ブランドスローガンのイメージ

「Just Do It.」「Think Different.」――これらの言葉を聞いてすぐにブランドが思い浮かぶなら、それは優れたブランドスローガンが機能している証拠です。

ブランドスローガンは、企業の価値観や姿勢をたった一言で表現する最も強力なブランド資産のひとつです。しかし、多くの企業がスローガンとタグライン、キャッチコピーを混同したまま運用し、ブランドの一貫性を損なっています。

本記事では、ブランドスローガンの定義から作り方、国内外の有名企業20社の事例まで体系的に解説します。自社のブランドを言語化したいマーケター・経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。


Contents

ブランドスローガンとは?定義と意味を整理する

ブランドスローガンの定義

ブランドスローガン(Brand Slogan)とは、企業やブランドの理念・ビジョン・価値観を短い言葉で表現したフレーズのことです。広告やプロモーション活動で繰り返し使われ、消費者の記憶に定着することでブランド認知を高める役割を担います。

スローガン(slogan)の語源はスコットランド・ゲール語の「sluagh-ghairm(軍勢の叫び声)」に由来します。もともとは戦闘における集合の合言葉を意味していましたが、現代では企業・ブランドが発するメッセージの集約として広く使われています。

ブランドスローガンが果たす3つの役割

  1. ブランド認知の強化: 短く記憶に残るフレーズにより、消費者がブランドを想起しやすくなる
  2. 価値観・姿勢の伝達: 企業がどのような信念を持って事業を行っているかを端的に示す
  3. 感情的なつながりの構築: 消費者の心に響くメッセージがブランドへの共感・ロイヤルティを育む

ブランドとは何かを深く理解したい方はこちら


タグライン・キャッチコピーとの違い

ブランドスローガンを正確に理解するには、混同されやすい「タグライン」「キャッチコピー」との違いを把握することが重要です。

比較表:スローガン・タグライン・キャッチコピーの違い

項目 ブランドスローガン タグライン キャッチコピー
目的 ブランド理念・価値観の体現 ブランドの約束・ポジションの明示 広告・販促での注目獲得
対象 ブランド全体 ブランド全体 特定の商品・キャンペーン
使用期間 長期間(数年〜数十年) 長期間(数年〜) 短期間(キャンペーン単位)
変更頻度 低い 低い 高い
感情的訴求 強い 中程度 高い(瞬間的)
代表例 Just Do It. L’Oréal: Because You’re Worth It 季節限定CMのコピー

スローガンとタグラインは同義で使われることも

実務上、スローガンとタグラインはほぼ同義として使われるケースも多いです。ただし厳密に言えば:

  • タグライン: ブランドが消費者に提供する約束(Unique Value Proposition)を言語化したもの
  • スローガン: ブランドの精神・姿勢・哲学をより感情的に表現したもの

大切なのは「なぜこの言葉を使うのか」という意図が明確であることです。言葉の定義よりも、ブランドの核心を正確に言語化できているかを優先して考えましょう。

ブランドアイデンティティの構築方法についてはこちら


優れたブランドスローガンの5つの条件

優れたスローガンの条件

1. 短く、記憶に残る

優れたスローガンは5〜10語程度に収まることが多いです。「Just Do It.」はわずか3語、「Think Different.」も2語。短いほど反復しやすく、記憶に定着します。

2. ブランドの核心を体現している

スローガンは単なる「かっこいい言葉」ではなく、ブランドの存在意義やビジョンと一致していることが不可欠です。ナイキのスローガンが長年愛されるのは、スポーツを通じて誰もが挑戦できるという信念を完璧に凝縮しているからです。

3. 感情を動かす

認知を超えて共感・感動・憧れといった感情反応を引き出せるスローガンは、消費者との長期的なつながりを生みます。感情的な訴求力はロゴやビジュアルだけでは補えません。

4. 競合と差別化されている

他のブランドでも使えそうな汎用的なフレーズは避けましょう。「品質を追求しています」「お客様のために」といった言葉は差別化になりません。そのブランドにしか言えない言葉が理想です。

