全般に見られる傾向と一致します。

7. 音楽業界の成功事例

音楽業界の成功事例

BTS:グローバルカルチャーアイコン化

BTSはBig Hit Entertainment(現HYBE)が手掛けた男性アイドルグループとして2013年にデビュー。デビュー当初は資本規模の小さい事務所所属で「非主流アイドル」として苦戦しましたが、YouTube/Twitter中心のグローバルSNS戦略、社会的メッセージ性のある楽曲、ARMYとの深いエンゲージメント設計により、2017年頃から爆発的にブレイクしました。2018年国連演説「Speak Yourself」、2020年「Dynamite」で英語曲Billboard Hot 100初1位、コンサートビジネス、Weverseというデジタルプラットフォーム、そしてブランドコラボ(Louis Vuitton、McDonald’s)まで、音楽グループの枠を超えた総合カルチャーブランドとして進化しました。

YOASOBI:小説×音楽の新モデル

YOASOBIはコンポーザーAyaseとボーカルikuraのユニット。「小説を音楽にする」というコンセプトで2019年にデビューし、「夜に駆ける」で大ブレイク。「アイドル」(アニメ「推しの子」主題歌)はBillboard Global Excl. U.S.チャート1位を獲得しました。YOASOBIブランドの核は、①小説原作の物語性、②アニメーションMVの統一世界観、③アーティスト自身の親しみやすいキャラクター、④英語版セルフカバーによるグローバル展開、の4要素です。ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)内でも他アーティストとは異なるプロモーション設計がされ、レーベルとアーティストの新しい関係性のモデルとなっています。

米津玄師:脱ボカロPからの越境

米津玄師は元ボカロP「ハチ」名義でニコニコ動画時代に活動し、2013年から本名でメジャーデビュー。「Lemon」「パプリカ」「感電」「KICK BACK」など連続してヒットを飛ばしました。彼のブランド強度は、①独自のアートワーク(自身の絵)、②感情の機微を捉える歌詞、③実写MV少なめの神秘性、④タイアップとの相乗効果、から生まれています。「パプリカ」はNHK東京2020応援ソングとして子供世代にリーチし、「KICK BACK」はアニメ「チェンソーマン」OPで海外ファンを獲得。ソニー・ミュージックレーベルズ内でも別格の存在です。

藤井風:ローカル×グローバル

藤井風(Fujii Kaze)は岡山県在住のシンガーソングライター。ピアノ弾き語りYouTube時代からファンを獲得し、2020年アルバム「HELP EVER HURT NEVER」でメジャー成功。「死ぬのがいいわ」がインドネシアなど東南アジアでバイラルヒットし、Spotifyのグローバル月間リスナー数が急拡大しました。「ローカルなアイデンティティ(岡山弁)×グローバルな音楽性(ソウル、ゴスペル)」という独特のブランドポジショニングで、K-POPとは異なる日本発グローバルアーティストの新モデルを示しました。

エイベックス:レーベル進化の系譜

エイベックス・エンタテインメントは1988年設立、90年代の小室哲哉プロデュース、TRF・globe・安室奈美恵、2000年代の浜崎あゆみで日本の音楽シーンを牽引し、その後EXILE TRIBE(LDH)、AAA、EARTH, WIND & FIRE JAPAN、ダンスミュージック系レーベルなど多角化を進めました。近年はK-POPアーティストの日本進出パートナー(BTSの日本での窓口など)、アニメ音楽(藍井エイル、GARNiDELiA)にも注力し、時代ごとにブランド軸を更新してきました。

ジャニーズ/STARTO:伝統マネジメント型の刷新

日本の男性アイドル市場を長年独占してきたジャニーズ事務所は、2023年〜2024年の再編を経てSTARTO ENTERTAINMENTへと組織変更。SMAP、嵐、TOKIO、KinKi Kids、V6、Kis-My-Ft2、Sexy Zone、SixTONES、Snow Man、なにわ男子、Travis Japanなど数多のアーティストを抱える強固なグループブランドと、Sトップ級のマネジメント力を持ちながら、これまで手薄だったSNS・YouTube・グローバル展開を加速しています。

