カスタマージャーニーマップを作成するチームミーティングの様子

顧客が商品やサービスを知り、興味を持ち、購入し、ファンになるまでの一連のプロセス――それがカスタマージャーニーです。デジタル化が加速する現代のマーケティングにおいて、顧客の行動や心理を時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」は、あらゆる企業にとって欠かせない戦略ツールとなっています。

しかし、「カスタマージャーニーマップの作り方がわからない」「作ってみたけど活用できていない」という声は少なくありません。本記事では、株式会社レイロがブランディングの実務で培った知見をもとに、カスタマージャーニーの基本概念からマップの具体的な作成手順、さらには成功事例やBtoB・BtoCでの違いまで、実践的に解説します。

顧客体験設計を根本から見直し、マーケティング施策の精度を飛躍的に高めたい方は、ぜひ最後までお読みください。


Contents

カスタマージャーニーとは?基本概念と重要性

カスタマージャーニーの定義

カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、顧客が企業やブランドと出会い、商品・サービスの認知から興味・検討・購入・利用・推奨に至るまでの一連の体験プロセスを指します。日本語では「顧客の旅」と訳されることもあり、マーケティングやUXデザインの分野で広く使われている概念です。

従来のマーケティングでは、購買という一点のアクションに注目する傾向がありました。しかしカスタマージャーニーの考え方では、購買前後を含めた顧客のあらゆる接点(タッチポイント)を包括的に捉えます。これにより、顧客が各段階でどのような情報を求め、どのような感情を抱き、どのような行動をとるのかを体系的に理解することが可能になります。

カスタマージャーニーの概念が重要視されるようになった背景には、消費者行動の複雑化があります。スマートフォンの普及やSNSの台頭により、顧客は企業が想定していなかったチャネルや経路で情報を取得し、購買意思決定を行うようになりました。こうした環境の変化に対応するためには、顧客視点に立った体験の全体像を把握することが不可欠です。

なぜ今カスタマージャーニーが重要なのか

2026年現在、カスタマージャーニーの重要性はますます高まっています。その理由を整理すると、以下の3つに集約されます。

1. 顧客接点の多様化

オフラインの店舗・イベントに加えて、Webサイト、SNS、メールマガジン、チャットボット、動画プラットフォームなど、顧客との接点は飛躍的に増加しています。これらの接点を個別に最適化するだけでは不十分であり、顧客体験全体を一貫してデザインする必要があります。

2. 顧客期待値の上昇

AmazonやAppleといったグローバル企業が優れた顧客体験を提供する中で、消費者の期待値は業界を問わず上昇しています。「自分のことを理解してくれている」と感じるパーソナライズされた体験を提供できなければ、競合に顧客を奪われるリスクが高まります。

3. データドリブンマーケティングの進化

CRM、MA(マーケティングオートメーション)、アクセス解析ツールなどの進化により、顧客行動を定量的に把握できるようになりました。カスタマージャーニーマップにデータを重ね合わせることで、施策の効果検証と改善のPDCAを高速に回せるようになっています。

カスタマージャーニーとカスタマーエクスペリエンスの違い

混同されがちな概念として「カスタマーエクスペリエンス(CX)」があります。カスタマーエクスペリエンスは、顧客がブランドとのあらゆる接点で感じる総合的な体験の質を指す概念です。一方、カスタマージャーニーは、その体験を時系列で構造化したフレームワークです。

つまり、カスタマージャーニーはCXを分析・設計するためのツールであり、両者は補完関係にあります。優れたカスタマーエクスペリエンスを実現するためには、カスタマージャーニーの各段階で顧客が何を求め、何に不満を感じているかを明確にすることが出発点となります。

ブランド体験設計の基本については、こちらの記事で詳しく解説しています。

顧客体験の分析データを確認するマーケティング担当者

カスタマージャーニーマップの構成要素

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスと出会ってから購入・利用・推奨に至るまでのプロセスを、視覚的に図式化したものです。横軸に時間の経過(フェーズ)、縦軸に顧客の行動・思考・感情・接点などを配置し、顧客体験の全体像を一枚の図にまとめます。