5. 時代を超えて通用する

流行語やトレンドに過度に依存したスローガンは短命に終わります。優れたスローガンは時代が変わっても色褪せない普遍的な価値観を宿しています。

ブランドステートメントとの関係性についてはこちら


有名企業のブランドスローガン事例20選

ブランドスローガン事例

海外企業10選

1. Nike(ナイキ)— 「Just Do It.」

1988年から使われ続ける世界最高峰のスローガン。「とにかくやれ」という3語は、スポーツへの挑戦・自己超越の精神を完璧に表現しています。年齢・性別・能力に関わらず全ての人に向けた普遍的メッセージが、世界中のアスリートの心を掴み続けています。

2. Apple(アップル)— 「Think Different.」

1997年にスティーブ・ジョブズ復帰後に発表。「違う考え方をしろ」というメッセージは、Appleが単なるコンピュータ企業ではなく、創造性と革新を体現するブランドであることを宣言しました。

3. McDonald’s(マクドナルド)— 「I’m Lovin’ It.」

2003年から使用。「大好きだよ」という感情的な言葉は、食事の楽しさと幸福感を直接的に表現。世界100カ国以上で同一スローガンを展開するグローバルブランドの一貫性の象徴です。

4. L’Oréal(ロレアル)— 「Because You’re Worth It.」

1971年から続く「あなたにはその価値がある」というメッセージ。女性の自己肯定感と美を結びつけ、単なる化粧品ブランドを超えた社会的価値を訴求し続けています。

5. Google — 「Don’t Be Evil.」(現: Do the Right Thing.)

創業期の「悪になるな」というシンプルな倫理観の宣言は、テクノロジー企業の姿勢として強烈なインパクトを持ちました。Alphabet傘下になった現在は「Do the Right Thing」に更新されています。

6. BMW — 「The Ultimate Driving Machine.」

「究極の運転機械」という直球の表現は、BMWが運転する喜びを最優先に考えるブランドであることを端的に示します。自動車ブランドの中でも際立ったポジショニングを確立しています。

7. De Beers(デビアス)— 「A Diamond Is Forever.」

1947年に誕生した「ダイヤモンドは永遠に」は、Advertising Ageが選ぶ20世紀最高の広告コピー第1位。ダイヤモンドを婚約指輪の標準として定着させた、マーケティング史に残る傑作です。

8. Red Bull(レッドブル)— 「Red Bull Gives You Wings.」

「翼を授ける」という比喩的な表現は、エネルギーと自由を与えるブランドのイメージを鮮明に描きます。エクストリームスポーツスポンサーシップと完全に連動したスローガンです。

9. Airbnb — 「Belong Anywhere.」

「どこでも、自分の居場所に」は、ホテルではなく「体験」を売るAirbnbの哲学を端的に示します。旅行の意味を再定義した画期的なスローガンです。

10. Patagonia — 「We’re In Business to Save Our Home Planet.」

「私たちは故郷の地球を救うためにビジネスをしている」という宣言は、環境保護をビジネスの中心に置くPatagoniaの姿勢を余すところなく表現。現代のパーパスブランディングの最高峰事例です。