8. まとめ:音楽業界ブランディングの実装ステップ

音楽業界のブランディングは「楽曲を作って売る」から「世界観を構築しファンと共創する」へと完全に変わりました。ストリーミングが主戦場となる現代では、4プレイヤー(アーティスト・レーベル・ライブ・音楽出版)それぞれの強みを掛け合わせ、K-POP方式のファンダム設計、ライブ×グッズ×配信の三位一体モデル、そしてD2Cによるブランドコントロールが成功の必須要件です。

BTS、YOASOBI、米津玄師、藤井風といった成功事例に共通するのは、①一貫した世界観、②ファンとの深いエンゲージメント設計、③グローバル視点、④複数収益源のポートフォリオ、⑤タイアップやコラボレーションによる文脈接続の5点です。

音楽業界に限らず、あらゆるエンターテインメント・カルチャービジネスにおいて、こうしたブランド構築の方法論は応用可能です。ゲーミングブランディングスポーツブランディングの議論とも重なる部分が多く、業界横断で学べるインサイトが豊富です。

株式会社レイロでは、音楽レーベル、アーティスト事務所、ライブハウス運営、フェス主催、音楽出版社の皆さまへ、ブランドコンセプト設計、ビジュアルアイデンティティ、SNS戦略、グッズ企画、Webサイト構築、配信プロモーションまで一気通貫でサポートいたします。ストリーミング時代を勝ち抜くブランド戦略について、ぜひお気軽にご相談ください。

音楽業界ブランディングのご相談はこちら(https://reiro.co.jp/contact/)

FAQ

Q1. 音楽業界でブランディングが特に重要になった理由は何ですか?

A1. ストリーミング時代の到来により、Spotifyだけで毎日10万曲以上の新曲が投稿される超過剰供給状態になったためです。単に楽曲を配信するだけでは埋もれてしまい、明確な世界観・ストーリー・ファンとの関係性を築けたアーティスト/レーベルだけが選ばれる時代となりました。加えてCD販売比率が縮小しライブ・グッズ・配信・タイアップの複合収益モデルへと構造転換したため、ブランドの一貫性がすべての収益源を貫く要になっています。

Q2. インディーアーティストでもブランディングは可能ですか?

A2. むしろインディーの方が自由度高くブランディングできる時代です。TuneCoreやDistroKidで低コストで配信でき、SNSやYouTube、TikTokで直接ファンにリーチでき、Bandcampのような直販プラットフォームで高粗利のD2Cを実現できます。重要なのは「音楽性・ビジュアル・ストーリー・SNS運用」の一貫性です。まずはニッチジャンルで熱狂的なコアファンを獲得し、そこから徐々に拡大するのが定石です。

Q3. K-POP方式のファンダム設計は日本のアーティストにも有効ですか?

A3. 極めて有効ですが、そのまま導入するのではなくアーティストの世界観に合わせたカスタマイズが必要です。日本ではジャニーズや坂道シリーズが既に類似のファンダム設計を持っており、YOASOBIやAdo、Vaundyといったソロ/ユニット系でも公式ファンクラブや限定コンテンツ設計を強化しています。ファンネーム、公式カラー、限定コンテンツ、専用アプリなど、5要素のうち導入可能なものから段階的に組み込むと良いでしょう。

Q4. ライブ動員が思うように伸びません。どこから改善すべきですか?

A4. まずはストリーミング再生・SNSフォロワー・エンゲージメント率を確認してください。動員が伸びない場合、多くはブランド認知の絶対量が不足しているケースです。プレイリスト戦略、TikTok/Reels活用、タイアップ、コラボによる認知拡大を先行させ、次に既存ファンの熱量を高めるファンクラブ・限定コンテンツ設計、そして最後にライブ会場のブランド/体験設計を見直す、という順番で改善するのが効率的です。

Q5. 音楽レーベルのブランド価値はどこにありますか?

A5. 現代の音楽レーベルのブランド価値は、①A&Rの目利き力(どんなアーティストを見出し育てるか)、②制作・マーケティングインフラ(プレイリストピッチ、シンクロ営業、グローバル配信、映像制作)、③カタログ資産(過去の名盤・楽曲権利)の3点にあります。アーティストがレーベル選びで重視するのは「自分の世界観を尊重してくれるか」「必要なリソースを持っているか」「グローバル展開できるか」です。レーベルはこれらを訴求できる明確なブランドポジショニングを構築する必要があります。