カスタマージャーニーマップを作成する目的は主に以下の4つです。

  • 顧客理解の深化: 顧客の視点に立ち、各フェーズで何を考え、何を感じているかを共有できる
  • 課題の可視化: 顧客体験のボトルネックや離脱ポイントを特定できる
  • 組織の共通認識: マーケティング、営業、CS、開発など部門横断で顧客像を共有できる
  • 施策の優先順位付け: 改善インパクトの大きいポイントに集中投資できる

ジャーニーマップの基本フレームワーク

一般的なカスタマージャーニーマップは、以下の5つのフェーズで構成されます。

フェーズ 概要 顧客の状態
認知(Awareness) 課題やニーズに気づき、解決策を探し始める 「何か良い方法はないか」
興味・関心(Interest) 具体的な商品・サービスに興味を持つ 「この商品は自分に合いそうだ」
比較・検討(Consideration) 複数の選択肢を比較し、判断材料を集める 「A社とB社、どちらが良いか」
購入・決定(Purchase) 最終的な購買意思決定を行う 「これに決めよう」
利用・推奨(Loyalty) 商品を利用し、満足すれば他者に推奨する 「良かったので人にも勧めたい」

このフレームワークはあくまで基本形であり、業種やビジネスモデルに応じてカスタマイズする必要があります。たとえばSaaS企業であれば「トライアル」「オンボーディング」「アップセル」といったフェーズを追加することが一般的です。

マップに含めるべき7つの要素

実用的なカスタマージャーニーマップには、以下の7つの要素を含めることを推奨します。

  1. ペルソナ: ターゲット顧客の具体的な人物像
  2. フェーズ: 顧客体験の段階区分
  3. 行動(Doing): 各フェーズで顧客が実際にとる行動
  4. 思考(Thinking): 各フェーズで顧客が考えていること
  5. 感情(Feeling): 各フェーズでの顧客の感情の変化(感情曲線)
  6. タッチポイント: 顧客とブランドが接触するチャネル・媒体
  7. 課題と機会: 各フェーズにおけるペインポイントと改善機会

特に「感情」の要素は見落とされがちですが、顧客のロイヤルティに直結する重要な要素です。不安、期待、満足、不満といった感情の起伏を可視化することで、体験全体のクオリティを俯瞰的に評価できます。

顧客とのタッチポイント設計については、こちらの記事をご参照ください。

テンプレートの選び方

カスタマージャーニーマップのテンプレートは数多く存在しますが、以下のポイントを基準に選ぶとよいでしょう。

  • 目的に合っている: 現状分析用か、理想設計用かでテンプレートの形式が異なる
  • カスタマイズが容易: 自社のフェーズ定義やペルソナに合わせて柔軟に変更できる
  • チームで共有しやすい: PowerPoint、Figma、Miroなどチームが普段使うツールで編集可能
  • 視覚的にわかりやすい: 一目で全体像を把握でき、ステークホルダーへの説明に使える

株式会社レイロでは、ブランディングプロジェクトにおいてクライアント企業のカスタマージャーニーマップ作成を支援する際、業種ごとにカスタマイズしたテンプレートを提供しています。


カスタマージャーニーマップの作り方5ステップ

ここからは、カスタマージャーニーマップの具体的な作成手順を5つのステップに分けて解説します。初めてマップを作成する方でも実践できるよう、各ステップのポイントと注意点を詳しくお伝えします。

戦略計画をホワイトボードにまとめるビジネスチーム

ステップ1:ペルソナを設定する

カスタマージャーニーマップ作成の第一歩は、ターゲットとなるペルソナの設定です。ペルソナとは、自社の理想的な顧客像を具体的な人物として描写したものです。

ペルソナ設定で定義すべき項目は以下の通りです。

  • 基本属性: 年齢、性別、職業、役職、年収、居住地
  • 行動特性: 情報収集の方法、よく使うSNS、購買決定のプロセス
  • 課題・悩み: 現在抱えている問題、解決したいこと
  • 目標・理想: 将来実現したいこと、商品購入後に期待する状態
  • 価値観: 重視すること、譲れない条件

ペルソナ設定で最も重要なのは、実際のデータに基づくことです。マーケターの思い込みや理想像ではなく、既存顧客へのインタビュー、アンケート調査、アクセス解析データ、営業担当者からのヒアリングなど、複数のソースから情報を収集してペルソナを構築します。

