考慮集合とは?想起集合との違いと購買行動マーケティングへの活かし方【2026年最新】
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考慮集合とは?想起集合との違いと購買行動マーケティングへの活かし方【2026年最新】
消費者が商品やサービスを購入するまでには、いくつもの「ふるい」を通過するプロセスがあります。その中でも、最終的な購買候補として残る考慮集合(Consideration Set)に自社ブランドを入れられるかどうかは、マーケティング戦略の成否を分ける決定的な要素です。
「認知はされているはずなのに、なぜか比較検討の候補に入らない」「広告費をかけているのに購買につながらない」。こうした課題を抱えている企業は少なくありません。問題の本質は、消費者の頭の中にある集合の構造を理解していないことにあります。
本記事では、考慮集合の基本概念から想起集合との違い、購買意思決定の段階モデル、そしてブランドが考慮集合に入るための具体的な戦略までを体系的に解説します。
目次
- 考慮集合(Consideration Set)とは何か
- 購買意思決定における集合の段階モデル
- 考慮集合と想起集合の違い
- ブランドが考慮集合に入る要因・外れる要因
- ブランドが考慮集合に入るための5つの戦略
- 業界別事例(BtoC・BtoB)
- 考慮集合の調査・測定手法
- 考慮集合をブランド戦略に組み込む方法
- FAQ(よくある質問)
- まとめ
考慮集合(Consideration Set)とは何か
考慮集合(Consideration Set)とは、消費者が商品やサービスを購入する際に「実際に比較検討する候補」として頭の中に残っているブランド群を指すマーケティング用語です。「エボークトセット(Evoked Set)」と呼ばれることもあります。
例えば、新しいノートPCを購入しようとするとき、市場には数十のメーカーが存在します。しかし、実際に「Apple、Lenovo、Dell の3社で比較しよう」と考えた場合、この3ブランドがその消費者にとっての考慮集合です。
考慮集合の特徴
- 数は限られている: 通常3〜7ブランド程度に絞られる
- カテゴリごとに異なる: 同じ消費者でも製品カテゴリによって考慮集合は変わる
- 動的に変化する: 新しい情報や経験によって入れ替わる
- 購買行動に直結する: 考慮集合に入らなければ、そもそも選ばれる可能性がゼロになる
この概念は、ハワード=シェス・モデル(Howard-Sheth Model, 1969年)で提唱され、その後の消費者行動研究において中心的なフレームワークとなりました。
なぜ考慮集合が重要なのか
マーケティングにおいて認知度(Awareness)を高めるだけでは不十分な理由がここにあります。認知されていても考慮集合に入らなければ、購買にはつながりません。ブランド認知度を高めることは重要ですが、それはあくまでスタート地点です。
考慮集合に入ることは、いわば購買への「参加資格」を得ることと同じです。逆に言えば、考慮集合から外れたブランドは、いくら品質が優れていても選ばれることはありません。
購買意思決定における集合の段階モデル
消費者の購買意思決定プロセスでは、ブランドは段階的にふるいにかけられていきます。この構造を理解することが、効果的なマーケティング戦略の出発点です。
集合の段階モデル(一覧表)
| 段階 | 集合名 | 英語名 | 内容 | ブランド数の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 第1段階 | 全体集合 | Total Set | 市場に存在するすべてのブランド | 数十〜数百 |
| 第2段階 | 認知集合 | Awareness Set | 消費者が名前を知っているブランド | 10〜20程度 |
| 第3段階 | 想起集合 | Evoked Set | 購買場面で自然に思い出せるブランド | 5〜10程度 |
| 第4段階 | 考慮集合 | Consideration Set | 実際に比較検討するブランド | 3〜7程度 |
| 第5段階 | 選択集合 | Choice Set | 最終的に購入候補となるブランド | 2〜3程度 |
| 最終段階 | 選択 | Choice | 実際に購入するブランド | 1 |
このモデルからわかるように、全体集合から選択に至るまでに大幅な絞り込みが行われます。各段階で脱落しないために、それぞれ異なるマーケティング施策が必要になります。
非考慮集合と保留集合
考慮集合に入らなかったブランドは、以下の2つに分類されます。
- 非考慮集合(Inept Set): 否定的な印象を持たれ、明確に候補から外されたブランド群
- 保留集合(Inert Set): 肯定的でも否定的でもなく、判断を保留されているブランド群