国内企業10選

11. トヨタ自動車 — 「Drive Your Dreams.」

「夢を駆れ」という言葉は、クルマが単なる移動手段ではなく、夢や可能性を実現するツールだというトヨタの哲学を表現しています。

12. ソニー — 「Make Believe.」

「作ること(Make)と信じること(Believe)」を組み合わせた造語的スローガン。創造性と革新への挑戦を続けるソニーの精神を体現しています。

13. パナソニック — 「A Better Life, A Better World.」

「より良い生活、より良い世界」は、家電・インフラを通じて人々の暮らしと社会を豊かにするというパナソニックの使命を示しています。

14. ユニクロ — 「LifeWear. 服を変え、常識を変え、世界を変えていく。」

日常の服を通じて社会にインパクトを与えるという強い意志が込められたスローガン。ファストファッションを超えた「生活のためのウェア」という概念を確立しました。

15. ソフトバンク — 「変えよう。新しいエネルギーで。」

通信キャリアを超えた「社会変革者」としての立ち位置を強調。孫正義氏の経営哲学と完全に一致したブランドメッセージです。

16. サントリー — 「水と生きる。」

創業者・鳥井信治郎の精神「やってみなはれ」に連なる挑戦の精神と、水・自然との共生を表現。企業の存在意義を自然との関係で定義した独自のアプローチです。

17. リクルート — 「まだ、ここにない、出会い。」

人と機会の出会いを創出するという事業の本質を、詩的なフレーズで表現。就職・住まい・旅など多角的な事業を束ねるコーポレートスローガンとして機能しています。

18. キリンビール — 「一番搾り。生きている。」

製品の鮮度・品質への徹底したこだわりを「生きている」という言葉で表現。技術への誇りとクラフトマンシップが伝わるスローガンです。

19. 資生堂 — 「一瞬も、一生も、美しく。」

瞬間的な美しさだけでなく、一生涯を通じた美を支えるという資生堂の姿勢を凝縮。長年にわたり同ブランドの核心として機能しています。

20. 株式会社レイロ — ブランドの言語化でビジネスを加速する

ブランディング専門会社として、企業の価値観・ビジョンを言語化し、市場での差別化を実現するサポートを行っています。

キャッチコピーとスローガンの事例をさらに見たい方はこちら


ブランドスローガンの作り方5ステップ

スローガン作りのプロセス

Step 1: ブランドコアを言語化する

スローガン作りは「言葉を考える」前にブランドの核心を言語化することから始まります。以下の問いに答えてみてください。

  • Why(なぜ存在するか): 自社はなぜこの事業をしているのか
  • Who(誰のためか): 誰の課題を解決したいのか
  • What(何を提供するか): 独自の価値・強みは何か
  • How(どのように): 他社と違うアプローチは何か

このプロセスで得られたキーワードや文章が、スローガンの素材になります。

ブランドコンセプトの作り方についてはこちら

Step 2: ターゲットオーディエンスを明確にする

誰に向けて発するメッセージなのかを明確にします。B2C・B2Bでトーンは大きく変わります。

  • 感情的な価値を重視するB2Cブランドは、共感・憧れ・喜びを引き出す言葉を選ぶ
  • 機能的な価値を重視するB2Bブランドは、信頼・専門性・効率を示す言葉を選ぶ

ペルソナが「この言葉を聞いてどう感じるか」を常に想像しながらフレーズを磨きましょう。

Step 3: 候補フレーズを大量に生成する

最初から完璧なスローガンを作ろうとしないことが重要です。まずは50〜100個のフレーズを制限なく書き出すブレインストーミングを行います。

効果的なアプローチ

  • 動詞から始める: 「変える」「超える」「作る」「届ける」など行動を示す動詞
  • 感情語を使う: 「驚き」「誇り」「自由」「温もり」など
  • 対比・逆説を使う: 「小さな会社、大きな挑戦」「シンプルな美しさ、複雑な技術」
  • 問いかけ形式: 「あなたの可能性を信じていますか?」

Step 4: フィルタリングと精製

生成した候補を以下の基準でフィルタリングします。

  1. ブランドらしさ: 自社らしさが感じられるか、競合でも使えてしまわないか
  2. シンプルさ: 10語以内に収まるか、声に出して言いやすいか
  3. 記憶定着性: 一度聞いて覚えられるか
  4. 感情的共鳴: 聞いた人が何かを感じるか
  5. 長期耐久性: 5年後・10年後も通用するか

絞り込んだ5〜10候補を社内外の関係者に共有し、フィードバックを得ます。

Step 5: テストとブラッシュアップ

最終候補を実際に使ってみてフィードバックを収集します。

  • A/Bテスト: 異なるスローガンで広告を出稿し、反応を比較
  • ユーザーインタビュー: ターゲット顧客に聞いた印象・連想を収集
  • 社内投票: 従業員が誇りを持って言えるかをチェック

採用後は一貫して使い続けることが最重要です。スローガンは短期間で変えると効果が薄れます。ブランドの全タッチポイントで統一して使用することで初めて記憶に定着します。

ブランドストーリーテリングでスローガンを活かす方法はこちら


よくある失敗パターンと注意点

スローガン作りの注意点

失敗パターン1: 汎用的すぎる言葉を使う

「お客様のために」「品質への挑戦」「信頼と革新」――これらは多くの企業が使い回せる言葉であり、ブランドの差別化に貢献しません。そのブランドにしか言えない言葉を探してください。

失敗パターン2: 経営者の「好み」だけで決める

スローガンはマーケティングツールである以上、顧客視点が不可欠です。経営者や社内の人間だけでなく、実際のターゲット顧客の反応を必ず確認しましょう。

失敗パターン3: 行動・ビジュアルと乖離している

いくら優れたスローガンでも、実際のサービス品質・社員の行動・ビジュアルデザインと矛盾していれば逆効果です。スローガンは「理想を宣言する言葉」ではなく「実態を正直に表現する言葉」であるべきです。