ペルソナ設定の詳細な手法については、こちらの記事で解説しています。

また、BtoBの場合は「個人のペルソナ」だけでなく、「組織のペルソナ(会社規模、業種、課題)」と「購買関与者(DMU:Decision Making Unit)」も定義する必要があります。意思決定に関わる複数のステークホルダーを意識したジャーニー設計が求められます。

ペルソナは1つに絞る必要はありませんが、カスタマージャーニーマップはペルソナごとに作成するのが基本です。まずは最も重要な顧客セグメントのペルソナから着手し、段階的に拡張していくアプローチが効率的です。

ステップ2:フェーズとタッチポイントを洗い出す

ペルソナが決まったら、そのペルソナが自社の商品・サービスと出会い、購入・利用するまでのフェーズ(段階)を定義します。

一般的なフェーズ設計の例を、BtoCとBtoBそれぞれ示します。

BtoCの例(アパレルECの場合)

  1. SNSや広告で商品を認知する
  2. ブランドサイトやレビューサイトで情報を収集する
  3. 類似ブランドと比較検討する
  4. ECサイトで購入する
  5. 商品を受け取り、利用する
  6. 満足した場合、SNSでシェア・リピート購入する

BtoBの例(SaaSツールの場合)

  1. 業務上の課題を認識する
  2. 解決策をWeb検索で探す
  3. 複数ツールの資料請求・デモ体験をする
  4. 社内稟議を通す
  5. 導入・オンボーディングを行う
  6. 運用定着・追加ライセンス購入・他部署展開する

各フェーズで、ペルソナが接触する可能性のあるタッチポイントをすべて洗い出します。タッチポイントとは、顧客とブランドが接触する地点・チャネルのことで、以下のようなものが含まれます。

カテゴリ タッチポイント例
デジタル Webサイト、SNS、メール、Web広告、動画、チャットボット
オフライン 店舗、イベント、展示会、セミナー、DM
対人 営業担当、カスタマーサポート、コミュニティ
間接 口コミ、レビューサイト、メディア記事、紹介

この段階では漏れなく洗い出すことが重要です。社内のさまざまな部門のメンバーを巻き込んでワークショップ形式で行うと、思わぬタッチポイントが発見されることがあります。

ステップ3:顧客の行動・思考・感情をマッピングする

フェーズとタッチポイントが定義できたら、各フェーズにおける顧客の行動・思考・感情を具体的に記述していきます。これがカスタマージャーニーマップの中核となる部分です。

行動のマッピング

各フェーズで、ペルソナが実際に行う行動を時系列で列挙します。

例(認知フェーズ):
– Instagramのフィード広告を目にする
– 気になって広告をタップする
– ランディングページを3秒ほど眺めて離脱する
– 数日後、友人のSNS投稿で同じブランド名を見かける
– ブランド名でGoogle検索する

思考のマッピング

各フェーズで、ペルソナが頭の中で考えていることを記述します。「」で括った独白形式にすると、リアリティが増します。

例(比較・検討フェーズ):
– 「A社は価格が安いけど、サポートが不安だな」
– 「B社は実績が多いけど、自社の規模に合うのだろうか」
– 「導入事例を見て、同業他社がどう使っているか確認したい」
– 「無料トライアルがあれば、まずは試してみたい」

感情のマッピング

各フェーズでの感情の変化を、ポジティブ/ネガティブの軸で記録します。多くのカスタマージャーニーマップでは「感情曲線」として線グラフで表現します。

感情が下がるポイント(ペインポイント)は、改善施策の最も重要なターゲットとなります。たとえば「問い合わせフォームが複雑で途中で諦めた」「資料請求後に連絡が来るまで1週間かかった」といったネガティブ体験は、顧客離脱の直接的な原因になります。

このステップでは、推測だけでなく定性調査(顧客インタビュー、ユーザビリティテスト)と定量調査(アクセス解析、NPS調査)の両方のデータを活用することが重要です。データに裏付けられたマッピングは、説得力のある施策提案につながります。

ステップ4:課題と改善機会を特定する

行動・思考・感情のマッピングが完了したら、顧客体験上の課題(ペインポイント)と改善機会を特定します。

課題を特定するための着目ポイントは以下の通りです。

離脱が多いポイント

アクセス解析で離脱率・直帰率が高いページ、コンバージョンファネルでの離脱ポイントを確認します。数値的に問題が見える箇所は、優先的に改善すべきです。

感情が下がるポイント

感情曲線がネガティブに振れる箇所は、顧客体験の質を損なっている可能性があります。「不安」「不満」「困惑」「面倒」といったネガティブ感情が発生する原因を深掘りします。