マーケティング戦略上、保留集合にいるブランドは情報提供次第で考慮集合に移行できる可能性がありますが、非考慮集合に入ってしまったブランドの挽回はきわめて困難です。
考慮集合と想起集合の違い
考慮集合と想起集合は混同されがちですが、明確な違いがあります。マインドシェアの観点からも、この2つを区別して理解することが重要です。
想起集合と考慮集合の比較
| 比較項目 | 想起集合(Evoked Set) | 考慮集合(Consideration Set) |
|---|---|---|
| 定義 | 購買場面で自然に思い出すブランド群 | 実際に比較検討する候補ブランド群 |
| 段階 | 認知集合の次(第3段階) | 想起集合の次(第4段階) |
| 選別基準 | 記憶からの想起しやすさ | 具体的な購買条件への適合度 |
| 含まれる数 | 5〜10程度 | 3〜7程度 |
| 影響する要因 | ブランド認知度、広告接触頻度 | 価格、機能、口コミ、過去の経験 |
| マーケティング施策 | 認知施策(広告、PR、SEO) | 比較情報の提供、差別化訴求 |
具体例で理解する
スマートフォンの購入を考える場合を例にとりましょう。
- 想起集合: Apple、Samsung、Google、Sony、Xiaomi、OPPO(名前が浮かぶブランド)
- 考慮集合: Apple、Samsung、Google(予算・機能・デザインの条件を満たすブランド)
- 選択集合: Apple、Samsung(最終候補)
想起集合から考慮集合に移行する際に起きているのは、「知っている」から「検討に値する」への評価のジャンプです。このジャンプを促すには、単なる認知度向上ではなく、バリュープロポジションを明確に伝える必要があります。
ブランドが考慮集合に入る要因・外れる要因
考慮集合に入る要因(促進要因)
- 高いブランド認知度: ブランド認知が確立していることが前提条件
- ポジティブな過去の経験: 以前の購買・利用で満足した記憶
- 信頼できる口コミ・レビュー: 第三者からの推奨情報
- 明確な差別化ポイント: 他ブランドとの違いが理解されている
- 価格帯の適合: 消費者の予算感に合っている
- タイムリーな情報接触: 購買タイミングに合った広告やコンテンツ
- カテゴリ内での代表性: そのカテゴリの「典型的なブランド」として認識されている
考慮集合から外れる要因(阻害要因)
- ネガティブな口コミ・不祥事: ブランドイメージの毀損
- 過去の悪い経験: 品質問題やカスタマーサポートへの不満
- 情報不足: ブランドの特徴や強みが伝わっていない
- カテゴリとの不整合: 「このブランドはこのカテゴリのものではない」という認識
- 入手しにくさ: 購入チャネルが限られている
- 価格帯の不一致: 高すぎる、または安すぎるという認識
ブランドポジショニングが曖昧な場合、消費者の頭の中で「どのカテゴリのブランドなのか」が不明確になり、考慮集合から漏れやすくなります。
ブランドが考慮集合に入るための5つの戦略
単にブランドを知ってもらうだけでなく、考慮集合に入り込むためには体系的な戦略が必要です。ここでは、実務で活用できる5つのアプローチを紹介します。
戦略1: カテゴリーエントリーポイント(CEP)の最適化
カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは、消費者があるカテゴリの購買を検討し始めるきっかけや状況のことです。
- 「のどが渇いた → 飲料」「プレゼントを買いたい → ギフト」のような購買トリガーを把握する
- 自社ブランドとCEPを強く結びつけるコミュニケーションを設計する
- 複数のCEPをカバーすることで、考慮集合に入る確率を高める
実践例: コーヒーブランドが「朝の目覚め」だけでなく「午後のリフレッシュ」「在宅ワークのお供」など複数のCEPと結びつくメッセージを展開。
戦略2: メンタルアベイラビリティの強化
バイロン・シャープ教授の理論に基づくアプローチで、消費者の記憶の中でブランドが想起されやすい状態を作ることを目指します。
- 独自のブランドアセット(Distinctive Brand Assets)を一貫して使用する(ロゴ、色、音、キャラクターなど)
- 広告のリーチを広げ、できるだけ多くの消費者との接点を確保する
- ブランド認知度向上のための施策を継続的に実施する
戦略3: 購買意思決定ジャーニーへの介入
消費者のカスタマージャーニーの各タッチポイントで、考慮集合に入るための情報を提供します。
- 認知段階: SNS広告、ディスプレイ広告で存在を知らせる
- 興味段階: コンテンツマーケティング、SEOで詳細情報を提供する
- 検討段階: 比較サイト、レビュー、事例で優位性を伝える
- 購買段階: リターゲティング広告、クーポンで最後のひと押しをする
戦略4: ソーシャルプルーフの戦略的活用
消費者が考慮集合を形成する際、他者の評価や行動は大きな影響力を持ちます。
- 顧客レビュー・評価の収集と公開
- 導入事例・成功事例の発信