失敗パターン4: 頻繁に変更する

スローガンの記憶定着には継続的な露出が必要です。数年ごとに変更していると、消費者の記憶には残りません。変更する場合は、ブランドの大きな転換期(リブランディング・事業転換)に合わせて行いましょう。

失敗パターン5: 多言語・グローバル展開を考慮しない

グローバルに展開するブランドでは、英語や他言語に翻訳した際のニュアンスが変わる場合があります。海外展開を視野に入れる場合は、作成段階から多言語での響きを検討することが重要です。


FAQ:ブランドスローガンに関するよくある質問

ブランドスローガンとキャッチコピーはどう違いますか?

ブランドスローガンはブランド全体の理念や価値観を長期的に表現するフレーズで、数年〜数十年使い続けるものです。一方、キャッチコピーは特定の商品・キャンペーン・期間のために作られる短命なフレーズです。スローガンはブランドの「顔」であり、キャッチコピーはその時々のメッセージを届けるための「声」と考えるとわかりやすいでしょう。

中小企業でもブランドスローガンは必要ですか?

はい、大企業だけでなく中小企業にこそスローガンが重要です。中小企業は広告予算が限られるため、「言葉の力」でブランドを印象づける必要があります。明確なスローガンがあることで、社員の行動指針にもなり、採用・営業・マーケティングすべてに一貫したメッセージを持てます。まずは一文でも「自社が大切にしていること」を言語化することから始めましょう。

スローガンを作る際に専門家に依頼すべきですか?

ブランドの核心(ビジョン・ミッション・バリュー)が未整理な場合は、ブランディング専門会社への依頼をおすすめします。言葉は表層的な作業に見えますが、その背景にあるブランド戦略が重要です。一方、ブランドコアが整理されている場合は、社内のメンバーでも十分作成できます。重要なのは「自社にしか言えない言葉」を見つけることで、そのプロセスこそが価値を持ちます。

スローガンを決めたあと、どのように活用すればいいですか?

スローガンはすべてのタッチポイントで一貫して使用することが重要です。Webサイト・名刺・会社案内・SNSプロフィール・採用ページ・店舗内装・商品パッケージなど、ブランドが消費者と接するあらゆる場所に展開してください。また、社内向けにも浸透させ、社員全員がスローガンの意味を理解して行動できる状態を作ることが理想です。

既存のスローガンを変更するタイミングはいつですか?

スローガンの変更は慎重に行う必要があります。適切なタイミングは、(1) 事業の方向性が大きく変わるリブランディング時、(2) ターゲット市場が変化した時、(3) 社会的な文脈の変化でスローガンが時代にそぐわなくなった時、(4) M&Aや合併で企業アイデンティティが変わった時などです。単に「古くなった」「飽きた」という理由での変更は、ブランド資産の毀損につながります。


まとめ

ブランドスローガンは、企業の価値観・哲学・ビジョンを最も凝縮した形で表現するブランド資産です。本記事のポイントを整理します。

  • 定義: ブランドの理念・価値観を短い言葉で体現したフレーズ
  • タグライン・キャッチコピーとの違い: 使用期間・対象範囲・変更頻度が異なる
  • 優れたスローガンの条件: 短さ・ブランドとの一致・感情的訴求・差別化・普遍性
  • 作り方: ブランドコアの言語化 → ターゲット明確化 → 大量生成 → フィルタリング → テスト
  • 注意点: 汎用表現・経営者の独断・行動との乖離・頻繁な変更を避ける

「Just Do It.」のように、たった3語でブランドの全てを表現できる言葉を見つけることは簡単ではありません。しかし、そのプロセスに真剣に向き合うことで、ブランドが本当に伝えたいことが明確になり、マーケティング全体の一貫性が高まります。


株式会社レイロのブランドスローガン策定支援

株式会社レイロは、企業のブランドコア(ビジョン・ミッション・バリュー)の言語化から、スローガン・タグライン・ブランドステートメントの策定まで、一貫したブランディング支援を行っています。

「自社のスローガンを作りたいが何から始めればいいかわからない」「現在のスローガンがブランドの実態と合っていない気がする」というお悩みをお持ちの経営者・マーケターの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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