タッチポイント間の断絶

チャネル間で顧客情報が引き継がれず、顧客が同じ説明を繰り返す必要があるケースは、大きなストレスの原因になります。WebからStore、StoreからCS(カスタマーサポート)など、チャネルをまたぐ体験の一貫性を検証します。

期待と現実のギャップ

広告やWebサイトで訴求している内容と、実際の商品・サービス体験にギャップがないかを確認します。過度な期待を作ってしまうと、購入後の失望につながりNPS(ネットプロモータースコア)を押し下げます。

特定した課題に対して、改善施策のアイデアを生成し、インパクト(改善効果の大きさ)×実現性(コスト・工数の低さ)の2軸で優先順位を付けます。すべてを一度に改善しようとせず、クイックウィン(短期間・低コストで成果が出る施策)から着手するのが実務上のコツです。

ステップ5:施策を実行し、PDCAを回す

カスタマージャーニーマップは作って終わりではありません。特定した課題に対する改善施策を実行し、効果を測定し、マップを更新し続けることが重要です。

KPI設定の例

各フェーズの改善施策に対して、測定可能なKPIを設定します。

フェーズ KPI例
認知 ブランド認知率、指名検索数、SNSリーチ数
興味・関心 サイト訪問数、ページ滞在時間、資料DL数
比較・検討 問い合わせ数、デモ申込数、比較ページ閲覧率
購入 コンバージョン率、平均購入単価、購入完了率
利用・推奨 NPS、リピート率、SNSシェア数、レビュー数

PDCAの回し方

  1. Plan: カスタマージャーニーマップの課題から施策を設計する
  2. Do: 施策を実行する(A/Bテストを推奨)
  3. Check: KPIの変化を測定し、施策の効果を評価する
  4. Act: 効果があった施策を本格展開し、マップを更新する

カスタマージャーニーマップは「生きたドキュメント」であるべきです。市場環境の変化、競合の動向、自社のプロダクトアップデートなどに応じて、少なくとも四半期に一度は見直し・更新を行いましょう。


カスタマージャーニー活用の成功事例5選

カスタマージャーニーマップを活用して顧客体験を改善し、ビジネス成果を上げた企業の事例を5つ紹介します。

ビジネス戦略の成功を分析するチーム

事例1:大手ECサイトのカート離脱率改善

あるファッションEC企業では、カスタマージャーニーマップを作成したところ、「比較・検討」から「購入」フェーズへの移行で大きな離脱が発生していることが判明しました。

詳細な分析の結果、以下の課題が特定されました。
– 購入手続きのステップが5段階と多く、途中離脱が頻発していた
– 送料が最終画面で初めて表示され、想定外の追加コストに不満を感じる顧客が多かった
– クレジットカード以外の決済手段が限られていた

これらの課題に対して、購入フローを3ステップに簡素化し、商品ページに送料を明示し、電子マネーやコンビニ決済を追加しました。その結果、カート離脱率が32%改善し、月間売上が前年同期比で18%増加しました。

事例2:BtoB SaaS企業のオンボーディング改善

あるクラウド会計ソフトの企業では、新規契約後の解約率(チャーンレート)が課題でした。カスタマージャーニーマップで「導入・オンボーディング」フェーズを詳細に分析したところ、以下の問題が明らかになりました。

  • 初期設定が複雑で、導入後1週間以内にログインしなくなるユーザーが40%存在した
  • マニュアルが網羅的すぎて、最初にやるべきことがわからなかった
  • サポート問い合わせの回答に平均48時間かかっていた

改善施策として、段階的な初期設定ウィザードの実装、「最初の3日間でやるべき5つのこと」ガイドの提供、チャットサポートの導入を行いました。結果、90日以内の解約率が45%減少し、アップセル率も向上しました。

事例3:小売チェーンのOMO(Online Merges with Offline)体験設計

全国展開する家具小売チェーンでは、オンラインとオフラインの顧客体験が分断されていることが課題でした。カスタマージャーニーマップで全チャネルの体験を可視化した結果、以下が判明しました。