- インフルエンサーやKOLとの協業
- 受賞歴・認証の活用
- コンシューマーインサイトに基づいたUGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進
戦略5: カテゴリ内でのフレーミング(枠組み)の再定義
既存のカテゴリ定義にとらわれず、自社に有利な比較フレームを作る戦略です。
- 新しいサブカテゴリを創出する(例: エナジードリンク市場における「ゼロシュガー」カテゴリ)
- 比較軸を変える(価格ではなく「1杯あたりのコスト」、スペックではなく「体験価値」)
- 競合セットを再定義する(直接競合ではなく、異なるカテゴリのブランドとの比較に誘導する)
業界別事例(BtoC・BtoB)
BtoC事例
事例1: 無印良品 ── カテゴリ横断型の考慮集合戦略
無印良品は、「シンプル・自然体」という一貫したブランドコンセプトにより、家具・衣類・食品・文具など多数のカテゴリで考慮集合に入ることに成功しています。
- ポイント: 「迷ったら無印良品」という消費者のヒューリスティック(簡便な判断ルール)を形成
- 戦略: カテゴリーエントリーポイントを「シンプルなものが欲しい」という感情に統一し、幅広い場面で想起される仕組みを構築
- 成果: 生活雑貨市場において、専業ブランドと並んで常に考慮集合に入るポジションを確立
事例2: Anker ── 口コミ戦略で考慮集合を獲得
モバイルバッテリー・充電器市場に後発参入したAnkerは、Amazonレビューを中心としたソーシャルプルーフ戦略で考慮集合入りを果たしました。
- ポイント: 高い製品品質 × レビュー数の最大化で「安心して選べるブランド」を構築
- 戦略: 初期にレビュー獲得を最優先とし、レビュー数と評価の高さで他ブランドとの差別化を実現
- 成果: 「モバイルバッテリーといえばAnker」というカテゴリ代表的ポジションを獲得し、考慮集合に入る確率を大幅に向上
BtoB事例
事例3: Salesforce ── カテゴリ創出による考慮集合の支配
SalesforceはCRM市場において、「クラウドCRM」というサブカテゴリを事実上創出し、そのカテゴリにおける考慮集合の筆頭ポジションを獲得しました。
- ポイント: 「No Software」というメッセージで従来のオンプレミス型CRMとの違いを明確化
- 戦略: カテゴリ定義そのものを変え、自社が最も有利になるフレームを構築
- 成果: 「CRMを導入するなら」という検討時にほぼ確実に考慮集合に入るブランドに成長
事例4: Slack ── 既存カテゴリからの離脱で考慮集合を形成
Slackは、「メール代替」ではなく「チームコラボレーションツール」という新カテゴリを定義することで、従来のメールソフトやチャットツールとは異なる考慮集合を形成しました。
- ポイント: 「メールの代わり」ではなく「働き方を変えるツール」というフレーミング
- 戦略: ボトムアップ型の導入(個人やチーム単位での無料利用開始)でメンタルアベイラビリティを構築
- 成果: 「社内コミュニケーションツール」の検討時に、メールソフトではなくSlack・Teamsが考慮集合に入る市場構造を作り出した
考慮集合の調査・測定手法
考慮集合を戦略に活かすためには、自社ブランドが消費者の考慮集合に入っているかどうかを定量的に把握する必要があります。
主な調査手法
1. 自由想起法(Unaided Recall)
「〇〇を買うとき、どのブランドを検討しますか?」と自由回答で聞く手法です。
- メリット: 考慮集合をそのまま測定できる
- デメリット: 回答者の記憶力に依存する
- 活用場面: ブランドの考慮集合入り率のトラッキング調査
2. 助成想起法(Aided Recall)
ブランド名のリストを提示し、「この中で検討するブランドはどれですか?」と聞く手法です。
- メリット: 漏れが少なく、網羅的に測定できる
- デメリット: リストに載せることで実態より高い数値が出やすい
- 活用場面: 競合ブランドとの相対的なポジション把握
3. 購買ファネル分析
認知 → 興味 → 検討 → 購買の各段階での数値をファネル形式で可視化します。
- 認知率: ブランドを知っている消費者の割合
- 想起率: 購買場面で思い出す消費者の割合
- 検討率(=考慮集合入り率): 実際に比較検討する消費者の割合
- 購買率: 最終的に購入する消費者の割合
各段階間のコンバージョン率を分析することで、どこにボトルネックがあるかを特定できます。
4. 検索行動データの分析
検索エンジンのデータから考慮集合を間接的に推定する手法です。
- 「ブランドA vs ブランドB」のような比較検索の分析
- カテゴリKW検索後のブランドKW検索の追跡
- Googleサジェストや関連検索の分析
5. コンジョイント分析
製品の属性(価格・機能・デザインなど)を組み合わせた選択肢を提示し、消費者の選好を統計的に分析する高度な手法です。考慮集合の形成に影響する要因の重要度を定量化できます。