  • Web で商品を見て店舗に来店した顧客に対して、店舗スタッフがオンラインでの閲覧履歴を把握していなかった
  • 店舗での接客で得た情報(好みの色味やサイズ感)がオンラインに引き継がれなかった
  • ポイントプログラムがオンライン購入にしか適用されなかった

統合顧客データベースの構築とスタッフ用タブレットの導入により、チャネルをまたいだシームレスな体験を実現しました。結果、クロスチャネル顧客の購入単価が2.4倍に向上し、顧客満足度(CSAT)も15ポイント改善しました。

事例4:医療機関の患者体験改善

ある総合病院では、患者の待ち時間に対する不満が長年の課題でした。カスタマージャーニーマップで受診プロセスを可視化した結果、以下の課題が特定されました。

  • 予約してから受診日までの不安に対するフォローがなかった
  • 来院後の受付から診察までの待ち時間に、進捗が見えず不満が増大していた
  • 診察後の会計待ちの時間が長く、最後の印象が悪化していた

改善として、受診前のLINE通知による事前説明、院内での順番表示システム、自動精算機の導入を行いました。実際の待ち時間は大きく変わっていないにもかかわらず、体感待ち時間が40%短縮されたとの調査結果が出ました。これは、情報の透明性が感情に大きく影響することを示す好例です。

事例5:ブランディング企業のリード獲得ジャーニー最適化

株式会社レイロのクライアントであるBtoBサービス企業では、Webサイトからのリード獲得数の伸び悩みが課題でした。カスタマージャーニーマップを共同で作成し分析した結果、以下が明らかになりました。

  • 認知フェーズのコンテンツが「自社商品の紹介」に偏っており、課題認識段階の見込み顧客にリーチできていなかった
  • 興味フェーズから検討フェーズへの導線が弱く、資料請求への誘導が不足していた
  • 比較検討フェーズで競合との差別化ポイントが明確に伝わっていなかった

これらの課題に対して、カスタマージャーニーの各フェーズに合わせたコンテンツマーケティング戦略を再構築しました。認知フェーズ向けのノウハウ記事、興味フェーズ向けのホワイトペーパー、検討フェーズ向けの導入事例・比較表を整備した結果、月間リード獲得数が前年比3.2倍に成長しました。


BtoB・BtoCのカスタマージャーニーの違い

意思決定プロセスの構造的な違い

カスタマージャーニーの設計において、BtoBとBtoCでは根本的に異なる点がいくつかあります。最も大きな違いは意思決定プロセスの構造です。

BtoCの意思決定

  • 意思決定者は基本的に1人(本人または家族単位)
  • 感情や衝動が購買判断に大きく影響する
  • 認知から購入までのリードタイムが短い(数分〜数週間)
  • 購入金額が比較的少額

BtoBの意思決定

  • 複数のステークホルダーが関与する(DMU:意思決定者、影響者、利用者、承認者)
  • 論理的・合理的な判断が重視される(ROI、コスト削減効果など)
  • リードタイムが長い(数週間〜数ヶ月、場合によっては1年以上)
  • 購入金額が高額で、稟議・承認プロセスが存在する

この違いにより、BtoBのカスタマージャーニーマップでは、各DMUメンバーの関与度合いとフェーズごとの役割を記載する必要があります。たとえば、現場担当者が「認知・興味」フェーズの主体であり、部門長が「検討」フェーズで関与し、経営層が「決定」フェーズで最終承認するといった構造です。

コンテンツ設計の違い

フェーズごとに顧客に提供すべきコンテンツも、BtoBとBtoCで異なります。

BtoCのコンテンツ例

フェーズ コンテンツ
認知 SNS広告、インフルエンサー投稿、YouTube動画
興味 ブランドストーリー、ビジュアルコンテンツ、UGC
検討 レビュー、口コミ、比較記事、お試しサンプル
購入 クーポン、送料無料キャンペーン、限定オファー
推奨 ロイヤルティプログラム、SNSシェア特典

BtoBのコンテンツ例

フェーズ コンテンツ
認知 業界レポート、ノウハウ記事、ウェビナー
興味 ホワイトペーパー、eBook、メールマガジン
検討 導入事例、比較表、ROIシミュレーション、デモ
購入 提案書、見積書、契約書、トライアル
推奨 ユーザーコミュニティ、紹介プログラム、共同セミナー

コンテンツを通じたブランドコミュニケーションの詳細はこちら。

チャネル戦略の違い

BtoCではSNS、ECサイト、店舗など消費者向けのチャネルが中心となりますが、BtoBでは展示会、セミナー、営業訪問、パートナー紹介など法人向けのチャネルが加わります。

近年はBtoBにおいてもデジタルチャネルの重要性が増しており、特にSEOによるオーガニック流入、LinkedIn等のビジネスSNS、ウェビナー、動画コンテンツの活用が進んでいます。カスタマージャーニーマップにはこれらのデジタル接点も漏れなく含める必要があります。

デジタルマーケティング戦略の計画を立てるチーム

カスタマージャーニーとブランド体験設計

ブランド体験設計とカスタマージャーニーの関係性

カスタマージャーニーは単なるマーケティング分析ツールではありません。ブランド体験(Brand Experience)を一貫して設計するための基盤でもあります。

ブランド体験設計とは、顧客がブランドと接触するすべてのタッチポイントにおいて、ブランドの価値観やパーソナリティが一貫して伝わるよう体験全体をデザインすることです。カスタマージャーニーマップは、この設計を具体化するための設計図の役割を果たします。

たとえば「革新的で親しみやすいブランド」を目指す企業であれば、認知フェーズのWebサイトデザインから、検討フェーズの営業担当者の提案スタイル、購入後のカスタマーサポートの対応トーンに至るまで、すべてのタッチポイントで「革新性」と「親しみやすさ」が感じられる体験を設計する必要があります。

株式会社レイロでは、カスタマージャーニーマップの作成とブランド体験設計を一体的に提供することで、戦略の一貫性と実行力を高めるアプローチを採用しています。ブランドの提供価値(バリュープロポジション)が各タッチポイントで正しく伝わっているかを検証し、ギャップがあれば改善策を提案します。

ジャーニーの各フェーズにおけるブランド表現

カスタマージャーニーの各フェーズで、ブランドをどのように表現すべきかを整理します。

認知フェーズのブランド表現

顧客が最初にブランドに触れるフェーズです。第一印象がその後のジャーニー全体に影響するため、ブランドのビジュアルアイデンティティ(VI)とトーン&マナーを徹底的に統一します。ロゴ、カラー、タイポグラフィ、写真のスタイルなど、視覚的な一貫性がブランド認知を加速させます。

興味・検討フェーズのブランド表現

顧客がブランドについて深く知ろうとするフェーズです。ここではブランドストーリーと差別化ポイントを明確に伝えることが重要です。なぜこのブランドが存在するのか、他社と何が違うのか、顧客にどんな価値を提供するのかをコンテンツを通じて訴求します。

ブランド戦略の策定手法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

購入・利用フェーズのブランド表現

顧客がブランドの「約束」を実体験するフェーズです。商品・サービスの品質はもちろん、パッケージング、梱包、配送、サポート対応など、あらゆる接点でブランドの価値観が体現されている必要があります。ここでのブランド体験の質が、リピート購入と口コミ推奨の源泉となります。

感情設計とブランドロイヤルティ

カスタマージャーニーにおける感情の設計は、ブランドロイヤルティの構築に直結します。顧客がジャーニーの各段階で「このブランドを選んでよかった」と感じる瞬間(モーメント・オブ・トゥルース)を意図的に創出することが重要です。

特に注目すべきは「ピーク・エンドの法則」です。心理学者ダニエル・カーネマンが提唱したこの法則によると、人は体験全体を評価する際、最も感情が高まった瞬間(ピーク)と最後の瞬間(エンド)に強く影響されます。

つまり、カスタマージャーニーの中で最も印象的なポジティブ体験(ピーク)を戦略的に設計し、最後の接点(エンド)で良い印象を残すことが、ブランドへの愛着を形成する鍵となります。

たとえば高級ホテルでは、チェックアウト時にサプライズギフトを渡したり、手書きのサンキューカードを添えたりすることで、エンド体験の質を高めています。このような感情設計は、カスタマージャーニーマップで体験のピークとエンドを可視化することで初めて戦略的に実行できるのです。