考慮集合をブランド戦略に組み込む方法
考慮集合の概念を理解したうえで、実際のブランド戦略にどう落とし込むかを解説します。
ステップ1: 現状の考慮集合ポジションを把握する
まず、自社ブランドが各ターゲットセグメントの考慮集合に入っているかどうかを調査します。
- 定量調査で考慮集合入り率を測定
- 競合ブランドとの比較でのポジション確認
- セグメント別の分析(年代・地域・利用頻度などで差異を確認)
ステップ2: 考慮集合に入っていないセグメントの課題を特定する
考慮集合に入れていないセグメントがある場合、その原因を分析します。
- 認知の問題: そもそも知られていない → 認知施策を強化
- 想起の問題: 知っているが購買場面で思い出さない → メンタルアベイラビリティを強化
- 評価の問題: 思い出すが候補にならない → ブランドイメージの改善、差別化の強化
ステップ3: 施策を設計し実行する
特定した課題に応じて、前述の5つの戦略から適切なアプローチを選択し実行します。
ステップ4: 定期的にモニタリングする
考慮集合は固定されたものではなく、常に変動します。四半期ごと、あるいはキャンペーン実施前後に測定を行い、施策の効果を検証することが重要です。
ブランド戦略全体における位置づけ
考慮集合戦略は、単独で完結するものではありません。以下のブランド戦略要素と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。
- 認知段階: ブランド認知度向上施策 → 想起集合への到達
- 差別化段階: ブランドポジショニング → 考慮集合での優位性確保
- 体験段階: カスタマージャーニーの最適化 → 選択集合への移行促進
FAQ(よくある質問)
Q1. 考慮集合に入るブランドの数は平均何個ですか?
カテゴリによって異なりますが、一般的には**3〜7ブランド**程度です。日用品など関与度の低いカテゴリでは2〜3ブランド、自動車や住宅など高関与カテゴリでは5〜7ブランドになる傾向があります。デジタル時代には情報収集が容易になったため、やや増加傾向にあるとする研究もあります。
Q2. エボークトセットと考慮集合は同じ意味ですか?
学術的には若干の違いがあります。**エボークトセット(Evoked Set)**は「記憶から自然に想起されるブランド群」を指し、本記事の段階モデルでは「想起集合」に該当します。一方、**考慮集合(Consideration Set)**は想起だけでなく外部情報の収集も含めた「実際に検討するブランド群」を指します。ただし、実務では同義として使われることも多いです。
Q3. 小規模ブランドでも大手ブランドの考慮集合に割り込めますか?
可能です。特に以下の戦略が有効です。(1) ニッチなサブカテゴリを定義して、そのカテゴリ内での考慮集合筆頭を狙う。(2) 特定のCEP(購買きっかけ)に特化して、その状況下での想起を独占する。(3) [コンシューマーインサイト](https://reiro.co.jp/blog/consumer-insight/)に基づいた差別化で、大手がカバーしきれない消費者ニーズに応える。
Q4. BtoB商材でも考慮集合の概念は当てはまりますか?
はい、BtoBでも十分に当てはまります。むしろBtoBでは購買の関与度が高く、複数の意思決定者が関わるため、各ステークホルダーの考慮集合を把握することがより重要になります。BtoBにおける考慮集合入りには、業界での信頼性、導入実績、専門性の発信が特に効果的です。
Q5. ECサイトで考慮集合をマーケティングに活かすにはどうすればよいですか?
ECサイトでは以下のアプローチが効果的です。(1) 検索結果の上位表示で「検討候補」に入る確率を高める。(2) レビュー数・評価の最適化でソーシャルプルーフを強化する。(3) リターゲティング広告で一度離脱した消費者の考慮集合に留まる。(4) 比較コンテンツの提供で、自社を含む考慮集合の形成を支援する。
まとめ
考慮集合(Consideration Set)は、消費者の購買意思決定プロセスにおいて「選ばれるための必須条件」です。
押さえるべきポイント:
- 消費者は全体集合 → 認知集合 → 想起集合 → 考慮集合 → 選択集合という段階的な絞り込みを行う
- 想起集合(思い出すブランド)と考慮集合(実際に検討するブランド)は異なる
- 考慮集合に入るには、認知度だけでなく差別化・信頼性・適合性が必要
- カテゴリーエントリーポイント、メンタルアベイラビリティ、ソーシャルプルーフなどが有効な戦略
- 定量調査で定期的にモニタリングし、PDCAを回すことが重要
ブランドが消費者の「検討リスト」に確実に入るためには、一貫したブランド戦略と、消費者心理への深い理解が欠かせません。
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