ブランドエンゲージメントの高め方についてはこちらの記事もご覧ください。


カスタマージャーニーの改善・更新のポイント

カスタマージャーニーマップが陳腐化する3つの要因

作成したカスタマージャーニーマップが時間とともに現実と乖離していくことは、多くの企業が直面する課題です。陳腐化の主な要因は以下の3つです。

1. 市場環境の変化

新たな競合の参入、テクノロジーの進化、法規制の変更などにより、顧客の行動パターンや選択肢が変わります。たとえば生成AIの普及により、情報収集の方法が大きく変化しつつある現在、2〜3年前に作成したジャーニーマップはすでに現実を反映していない可能性があります。

2. 自社プロダクト・サービスの変化

新機能のリリース、価格改定、サポート体制の変更など、自社側の変化もジャーニーに影響します。新しいタッチポイントが追加されたり、既存のタッチポイントが廃止されたりするたびに、マップの更新が必要です。

3. 顧客セグメントの変化

事業の成長に伴い、ターゲット顧客層が拡大したり、既存顧客の属性が変化したりすることがあります。創業初期に設定したペルソナと、成長期のペルソナでは、ジャーニーの形が大きく異なることも珍しくありません。

定期的な見直しの方法

カスタマージャーニーマップの鮮度を保つために、以下の方法で定期的な見直しを行います。

四半期レビュー

3ヶ月ごとに、以下のデータをもとにマップの妥当性を検証します。
– アクセス解析データ(流入経路、行動フロー、離脱ポイントの変化)
– 顧客アンケート・NPS調査の結果
– カスタマーサポートへの問い合わせ内容の変化
– 営業チームからのフィードバック

半年に一度の定性調査

6ヶ月ごとに、5〜10名程度の顧客インタビューを実施します。定量データだけでは見えない、顧客の深層心理や行動の背景にある動機を把握するためです。

年次の全面リニューアル

1年に一度は、ペルソナの再定義も含めた全面的な見直しを行います。市場環境の変化を踏まえ、フェーズ定義やタッチポイントの洗い直しを行い、最新の状態にアップデートします。

データ活用による継続的な改善

カスタマージャーニーの改善を効果的に進めるためには、データの活用が不可欠です。以下のツール・手法を活用してデータドリブンな改善を推進しましょう。

アクセス解析ツール

Google Analytics 4(GA4)のユーザーエクスプローラー機能を活用すると、個々のユーザーの行動を時系列で追跡でき、カスタマージャーニーの実態を把握できます。ユーザーフローレポートでは、ページ間の遷移パターンを可視化できます。

ヒートマップツール

Hotjar、Clarity(Microsoft)などのヒートマップツールを使うと、ページ内での顧客の行動(クリック、スクロール、マウスの動き)を可視化できます。これにより、ランディングページやフォームなど重要なタッチポイントでの体験を詳細に分析できます。

MA(マーケティングオートメーション)ツール

HubSpot、Marketo、Pardotなどのツールを活用すると、リードの行動履歴をスコアリングし、購買意欲の高まりを検知できます。カスタマージャーニーの各フェーズに応じた最適なコンテンツを、適切なタイミングで配信する仕組みを構築できます。

VOC(Voice of Customer)分析

カスタマーサポートへの問い合わせ内容、SNSでのメンション、レビューサイトの口コミなど、顧客の声を体系的に収集・分析します。テキストマイニングツールを活用すると、大量のVOCデータから頻出するキーワードや感情の傾向を効率的に把握できます。

データ分析のダッシュボードを確認する女性

株式会社レイロでは、これらのデータ分析手法を組み合わせたカスタマージャーニーの改善支援を提供しています。ブランディングの知見とデータ分析の両面から、顧客体験の継続的な向上をサポートします。


まとめ

本記事では、カスタマージャーニーの基本概念からマップの作り方、活用事例、BtoB・BtoCの違い、ブランド体験設計との関連、そして継続的な改善方法まで、実践的に解説しました。

本記事のポイントを振り返りましょう。

  • カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購入・推奨に至るまでの体験プロセス全体を指す概念であり、顧客接点の多様化する現代において不可欠なフレームワークである
  • カスタマージャーニーマップは、フェーズ・行動・思考・感情・タッチポイント・課題の要素で構成され、顧客体験を視覚的に可視化するツールである
  • マップの作り方5ステップは、ペルソナ設定→フェーズ・タッチポイント洗い出し→行動・思考・感情マッピング→課題特定→施策実行・PDCAの順に進める
  • BtoBとBtoCでは、意思決定プロセス、コンテンツ設計、チャネル戦略が大きく異なるため、それぞれに適したジャーニー設計が必要
  • ブランド体験設計とカスタマージャーニーを一体的に捉えることで、すべてのタッチポイントで一貫したブランド価値を届けられる
  • カスタマージャーニーマップは「生きたドキュメント」であり、データに基づく継続的な改善が成果を最大化する鍵である

カスタマージャーニーの設計・改善は、一朝一夕で完成するものではありません。しかし、顧客の視点に立って体験全体を俯瞰し、一つひとつのタッチポイントを改善していく取り組みは、確実にビジネス成果につながります。

株式会社レイロでは、カスタマージャーニーマップの作成支援からブランド体験の設計、データに基づく改善施策の立案まで、一貫してサポートしています。 自社の顧客体験を根本から見直し、ブランド価値を高めたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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Q. カスタマージャーニーマップは何人で作成すべきですか?

カスタマージャーニーマップの作成は、3〜8名程度の部門横断チームで行うことを推奨します。マーケティング、営業、カスタマーサポート、開発(プロダクト)など、顧客と異なる接点を持つメンバーを集めることで、多角的な視点からジャーニーを描くことができます。特に営業やCSの現場担当者は、顧客のリアルな声を知っている貴重な情報源です。少人数すぎると視点が偏り、多人数すぎるとワークショップの進行が難しくなるため、5〜6名が理想的です。

Q. カスタマージャーニーマップの作成にどのくらいの期間がかかりますか?

作成の規模と精度によりますが、一般的には2〜4週間が目安です。ペルソナの設定に1週間(既存データの分析+インタビュー)、ワークショップによるマップ作成に1〜2日、課題の特定と施策の優先順位付けに1〜2週間程度です。ただし、初めて作成する場合や、複数ペルソナのマップを作成する場合はさらに時間がかかることがあります。まずは主要ペルソナ1つに絞り、2週間程度で初版を作成するスピード感を推奨します。

Q. カスタマージャーニーマップの作成に使えるおすすめツールは?

カスタマージャーニーマップの作成には、以下のツールが広く使われています。**Miro**(オンラインホワイトボード)は、テンプレートが豊富でリモートワーク環境でのコラボレーションに最適です。**Figma/FigJam**は、デザインチームとの連携がスムーズで、ビジュアルの自由度が高いのが特徴です。**PowerPoint/Googleスライド**は、特別なツールを導入せずとも作成でき、経営層への説明資料にそのまま使えます。**Lucidchart/draw.io**は、フローチャートに強く、複雑なジャーニーの可視化に適しています。目的とチームのスキルに合わせて選びましょう。

Q. BtoBのカスタマージャーニーマップで特に気をつけるべき点は?

BtoBでは、3つの点に特に注意が必要です。第一に、**複数の意思決定者(DMU)を考慮すること**です。現場担当者、部門管理者、経営層では、求める情報も判断基準も異なります。可能であれば、主要DMUごとにジャーニーを作成するか、1つのマップに複数のレイヤーとして記載します。第二に、**リードタイムの長さ**です。認知から契約まで数ヶ月〜1年かかることもあるため、ナーチャリング(見込み顧客の育成)のプロセスを詳細に描く必要があります。第三に、**契約後のジャーニー**です。BtoBでは契約後のオンボーディング、運用支援、アップセル・クロスセルまで含めたジャーニー設計がLTV最大化の鍵となります。

Q. カスタマージャーニーマップを活用して具体的にどんな成果が出ますか?

カスタマージャーニーマップの活用により、以下のような具体的成果が期待できます。**コンバージョン率の向上**(ボトルネックの特定と改善により、問い合わせや購入への転換率が上がる)、**顧客満足度の向上**(ペインポイントの解消により、NPS・CSATなどの指標が改善する)、**マーケティングROIの向上**(各フェーズに最適化されたコンテンツ・施策の投下により、無駄な広告費が削減される)、**部門間連携の強化**(共通の顧客像を持つことで、マーケティング・営業・CSの連携がスムーズになる)、**LTV(顧客生涯価値)の向上**(購入後の体験改善により、リピート率と紹介率が上がる)。株式会社レイロのクライアント事例では、ジャーニーマップ活用開始後6ヶ月でリード数が2〜3倍に増加したケースもあります。


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